回復期や慢性期の口腔管理は重要 ── 歯科医療の議論で池端副会長

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2023年11月17日の総会

 令和6年度の診療報酬改定に向け、歯科医療の論点が示された厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「回復期や慢性期医療を担う病院における口腔管理は非常に重要」とし、「歯科診療所と病院の連携がスムーズに進むような一体的な体制整備を推進していただきたい」と述べた。

 厚労省は11月17日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第565回会合を開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。

 厚労省は同日の総会に「歯科医療(その2)」と題する資料を提示。7月12日の一巡目の議論「その1」で出された意見などを踏まえ、「病院における歯科の機能に係る評価」など4項目の論点を示し、委員の意見を聴いた。
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長崎リハビリ病院の先進事例を紹介

 厚労省は同日の資料で「回復期リハビリテーション病院における口腔管理の例」として長崎リハビリテーション病院を紹介。言語聴覚士や歯科衛生士、管理栄養士ら多職種による口腔管理でADL向上につなげる取り組みなどを示した。
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 論点では、「リハビリテーション・栄養・口腔の一体的な取組を推進する観点」を挙げ、「回復期医療、慢性期医療を担う病院における口腔管理の評価について、地域の歯科診療所との連携も含めどのように考えるか」と意見を求めた。

 質疑で、林正純委員(日本歯科医師会常務理事)は「入院患者に対する医科歯科連携は主に急性期の手術を行う患者等が対象」との課題を挙げた上で、「回復期・慢性期病棟の入院患者に対する口腔管理を評価する仕組みも必要」と指摘。「退院時の口腔に関する情報の連携や、地域の歯科診療所との連携も含めた検討をお願いしたい」と要望した。

 池端副会長は「長崎リハビリテーション病院等のように歯科衛生士等もしっかり配置して、STとともに口腔ケアをしっかりやっている先進的な例がある」とし、「回復期・慢性期の病院の立場からも、ぜひ推進していただきたい」と期待を込めた。

【池端幸彦副会長の発言要旨】
 歯科医療の論点のうち「病院における歯科の機能に係る評価」について意見を述べる。病院における歯科の機能の評価について、リハビリテーション・栄養・口腔の一体的な取組を推進する観点から、回復期医療や慢性期医療を担う病院における口腔管理が非常に重要であることは当然だと思う。
 そうした中で、一般病棟入院基本料を算定している病院のうち、歯科系の標榜がある割合は全体で13.6%にとどまっており、回復期リハビリ病棟を有する病院の全体では22.9%となっている。歯科を標榜している回復期・慢性期の病院はまだまだ少ない。現在、義歯の治療が中心になってしまっているという課題もある。
 一方で、今回の資料で紹介されている長崎リハビリテーション病院等のように歯科衛生士等もしっかり配置して、STとともに口腔ケアをしっかりやっている先進的な病院もあり、回復期リハビリ病棟における口腔管理の取り組みは進んでいる。
 林委員も指摘したように、多職種による関わりを進めるためにも、歯科診療所と病院の連携は重要である。歯科診療所と病院の連携がスムーズに進むような一体的な体制整備、あるいは一体的な評価が非常に重要だと思うので、回復期・慢性期病院の立場からも、ぜひ、これを推進していただきたいと思っている。

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不妊治療の保険適用、「肯定的な受け止め」

 この日の総会では、令和4年度改定で保険適用された不妊治療も議題となった。厚労省は「個別事項(その4)不妊治療」と題する資料の中で、保険適用後の状況などを報告した上で、「その影響等」や「現状の取扱いを変える必要性」などを論点に挙げた。
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 質疑で、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は学会などの意見を参照しながら「不妊治療を保険適用したことに対して、概ね肯定的な受け止め方をしていただいている」と評価した。

 支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)も「当初はどのような広がりを見せるのか読めないところがあったが、算定回数もそれなりにあり、補助金からも概ね円滑に移行できたという印象を抱いた」と述べた。

 一方、情報提供のあり方に関する課題を指摘する意見もあった。池端副会長は患者負担に関する課題を挙げ、保険適用から外れた技術について患者の理解を進める支援の必要性を指摘した。

【池端幸彦副会長の発言要旨】
 論点では、「令和4年度からの保険診療の実施状況等を踏まえ、その影響等について、どのように考えるか」としている。保険適用が始まったばかりだということもあるが、私がちょっと見聞きした範囲では、患者負担の理解について課題があるように思われる。
 現在、保険診療にならない技術については先進医療として、保険外併用療養費制度の枠組みで対応できているが、それ以外の技術については混合診療の扱いになってしまう。この理解がまだ進んでいないため、不満を訴える方がいらっしゃるとお聞きしている。相談支援事業やコーディネーター事業がしっかりしていけば解決する問題であるとは思うが、この点については、さらにしっかり対応していただきたいと要望する。
 また、論点3つ目の「胚凍結保存管理料が算定できる保存期間」については、学会の報告も参考にしながら前向きに取り組んで、期間を延ばすことも検討していただければいいと思う。
 なお、1つ質問だが、資料64ページ。「小児AYA世代の妊孕性温存療法研究促進事業」について、私は専門外なので教えていただきたいのだが、未受精卵子凍結はかなり長期にわたる凍結療法になるかと思う。この安全性に比べて胚凍結の安全性は大きく違うものなのか。技術的にかなり高度なもので、しかも安全性は現状では3年しか担保できなくて、一方で、未受精卵子は長期保存の安全性が確認されているのか。事務局でご存知であれば教えていただきたい。

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【厚労省保険局医療課医療技術評価推進室・木下栄作室長】
 この資料の出典は「健康・生活衛生局 がん・疾病対策課」となっており、健康・生活衛生局で取り組まれている事業なので、大変申し訳ないが、今、お答えできるものを持ち合わせていない。また改めて検討させていただきたい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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