「メガ在宅」とも補完しあう関係で ── 中医協総会で池端副会長
在宅医療の地域差が議論になった厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「往診専門のクリニックや大規模に組織化したグループ(メガ在宅)がある」としながらも、「それらを否定せず補完しあう関係で進めていくべき」との考えを示した。
厚労省は7月12日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第549回会合を都内で開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。
厚労省は同日の総会に「在宅(その1)」と題する資料を提示。その中で訪問診療について「増加しているが、人口あたりで最大3.5倍の差」とし、往診についても地域差を指摘。「増加していない都道府県が存在する」とした。
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地域の実情に応じた体制整備を
質疑で、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は「都道府県ごとのばらつきは、需要面である患者さんの年齢などの要素と、供給面である外来、入院の体制、訪問看護の提供状況の要素もあり、一元的に解釈すべきではない」と指摘した。
その上で、長島委員は「地域の実情に応じた体制整備を進めることで、在宅医療のネットワークと地域包括ケアシステムの構築がさらに進む」と述べた。
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コロナ特例が「一定程度、寄与」
長島委員はまた、「往診料が増加傾向としているが、コロナの影響はどれぐらいあるのか」と質問した。
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厚労省保険局医療課の眞鍋馨課長は、コロナ特例が「往診の算定回数の増加に一定程度、寄与している」としながらも、「どれだけ増えたかという定量的な把握はちょっと難しい。今後の算定回数等の動向には注目していきたい」と述べた。
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深夜の往診を積極的に受けている
支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「地域間のばらつきに関して各委員からいろいろ質問が出ている」と前置きした上で、夜間や休日の往診に言及。「福島県がほかと比べて特に突出している。どういった理由で、このような状況になったのか」と尋ねた。
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眞鍋課長は「定量的な分析はないが、一部の医療機関で深夜の往診を積極的に受け付ける所が増加しているのは把握している」との認識を示した。
その上で、眞鍋課長は「そのような医療機関の動向も含めて、より詳細に見ていく必要がある」とし、「必要に応じてデータを提出したい」と述べた。「訪問診療の提供量についてデータはあるか」との問いには、「医療計画で定められた必要量に応じて提供されるべき」と答えた。
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地域で受け止める体制を
江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は「医師が1人で24時間365日の対応をするのではなく、近隣の診療所や在支病等の中小病院と連携のもと、24時間対応の体制を平時から構築することが必要」とし、往診について連携体制を評価している「在宅療養移行加算2」を挙げた。
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その上で、江澤委員は「今後、連絡体制の連携も含めて、こうした仕組みを普及・拡大して、地域で急変時の対応や看取りをしっかりと受け止める体制を構築していくことが喫緊の課題」と述べた。
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補完しあう関係で進めていく
池端副会長は、地域差が生じる原因として往診専門のクリニックや大規模に組織化したグループ(メガ在宅)などの存在を挙げ、都市部に進出している現状を紹介。「在宅医療には非常に地域差がある」と強調した。
その上で、池端副会長は「メガ在宅などを否定するつもりはない。それも含めて補完しあう関係で、かかりつけ医機能を進めていくべき」と説いた。
池端副会長はこのほか、在宅のテーマに挙げられた「訪問栄養食事指導」について質問した。詳しくは以下のとおり。
■ 訪問診療・往診等について
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在宅医療に関して、37ページ(都道府県毎の在宅患者訪問診療料の算定状況)、38ページ(都道府県毎の往診料の算定状況)を見ると、もちろん地域差はあるが、それほど大きな差はない。
一方で、42ページ(都道府県毎の夜間・深夜往診加算及び休日往診加算の算定状況)、50ページ(都道府県毎のターミナルケア加算・看取り加算の算定状況)を見ると、かなり地域差が明確に出ている。50ページ(ターミナルケア加算・看取り加算)では、特に都会が非常に進んでいるような印象がある。その原因として、私は主に3つの大きなグループの存在があると思う。すなわち、ターミナルケア加算や24時間対応ができる医療機関として、①かかりつけ医が午後から往診する本来のやり方の往診、②訪問診療、往診専門のクリニック、③かなり大規模に組織化した「メガ在宅」と言われるグループ──という3つがあるかと思う。
私は基本的には、かかりつけ医が自分の患者さんを診て、通えなくなったら、なじみのかかりつけ医がニーズに応じて訪問診療に行って最期を看取るという流れが最もいいと思う。
とはいえ、先ほど江澤委員もおっしゃったように、24時間365日、1人診療所の先生が診るのは非常に苦しい。途中から在宅専門の先生に任せると、そこでブツっと切れてしまう。「私たちに全て任せてください」と言われてしまうことがある。それが進んでいくことに対して、私は悪とは言わないが、やはり大事にしなければいけないのは、ずっと外来から続いてきた患者さんとの関係。なじみのかかりつけ医と患者さんとの関係がそのまま維持していくのが一番いい。
そこで補完的に、夜間だけ、週末だけちょっと診てくれる所と連携すれば、かかりつけ医もずっと関わっていける。今後、そういう在宅が必要ではないか。
都会では、「メガ在宅」や訪問診療クリニックがどんどん出てきている。アクセスが非常に優れているからだ。それに対し、地方ではどうか。私の福井では、在宅専門のクリニックが成り立たない。点在していて距離があるので1日に何十件も回れない。
そういう状況がある中で、今後の在宅医療を全て都会型に置き換えてしまって「在宅がうまくいきましたね」というのは本末転倒だと思う。在宅医療というのは非常に地域差があるのだということを強調しておきたい。
どういう体制をこれから構築するかは別として、そういう地域差をしっかり見て、どの地域でも在宅が進むような体系に進めていかないと、ひょっとしたらボタンの掛け違いになってしまって、地方ではギクシャクしてしまう可能性がある。
もう1つ強調しておきたいのは、「メガ在宅」や訪問診療クリニックを否定するつもりはないこと。それらも含めて補完できる、補完しあえる関係で、かかりつけ医機能を進めていくことを検討しながら体系を考えていただきたい。
200床未満の在宅療養支援病院や在支診、地域支援病院等がそこに少し関わっていく。地域包括ケア病棟を持っている在宅療養支援病院等が最も適しているかもしれないが、そういう医療機関との連携も進むような政策も必要ではないか。
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■ 訪問栄養食事指導について
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同時改定に向けた意見交換会でもリハ・口腔・栄養の一体的な取り組みを進める必要性は指摘され、非常に重要であると思う。確かに訪問栄養食事指導の算定回数は増加しているが、月に約1万回程度であり、他職種が行う在宅医療等に係る報酬と比べると少ない。
第8次医療計画では、栄養ケア・ステーション等の活用も含めた体制整備を行うことが求められている。当県にも栄養ケア・ステーションはあるが、病院は自分の管理栄養士を持っているので、そこから自院の職員を派遣できる。
一方、診療所がかかりつけの患者さんを診て、栄養管理が必要だと思って派遣する場合、つまり栄養ケア・ステーションを利用するときには個別に契約を結んでステーションから派遣しないと診療報酬が算定できないと聞いたが、そういう理解でよいか。診療所が栄養ケア・ステーションの管理栄養士を使う場合に、指示等は出せるのか、それは診療報酬上、認められるのかどうか。その辺の仕組みが明確ではないので教えてほしい。
もし何かハードルがあるのならば、それを少し緩めるような方向も考えていただくといい。せっかく各都道府県に栄養ケア・ステーションがあるのに、実際にはなかなか動いてないというのが現状ではないか。
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【厚労省保険局医療課・眞鍋馨課長】
栄養ケア・ステーションは全国で110箇所。登録されている管理栄養士の数は4,000名を超えている状況である。医療機関が栄養ケア・ステーションと連携し、そして訪問栄養食事指導を行うに関しては契約が必要であるということはそのとおりである。どのような形態であれば確実に報酬を算定できるのか、また必要に応じて示したい。
(取材・執筆=新井裕充)
2023年7月13日