医療DXも「多職種連携で情報共有を」 ── 中医協総会で池端副会長

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2023年12月27日の総会

 医療DXをテーマにした厚生労働省の会合で、福井県の情報連携ネットワークが紹介された。福井県医師会長を務める当会の池端幸彦副会長は、県内の医療機関をつなぐ「ふくいメディカルネット」の活用などを伝えた上で「全県的なネットワークに広げ、1人の患者に多職種連携で情報共有できる」と抱負を語った。

 厚労省は12月27日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第576回会合を都内で開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。

 厚労省は同日の総会に「医療DXについて(その5)」と題する資料を提示。その中で、「在宅医療における情報通信機器の活用例」として、福井県(坂井地区)の取り組みを挙げた。

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在宅関係者間で日々の生活情報も共有

 福井県坂井地区の取り組みは「ネットワーク構築による病病連携・病診連携・多職種連携の構築」として紹介された。

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 同日の資料によると、病院が持つ患者情報(退院・看護サマリ、検査結果、画像、処方、注射など)について診療所や訪問看護ステーション、介護施設等と共有できるシステムを整備。「カナミックネットワークTRITRUS」を用いて、在宅医療の関係者間で診療情報や日々の生活情報等を共有している。

 こうした好事例などを踏まえ、在宅医療等における医療DX等の活用に関する論点では、「地域医療情報連携ネットワーク」「オンライン資格確認等システム」などを挙げた上で、「在宅医療を提供する体制を整備することについて、診療報酬上どのような対応が考えられるか」と意見を求めた。
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地域のニーズに合わせて上手に組み合わせる

 質疑で、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、ICTを用いた平時からの診療情報の連携について地域医療情報連携ネットワーク(地連NW)が挙げられていることに触れながら「全国医療情報プラットフォームや工程表には『地連NW』の紹介が全くない」と指摘し、両者の関係を尋ねた。

 厚労省の担当者は地域の課題に応じて運用が異なることを説明。診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は「全国医療情報プラットフォームが新幹線なら、地域連携ネットワークはローカル線。全国プラットフォームが高速道路ならば、地連ネットワークは生活道路」とし、「それぞれの良さがあるので、それぞれの地域のニーズに合わせて上手に組み合わせていくことが重要だろう」との考えを示した。

 こうした議論を踏まえ、池端副会長が発言。全国共通のプラットフォームをベースにしながら県独自のネットワークを広げる方針を伝え、「どのように相乗りできるか、これから検討していきたい」と述べたほか、電子処方箋等の活用に向けた課題を示した。池端副会長の発言要旨は以下のとおり。

■ 在宅医療等における医療DX等の活用について
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 松本委員のご質問については、長島委員がお答えいただいたとおりだと思う。資料25ページに「在宅医療における情報通信機器の活用例」として、福井県坂井地区の事例が紹介されている。これは狭いエリアでのネットワークだが、福井県では「ふくいメディカルネット」という全県的なネットワークに広げて、来年度から本格的にそれを運用して、1人の患者さんに対して多職種が連携できるようにする。それぞれの地域で小さい連携ができる体制を全県で同じような方法でやろうと考えて進めている。スマホを用いて情報共有するだけでなく、さまざまな情報のやり取りができるツールを構築している。
 ただ、これは先ほど長島委員がおっしゃった「ローカル線」である。ちなみに、福井県にも近く新幹線が通る予定だが、全国医療情報プラットフォームがやはりベースになる。県内の別の地区に移動した場合や災害時などには全国医療情報プラットフォームで情報を共有しつつ、地域の情報連携ネットワークを上手に組み合わせる。そういう使い方ができれば、地域のネットワークは費用的に安価に抑えることができる。そのようにして、うまく情報の共有ができる方法を考えていきたいと思っている。今後、全国医療情報プラットフォームがどのように進化するかによって、私たちのネットワークがどのように相乗りできるか、これから検討していきたい。

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■ 電子処方箋の推進について
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 電子処方箋は非常に重要だが、なかなか進まない。モデル事業に参加した病院でも本格的な運用はできていない。事務局が示したように院内処方箋の導入問題もある。また、HPKIカードを医師1人ずつが持って、それを1日1回チェックしなければいけないことに対する負荷もある。そうした課題があるため、本格的な運用ができないと聞く。
 そこで、事務局にお伺いしたい。この辺の課題をどこまで把握していて、それを解決するためのタイムスケジュールはどうなっているのか。ある程度できているのかどうか。おそらく、このまま黙って待っていても、なかなか進んでいかないのではないかという気がする。スケジュール感など、おわかりになれば教えていただきたい。

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【厚労省医政局・田中彰子参事官】
 電子処方箋のワーキンググループで継続的に議論を進めている。導入が進まない理由については、ご指摘いただいたように、例えば周りが入っていないから入らないとか、またシステムについて、いろいろなサービスがどんどん追加されるので、いつ入れようか迷ってしまうとか、電子署名の手間がかかるという指摘もあった。問題なく使えるかどうか不安であるという意見もいただいている。こうした課題がある中で、まず署名の簡素化については現在、取組を進めており、ワーキンググループでも示している。また、院内処方についても来年度以降に導入するということを示しているが、より具体的な仕組みについては皆さまのご意見をいただきながら、つくっていくことにしていると聞いている。
 今回、ご指摘いただいたような課題については、1つひとつ、ワーキンググループの中でも意見をいただきながら進めてまいりたい。

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