介護施設入所者への対応案を評価 ── 中医協総会で池端副会長

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池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)_2023年3月8日の中医協総会

 コロナ特例の見直し案が示された厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「介護施設に入所している患者への対応は非常に重要」と厚労省案を評価した上で、「回復期や慢性期の病院にタイミングよく入院できる体制が必要」と述べた。

 厚労省は3月8日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第540回会合をオンライン形式で開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。

 厚労省は同日の総会に、「新型コロナウイルス感染症の診療報酬上の取扱いについて」と題する資料を提示。前回3月1日の主な意見などを紹介した上で、「診療報酬上の特例の見直しの方向性(案)」を示した。

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「介護施設はオンライン活用」に反論

 厚労省は「見直しの方向性(案)」の中で、「介護施設入所者等の患者への対応」を挙げた。介護施設からの患者をリハビリ提供や入退院支援体制が充実した病棟が受け入れる場合を評価する方針。

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資料「総-11」P19_2023年3月8日の中医協総会

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 これに対し支払側委員から「まず往診やオンライン診療を活用して可能な限り施設の中で対応し、クラスターを抑えつつ入院に至らないようにすることで医療資源の有効活用につなげるべき」との意見があった。

 池端副会長は「高齢者の医療はオンラインでちょっと顔を見ただけで判断できるものではない」と反論。「医師が直接、見て聴いて触って入院が必要かどうかを判断すべきで、入院が必要な場合にはタイムリーに入院できる体制が必要だ」と述べた。池端副会長の発言要旨は以下のとおり。

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2023年3月8日の中医協総会

■ 診療報酬上の特例の見直しの方向性案について
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 全体を通じて長島委員がおっしゃったとおりで賛成したい。その上で、5類に移行する5月8日以降、どうなるのか。加算や特別な対応をすぐにやめるべきという意見もあるが、5月8日以降にコロナ感染症の性質がいきなり変わるわけではない。今後の見込みについて専門家の意見でもまだ予想がつかない状況にある。 
 5類になったあと国民がどういう行動を起こし、そして、どういうウイルスがまた起きるのか。第9波でどんなウイルスが再燃するのか。しっかり見定めた上で対策し、少しずつ段階的に減らしていかなければ、パンデミックが起きたときに、また同じように緊急避難的な措置をしなければいけない。そういうことを考えれば、せっかく良い体制ができたのに、それを急になくすことになる。それはあり得ないことだと思う。 
 医療機関がどういう対応をしていくか。そして国民がどういう受診行動を起こすかをしっかり見定めながら、それに合った対応ができるように段階的に時間をかけてゆっくり見直していくべきではないか。感染状況について地域差が非常に大きいので、それを見定めることも非常に重要だと思う。
 保険者の方々は財政逼迫等を心配しているかもしれないが、今回の特例措置の多くは出来高の加算であるので、徐々に収束に向かっていけば減っていく。いざというときのために体制を残しておかなければ緊急対応できないことをご理解いただきたい。 
 例えば、東日本大震災で緊急避難的な特別の対応をしていただいたが、徐々に減ってくれば最終的に特別な対応は必要がなくなる。それと同様に考えてほしい。 
 19ページの「診療報酬上の特例の見直しの方向性(案)②」では、「介護施設入所者等の患者への対応」が示されている。これは非常に重要な観点だと思う。第7波、第8波とオミクロン株になってから確かに重症化は減ったが、高齢者が感染すると施設でみる必要がある。しかし、私たちがよく聞いているのは、「介護施設に対する医療提供体制が十分でなければ診られない」ということ。ここの担保をしないと高齢者施設も困ってしまう。
 重症患者が減っているのに死亡者が増えている。コロナ感染症で亡くなるのではなく、基礎疾患で亡くなっているからではないか。もし点滴を続けてあげたら生命を戻せたのではないかという患者さんも多く見られる。タイミングよく入院できる体制が必要である。
 ただ、その入院は高度急性期、急性期の病院でなくても、回復期機能を持つ病院、あるいは療養病床の病院でも対応できる入院だと思うので、介護施設の入所者に対応できる体制を新たにつくっていただくことは非常に重要だと思う。ぜひ、この方向で見直していただきたい。
 なお、介護施設に入所している患者への対応について支払側委員から「まず往診やオンライン診療を活用して可能な限り施設の中で対応し、入院に至らないようにすることで医療資源の有効活用につなげるべき」との意見があった。しかし、高齢者の医療はオンラインでちょっと顔を見ただけで判断できるものではない。介護施設には看護師が一定程度おられるとはいえ、医師が直接、見て聴いて触って入院が必要かどうかを判断すべきだ。そして入院が必要と判断したらタイムリーに入院できなければいけない。こうした対応がしっかりできるようにしていただきたいと思っている。
 また、支払側委員から「コロナにかかっているときに本当に歯科に行くのか疑問」との発言もあった。しかし、コロナ罹患中でも激しい痛みですぐに診てほしいとか、吐き下しを起こしてしまったので診てほしいという場合はあり得るので、その辺はご理解いただきたい。「我慢して」というのではなく、緊急やむを得ない他の疾患が出る可能性も十分にあるので、緊急対応できる体制を残しておくことはソフトランディングのためにも必要だと思う。それは国民も望んでいることではないか。現場の感覚として訴えさせていただきたい。
 その上で、1つ質問したい。先ほどの19ページでは「介護施設の入所者等の患者について、リハビリテーションや介護保険サービスとの連携が充実している医療機関における入院医療に対する評価を行う」としている。この「介護保険サービスとの連携が充実している医療機関」の具体的なイメージとしては地域包括ケア病棟が考えられると思う。一方で、要介護状態が重くない患者さんについては、回復期リハビリテーション病棟や療養病床でも十分に対応できる。むしろ、そのほうがいいのではないかと思うが、そのような理解でいいのだろうか。その場合、現在の2類での対応では特定入院料ではなく、その他の病床にいったん下げて、そして県に届出をして、それから加算で対応することになるが、今回の案では、特定入院料を取りながら一定程度の加算をいただいてコロナ患者をみるという考え方になるのか。そこが定かではないので、お考えがあれば、お聞かせいただきたい。

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【厚労省保険局医療課・眞鍋馨課長】
 急性期病院以外での受け入れの方策について質問をいただいた。本日の資料でも、受け入れていらっしゃる医療機関に関しては、例えば参考資料27ページ(入院先の病棟毎の入院者数の推移・全体)、28ページ(同・介護施設等からの入院患者および高齢者)などで、急性期一般病棟に多く入院している実態が示されている。 
 こうした急性期一般病棟以外で、例えば資料に示したようなリハビリテーション機能や介護サービスとの連携の経験がある、あるいは、そういったことにたけているような医療機関での入院も今後は広げていかなければならないだろうと考えている。 
 こうした方針に関しては、報酬のみというわけではなく、今後、3月上旬の具体的な方針が示されてから、具体的には都道府県を中心とする自治体と、それから現場の医療機関で5月8日に向けた移行のための計画や調整が進んでいくことになる。 
 そういった意味では、やはり地域で面として、例えば池端委員から「地域包括ケア病棟」という例示もあったが、急性期一般以外で、どのように患者さんを受け入れていくかをまず総体としての計画のようなものが示されて、私どももそれに寄り添う、あるいは、それを裏打ちするかたちでの診療報酬体系の設定を考えている。そういった計画と報酬の設定は両輪で進めていくべきものだろうと考えている。
 また、池端委員からテクニカルな質問があった。特定入院料を算定しているような病棟でコロナ患者を受け入れた場合に都道府県に届出をして、いったん、その一般入院料のほうに、特別入所に切り替えて出来高算定できる措置から継続するのかというお尋ねであったが、これは一定程度継続するということを本日、お示ししている。

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■ 5類移行に伴う医療提供体制の見直し(入院調整)について
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 資料18ページ「診療報酬上の特例の見直しの方向性(案)」の①について質問したい。「外来・在宅医療」の項目で、「類型変更に伴い、療養指導やフォローアップ、入院調整において医療機関の果たす役割が大きくなる」との記載がある。私はこれを非常に重要視している。今後、病病・病診連携により入院調整が必要になってくるが、かなり大きな手間がかかる。そこに対して一定程度、ご理解いただいた内容であると思う。
 この点、先ほど支払側委員から「保健所は5類になったから入院調整から手を引くということではなく、引き続き一定の役割を担っていただく」との意見があった。しかし、私の理解では、2類相当から5類になった段階では、保健所機能として入院調整、いわば措置的な入院調整をする根拠がなくなるのではないかと思う。すなわち、基本的には医療機関間での調整、病病・病診連携でやらざるを得ないのではないか。そのため、当県では現在、順次、なんとか落とし込んでいこうということで鋭意努力している。保健所による調整は10%以下まで落ちてきているので、そのような理解をしている。 
 5類移行後も保健所機能を入院調整の中で使うことが可能なのか、医療課の所管ではないかもしれないが、おわかりであれば説明いただきたい。

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【厚労省大臣官房総括調整官・南孝徳氏】
 入院調整についてはご指摘のとおり、現在は新型インフルエンザ等感染症という位置づけなので入院措置・勧告が行政で可能になっており、病床の確保と併せて入院調整という仕組みを動かしているのが現状であると認識している。 
 1月27日の政府対策本部決定において、5類移行後の医療提供体制について具体的な方針については3月上旬をめどにお示しすることにしているが、その中で、入院調整については行政が関与するものから個々の医療機関間で調整する体制へと段階的に移行していくと記載した上で、特に重症者等に対する入院調整の在り方については改めて、3月上旬の方針の中で示すとしている。 
 法律上の根拠はご指摘のとおり、新型インフルエンザ等感染症から5類感染症にする方向で進めているので、入院措置・勧告という仕組みはなくなるが、これに代わる新たな仕組み、方法については現在、法令上の根拠や個人情報の扱いなども含めて整理している。3月上旬に示す方針の中で具体的な扱いについて示したいと考えている。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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