賃上げ試算に「非常勤職員が入っていない」 ── 中医協分科会で井川副会長

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20240117_入院外来分科会

 医療従事者の賃上げに向けた検討結果を取りまとめた厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の井川誠一郎副会長は「このシミュレーションの最大の欠点は非常勤職員が入っていないこと」と指摘した。厚労省の担当者は「足りない分に関しては申請できるような形を取るべきだと思っているので解消される」と説明した。

 厚労省は1月17日、中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織である「入院・外来医療等の調査・評価分科会」の令和5年度第13回会合を開き、当会から井川副会長が委員として出席した。

 厚労省は同日の分科会に「とりまとめ案」を示し、大筋で了承された。尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)は「本日のとりまとめは基本問題小委員会に報告させていただく。議論の内容の反映あるいは細かい文言等の微修正が必要かと思うが、私にご一任いただきたい」とまとめた。

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足りない分の補填は8段階

 「とりまとめ案」の一部は、「追加的な分析に基づき追記を検討」としている。厚労省は 「とりまとめ案」の提示に先立ち、「医療機関等における職員の賃上げについて(その3) 」と題する資料の最終ページに論点を挙げ、委員の意見を聴いた。

 論点では、「賃金増率が高い医療機関」「賃金増率が1.2%に達しない医療機関」への対応などを挙げている。
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01スライド_論点

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 質疑で、山本修一委員(地域医療機能推進機構理事長)は「足りない分の補填として8段階の評価を加えることはいい」と厚労省案を支持した。
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02スライド_医療機関に選択させる加算のイメージ

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職員構成を細かく見たほうがいい

 一方、山本委員は「もらいすぎている場合は他のところに回していいのか」と賃金増率が高いケースについて質問。厚労省の担当者は「総会にも報告させていただく中で、引き続きの論点として検討したい」と答えた。

 津留英智委員(全日本病院協会常任理事)は「もらい過ぎになってしまう医療機関がどうしても出てしまう」とし、参考資料25ページに言及。「賃金増率が15%以上となる23施設の対象職員は0人から1人。医師1人と事務職だけの医療機関もある」とし、「職員構成をもう少し細かく見たほうがいいのではないか」と指摘した。
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03スライド_参考資料P25

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 井川副会長も津留委員の考え方に賛同し、非常勤職員による賃金増率の変動や補填不足について見解を求めた。

【井川誠一郎副会長の発言要旨】
 私も津留委員がおっしゃったような点を気にしている。とりわけ、賃金増率が非常に多いところを問題視して、論点にも記載されている。
 ただ、先ほど津留委員が言及された参考資料の25ページを見ると、「対象職種常勤職員数」が極端に少ない施設が多い。「約0人」「約1人」となっている。ここに書かれているように、シミュレーションに使用した医療経済実態調査については、非常勤職員数が把握できていない。ドクターが1人だけの施設もあれば、逆にもう少し多くいるが、みな非常勤という施設になると、賃金増率が10%を超えていても、実際に蓋を開けてみればもっと下がってしまう。場合によっては、賃金増率が1.2%を下回ってくるような施設が出てこないとも言えない。そういう場合に、それに対する補填を何か考えられるのかどうか。それはやはり必要だろうし、それをどういうふうに把握されるのか。
 今回のシミュレーションの最大の欠点は、非常勤職員が入っていないということ。病院の場合は定数配置があるので、そこの部分で補填されて、数字が2.3%などに上がるようになったが、外来の場合は非常勤が多いので、結果的に、その分が全部外されていて、職員はいるが、ものすごく上がっているように見える。そういう施設が、この「賃金増率が高い医療機関」の中に含まれているのではないか。そういう施設をどのように把握していくのか。逆に、非常勤職員が多くて、蓋を開けてみれば、上げていただいた点数では足りないという医療機関が出てくる可能性もあることを考えると、それに対する補填はどうなるのか。

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【厚労省保険局医療課・加藤琢真課長補佐】
 賃金増率が高い医療機関の「0人」のところで、実際は非常勤がいるのではないかというご指摘をいただいたと受け止めている。その場合、例えば、実際にはカウントされていないものの、常勤換算で1人や2人いる場合においては、このシミュレーションの中では、今、もらいすぎているというようなところから、2.3%に当然ながら寄ってくるということである。それはそれで、高過ぎるというものが解消されるから問題ないかと思う。逆に非常勤の方が多くいるところにおいては、先生ご指摘のとおり、より賃金増率が低すぎて足りないというようなことも起こり得るかと思う。それは今回シミュレーションさせていただいたような形で、実際に点数設計をするにあたっては実調ベースで出したものではなく、あくまで届出で、非常勤も含めた常勤換算で何人いるのかということをベースに、足りない分に関しては申請できるような形を取るべきだと思っている。それによって、ご指摘いただいている問題は解消されると考えている。

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