慢性期医療の努力を可視化する ── 第49回通常総会で橋本会長

会長メッセージ 協会の活動等 役員メッセージ

橋本康子会長_第49回通常総会_20240626

 日本慢性期医療協会は6月26日、第49回通常総会を開催した。全会一致で会長に再任された橋本康子会長は「私たち慢性期医療に携わる者の努力が日本の医療に大きく寄与していることを可視化して、一般の人たちに広く伝える必要がある」と述べ、データの収集・分析に意欲を示した。

 この日の総会では、令和5年度の事業・決算報告のほか、役員の選任に関する議案などが全て承認された。橋本会長は2期目。副会長4名も再任された。
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 2023年度の研修参加優秀施設の表彰では、群馬県の内田病院が金賞に選ばれた。同院を運営する田中志子常任理事は「日慢協の全国学会で発表できることは職員にとって大きなモチベーションになる」と多くの参加を呼び掛けた。
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ディスカッションの濃さを実感した学会

 令和5年度事業報告では、事務局長を務める富家隆樹常任理事がこの2年間の活動を振り返った。

 富家常任理事は冒頭、被災地支援を継続する必要性を述べた上で、感染対策については「引き続き緊張感を保ちながら進めている」と伝えた。昨年の学会については「対面でのディスカッションの濃さを実感した」と評価した。

 また、令和6年度の同時改定に向けた議論への参画や、関係団体と連携した取り組みなども報告した。

【富家隆樹事務局長の発言要旨】
 まず本年1月1日に発生した能登半島地震によって被災された方々に心よりお見舞い申し上げる。当会の会員施設においても、建物の損壊など甚大な被害を受け、また職員の離職も見られた。今後の地域医療の立て直しには大きな労力と時間が必要となると思う。当会としても引き続き支援にあたってまいりたい。
 さて、昨年の5月には新型コロナウイルス感染症の5類移行を受けて、社会的制限はほぼなくなった。医療業界も、ようやく危機を脱し、感染対策のノウハウも蓄積されて、何とかコロナ前の通常業務に戻る見通しは立ってきたが、医療者として感染管理を怠ることはできない。引き続き、緊張感を保ちながら当会の事業を進めている。
 3年間に及ぶコロナとの闘いによって協会の事業はオンライン化が進んでいるが、事業の内容によっては対面開催とオンライン開催の適性を見極め、両方を使い分けながら進めてきた。
 第31回日本慢性期医療学会は大阪国際会議場において対面で開催し、第11回慢性期リハビリテーション学会との併催とした。1,700名が会場に集い、約500題の演題が発表された。第27回学会以来、ほぼ制限のない学会となり、対面でのディスカッションの濃さを実感した学会となった。
 総合診療医認定講座や看護師特定行為研修は研修期間が長期に及ぶため、オンライン研修に加えて部分的に会場集合研修を取り入れ、より理解度が高まるようなプログラムを組んだ。
 また、令和6年度の同時改定に向けて厚生労働省で開催された意見交換会では、池端幸彦副会長、田中志子常任理事が現場に即した意見を述べられた。
 そして、関係団体とも調整し、内閣総理大臣、厚生労働大臣に対し、物価・賃金高騰対策等の要望書を橋本会長から直接提出させていただいた。 
 そのほかにも、厚生労働省の審議会、他の関係団体との連携した事業にも会長、副会長をはじめとする役員が参画し、当会からの提言などを発表している。

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慢性期医療は重要な役割を担っている

 2期目となる橋本会長は「誠心誠意を持って役員の先生方とともに力を尽くしてまいりたい」とあいさつ。当会の組織図や各委員会を見直す方針を伝えた上で、「新たに都道府県協会の会長会議と青年部会を立ち上げたい」と述べた。

 当会の取り組みについては、「超高齢化の日本で重要な役割を担っているが、あまり認知されていない面がある」と指摘。「私たちの慢性期医療は、日本の超高齢化の社会において、こんなに役に立っているというデータを出していきたい」と協力を呼び掛けた。

【橋本康子会長の発言要旨】
 2年前に当協会の会長を拝命した。とても短く感じられた2年間であったが、私の未熟さゆえ同時改定に終始した感もある。もちろん改定は、われわれの経営や運営に直接関係するため、とても大切であるとは思う。
 日慢協の定款に謳われているように、当会の目的は「慢性期医療の向上発展とその使命遂行を図り、慢性期医療の質の向上に寄与すること」である。それゆえ、私たちの日々の医療、得意とする医療は超高齢化の日本において大切で、重要な役割を担っている。
 例えば、誤嚥性肺炎、感染症や褥瘡の治療、脱水や低栄養の改善。身体拘束をしないこと。そして、リハビリによるADLの向上、拘縮の予防、皮膚状態の改善、経口摂取への支援などもある。認知症の患者さんを幸せにできるようなケアを知っていることや、尊厳のある看取りができることなど、とても多くのことを担っている。しかし、あまり認知されていない面もあるのではないか。 
 一般の方々にとって医療とは、急性期の医療かもしれない。もちろん急性期の医療、高度医療も大事である。世界一の長寿国であるのは、急性期の先生方の努力やスキルの向上が大きく関係しているとは思うが、私たち慢性期医療に携わっている者の努力も日本の医療に大きく寄与しているのではないか。私たちの慢性期医療を可視化する必要がある。数字などに表すなどの見える化をして多くの人たちに示すことが重要だと思うし、それが日慢協の役割ではないかと思う。そのためには、データを集めて分析してアウトカムを出す。今回の診療報酬で、すごく身に染みて感じている。アウトカムが出ないことには点数は付かない。
 一方、アウトカムのある医療、役に立つ医療であると思っていただければ、評価もされるし、質も上がるだろう。データを出すことが必要になる。私たちの慢性期医療は超高齢化の社会において、こんなに役に立っているというデータである。
 武久先生が以前から言われている。「良質な慢性期医療がなければ日本の医療は成り立たない」。私たちがいなければ医療は成り立たないというデータを出す必要性を強く感じている。2期目には、データの収集や分析などを中心に取り組んでいきたい。皆さまのデータが必要になるので、ご協力をお願いしたい。
 今回、協会の組織図と各委員会の見直しを実施した。新たに都道府県協会の会長会議と青年部会を立ち上げたい。各都道府県の協会の先生方には多大なご尽力をいただいている。先生方のご意見も吸収しながら取り組みたい。若い先生方のご意見も聴きたい。私自身、父から病院を受け継いだ後の運営について悩んだ経験がある。青年部会が役に立てればいい。
 この2年間、会長として乗り切れたのは、池端先生をはじめとする副会長、安藤先生、矢野先生、井川先生、事務局長の富家先生、常任理事の先生方の皆さん。そして、安藝部長をはじめ事務局の皆さまのおかげだと思っている。心から感謝を申し上げる。武久名誉会長からも貴重なアドバイスを多くいただいた。この場を借りて感謝を申し上げる。今後とも、皆さま方のお力をいただきながら進めてまいりたい。よろしくお願い申し上げる。

 総会の開催後、同会場で記念講演が行われた。橋本会長は「慢性期医療の構造改革:持続可能なシステムへの転換」と題して講演。続いて、池端幸彦副会長が「令和6年度診療報酬改定からみた地域医療提供体制の将来像」と題して今後の方向性を探った。
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