3ユニットが同一階にない場合も調査を ── 夜勤体制の緩和策で田中常任理事
令和3年度介護報酬改定の影響等に関する調査結果がまとまった厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の田中志子常任理事は認知症グループホームに関する調査結果に言及し、「同一階にある3ユニットは広い面積を移動しなければならない」と改めて指摘した上で、同一階にない場合なども含めた移動の負担をさらに調査するよう提案した。
厚労省は3月18日、社会保障審議会(社保審)介護給付費分科会(分科会長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第240回会合をオンライン形式で開催し、当会から田中常任理事が委員として出席した。
厚労省は同日の分科会に、令和3年度改定に関する6項目の調査結果を提示。昨年10月11日の第227回会合に示した速報値のデータを更新したほか、ヒアリング結果が新たに追加されている。
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厚労省の担当者は「全ての調査において回収数が増えたことにより直近のデータは更新しているが、報酬改定の議論の前提と異なるような結果ではない」と説明した上で、ヒアリング調査の結果を中心に報告した。田中常任理事は(5)について意見を述べた。
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心理的・身体的負担を感じている
令和3年度改定で一部緩和された認知症グループホームの夜勤体制をめぐっては、「さらなる緩和には反対」との意見が根強い。昨年10月の会合でも「職員が3ユニット2人勤務体制に強い不安を感じていることは事実」「緩和しても大丈夫と判断するには、このN数では少ない」と慎重な対応を求める意見が相次いだ。
調査によると、改定後の状況について「夜勤職員を減らすことにより、利用者への対応が十分に行えない」(72.3%)、「夜勤職員の身体的負担が増える」(70.1%)、「夜勤職員の精神的負担が増える」(69.2%)などの結果となっている。
ヒアリング調査では、「ユニット間の移動が大変だった。通常担当していないユニットの利用者については、普段の様子がわからない状態で介助に入らなければならないこと、2ユニット分の通知が鳴ることへの心理的負担もあった」、「2人夜勤にして通常よりも担当範囲が増えたことで責任範囲も増え、心理的・身体的負担を感じている職員がいた」などの声が寄せられている。
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ICTの導入によって解消されていない
質疑で、小林司委員(連合総合政策推進局生活福祉局局長)は、夜間見守り業務の負担がICTの導入によって解消されていない結果に言及した上で、「休憩時間が減っていたり、職員の不安が利用者に伝わって一部の利用者に不眠があったという声も上がっている」と指摘。「これらを個別の声に過ぎないという整理で見過ごしてはならない」と強調した。
その上で、小林委員は「介護職員の負担を増加させてしまう見直しよりも利用者により良いケアを提供できたり、利用者とのコミュニケーションを増やせたり、そういった好循環につながる見直しを行っていく必要がある。それがひいては人材が集まる職場づくりにつながっていく」と述べた。
石田路子委員(NPO法人高齢社会をよくする女性の会理事)も「夜間見守り業務の負担がICTの導入によって解消されていないことについて、細かくしっかり状況を把握して調査すべきではないか」と指摘した。
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移動の負担も鑑みなければいけない
田中常任理事はユニット配置状況に関する結果に言及。「移動の負担も鑑みなければいけない」とし、さらなる調査を求めた。
調査によると、「全てのユニットが同一階に隣接している」との回答は約1割にとどまり、「同一階に隣接していないユニットがある」との回答が約9割を占めた。
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また、「3ユニットが同一階にあり、すべて隣接しており、職員が円滑に利用者の状況把握を行い、速やかな対応が可能な構造」に該当しない事業所は84.9%となっている。
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【田中志子常任理事の発言要旨】
資料「1-5」について意見を申し上げたい。これまでの議論でも述べたように、同一階にある3ユニットというのは、面積を考えたときに大変広い面積を移動しなければいけないというところからも、やはりその移動の負担というところも鑑みなければいけないと思っている。
一方、3ページにあるように、ユニット配置について84.9%が該当せず、同一階にないような3ユニットのほうが多いということなので、同一建物の上下階などの移動距離が短いところで改めて同じような検証をした場合にはどうなのかというところも引き続きの調査の案に入れていただけたらと思う。
2024年3月19日