急性期でのリハ・ケア・栄養体制を評価 ── 定例会見で橋本会長

会長メッセージ 協会の活動等

橋本康子会長_20240208会見

 当会の橋本康子会長は2月8日の定例記者会見で、令和6年度診療報酬改定に関する「個別改定項目」(いわゆる短冊)について現時点の見解を示し、急性期でのリハ・ケア・栄養体制の充実などを評価した。

 会見で橋本会長は「これまでの提言(寝たきり防止の視点)から個別改定項目(短冊)を振り返る」と題して、急性期・慢性期・介護における寝たきり防止の取り組みを改めて説明。今改定でどのように反映されているかを分析した。

 寝たきり防止に向けた急性期での対応について橋本会長は、地域包括医療病棟や看護補助体制充実加算の充実などを挙げ、同加算の施設基準に「介護福祉士」が明示されたことを高く評価した。

 一方、今後の課題として「慢性期へのアウトカム視点」や「医療の質を高めるチームリーダーとしての医師配置」を挙げた。

 同日の会見における橋本会長の発言要旨は以下のとおり。なお、会見資料は日本慢性期医療協会のホームページをご覧いただきたい。

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被災地支援を継続していく

[池端幸彦副会長]
 定刻になったので、日本慢性期医療協会2月の定例記者会見を開始する。まず冒頭、令和6年元旦に発生した能登半島地震で被災され、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りする。

 今もなお多くの方々が被災されている。一刻も早い復旧・復興を心からご祈念申し上げたい。

 当会の会員である柳田温泉病院も全壊し、甚大な被害を受けていると聞いている。私たちは同院をはじめ、さまざまな支援をこれからも継続したいと思っている。

 では早速だが、橋本会長からプレゼンテーションしていただく。

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寝たきり防止の視点で振り返る

[橋本康子会長]
 令和6年度診療報酬改定の答申が1週間後に迫っている。今回は、これまでの提言(寝たきり防止の視点)から個別改定項目(短冊)を振り返りたい。
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 これまで私たちは、寝たきりをつくらないための方策を提言してきた。今改定では、急性期でのリハ・ケア・栄養体制の充実、介護福祉士、歯科衛生士など専門職種への評価がなされている。

 寝たきりを治すため、今後に期待しているのは慢性期へのアウトカム視点(医療の質改善)、医療の質を高めるチームリーダーとしての医師配置である。今改定では、これらの評価が少ない気がするので、今後に期待したい。

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急性期で「介護福祉士」を評価

 良質な慢性期医療の実現に向けて、「落とさない」(急性期)、「早期に上げる」(慢性期)、「さらに上げる」(介護)──といった寝たきり防止の取り組みを提言してきた。
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 慢性期医療のアウトカムは、寝たきり防止によってQOLを高めることであると私たちは考えているが、今改定でどのように反映されているか。

 まず急性期については、医原性の寝たきり(入院関連機能障害)をつくらないリハ・ケアへの評価がなされた。セラピストだけでなく、介護福祉士の役割、重要性が認められた。
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 具体的には、新設される▼地域包括医療病棟、▼看護補助体制充実加算、▼リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算、▼急性期リハビリテーション加算──を挙げたい。

 このうち、地域で救急患者等を受け入れる病棟の評価である「地域包括医療病棟入院料」では、「看護補助体制充実加算」が新設され、その施設基準に「介護福祉士」を挙げている。診療報酬上の評価で「介護福祉士」という文言が入ったことは、とてもありがたいと思っている。

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リハに欠かせない栄養改善を推進

 慢性期では、リハビリテーションに欠かせない栄養改善を推進する仕組みとなった。
感染症についても管理や個室化など対策が取りやすくなった。
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 具体的には、入院時食事療養費の引き上げのほか、▼特定感染症入院医療管理加算、▼回復期等口腔機能管理計画策定料、▼回復期等専門的口腔衛生処置──の新設、そして特定感染症患者療養環境特別加算(名称変更)を挙げたい。

 このうち、食事療養費は25年ぶりの引き上げで、今後さらなる充実を望みたい。口腔機能管理等については、歯科医師との連携が重要視され、口腔衛生処置では歯科衛生士の専門性が評価されている。

 医科歯科連携をはじめ、今回の同時改定では医療保険と介護保険の連携がとても重要視されていると感じる。

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地域包括医療病棟を参考にしたい

 療養病棟入院基本料については、疾患・処置が混在した体系から、資源投入量に合わせて整理された。慢性期治療病棟の将来的な姿として、地域包括医療病棟を参考にしたい。
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 高齢者救急が多い中、私たちが対応できる患者は私たちが対応したいと考えている。地域包括医療病棟は、リハビリや栄養など慢性期病棟における取り組みが多く含まれている。慢性期救急の視点を含めた慢性期治療病棟の姿ではないかと考えている。

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体制強化加算の廃止が大きい

 回復期リハビリテーション病棟については、体制強化加算の廃止や運動器リハビリテーション料の6単位上限などが大きいと感じている。
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 専従の常勤医師の専任化により、 退院後支援が可能になることは評価したい。一方、今回の反省点になるが、医師はチームリーダーなので「医師の関与があれば、こういう成果が出る」といったデータを出していくべきであった。

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アウトカム視点を取り入れるべき

 まとめると、リハ・ケア体制や専門職評価など、寝たきりをつくらない方向性は評価したい。今後、質(アウトカム)評価やそれをリードする医師配置に期待したい。
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 今後は、アウトカム評価が必要である。これは慢性期医療だけに限らず介護保険も同様である。「良くなれば点数が下がる」という仕組みは現場のモチベーション維持に影響する。「良くなれば点数も上がる」というアウトカム視点をもう少し取り入れれば、患者さんにも喜んでいただける。今後、そうしたデータを示していきたいと思っている。
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