「総合的なケアマネジメントの推進を」 ── 総合確保方針の審議で厚労省

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武久洋三名誉会長_2023年2月16日の医療介護総合確保促進会議

 厚生労働省は2月16日の会合で、「入退院から介護サービスの利用までを含めた総合的なケアマネジメントの推進を目指す必要がある」との考えを示した。当会の武久洋三名誉会長は「医療・介護のマネジャーである『メディカルケアマネジャー』が医療・介護サービスを適切に選べるようにすべき」とコメントした。

 厚労省は同日、医療介護総合確保促進会議(座長=田中滋・埼玉県立大学理事長)の第19回会合をオンライン形式で開催し、当会から武久名誉会長が構成員として出席した。

 厚労省は同日の会合に「総合確保方針の見直し(案)」を提示。改定案とともに示した別添の「ポスト2025年の医療・介護提供体制の姿(案)」では、前回会合で出された意見を紹介しながら修正部分を説明した。

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医療・介護の複合的ニーズを有する高齢者が増加

 厚労省保険局医療介護連携政策課の水谷忠由課長は、医療機能に関する記述を説明する中で、「(前回会合で)武久構成員から、介護ニーズのある人も急性期病院に多く入院されているという実情とその対応についてご指摘いただいた」とし、加筆した箇所を読み上げた。

 それによると、「医療・介護の複合的ニーズを有する高齢者が増加する」とした上で、「介護保険施設との協力や役割分担も含め検討していくことが必要」としている。

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01スライドP3抜粋ポスト2025年の医療・介護提供体制の姿_20230216_ページ_03

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総合的なケアマネジメントの推進を目指す

 
 水谷課長はまた、ケアマネジメントに関する記載について「前回、武久構成員から『ケアマネジメント』と言うときに、医療・介護を含めた全般にわたるケアマネジメントがこれから特に重要になるとのご指摘を頂戴した」と伝え、加筆部分を読み上げた。

 それによると、ケアマネジメント機能を発揮できるように「包括的な検討を行うことが重要」とし、「入退院から介護サービスの利用までを含めた総合的なケアマネジメントの推進を目指す必要がある」としている。

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02スライドP7抜粋ポスト2025年の医療・介護提供体制の姿_20230216_ページ_07

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 こうした修正案を受け、武久名誉会長は「ケアマネジャーに医療のことを勉強していただき、医療も介護も1人の『メディカルケアマネジャー』がコーディネートすることで、利用者に対するサービスがスムーズに行き届くようにする必要がある」と述べた。

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二次救急はどこに位置するのか

 この日の会合では、健康保険法等の一部改正案について報告があり、資料中に示された「地域完結型の医療・介護提供体制」のイメージ図をめぐり議論があった。

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03スライドP2健康保険法等の一部改正案_20230216_ページ_2

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 日本医療法人協会の加納繁照会長は「これからの医療・介護は地域密着で、高齢者救急が非常に大きな役割を担う。地域には200床以下の二次救急病院も多い」とし、この図の中で「二次救急はどこに位置するのか。救急車が高度急性期の所にだけ書かれている」と疑問を呈した。

 日本医師会の猪口雄二副会長も「二次救急を受け持っている病院などもここに列記しなければ現状と合わない」と指摘した。

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04スライドP2抜粋健康保険法等の一部改正案_20230216_ページ_2

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 厚労省の担当者は「今回はかかりつけ医機能を有する医療機関等の関係の中で記載したものであり、必ずしも全てを網羅するものではない」と説明。「高齢の救急患者をどうやって地域で支えるかは大切な問題だと考えている」と理解を求めた。

 こうした議論を踏まえ、武久名誉会長は「県内トップの救急医療センターへ行かなくても近くの二次救急や地域多機能病院で受け入れるなど、救急を2つに分割して対応していく流れがある」と指摘し、加納会長の意見に賛同した。

 武久名誉会長の発言要旨は以下のとおり。

■「ポスト2025年の医療・介護提供体制の姿(案)」について
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 介護保険が始まったのが2000年なので、もう23年になる。当時は医療を受ける人と介護を受ける人がかなり分割されていた。
 その後、厚労省に医療介護連携政策課ができた。現在、1人の人が医療保険と介護保険を同時に利用している状況になっている。
 資料3(ポスト2025年の医療・介護提供体制の姿)の3ページに書かれているように、医療・介護の複合的ニーズを有する高齢者が多くなってきた。同じ人が同時に医療も介護も受けている。 
 ところが、残念ながら医療でも特に急性期医療における介護のウエイトが非常に少ない。急性期病院でも高齢の入院患者が多くを占めているにもかかわらず、急性期医療に介護の要素が少ない。そのことによって介護の必要な人が増えるという状況になっている。 
 同じ人が医療と介護の両方を行ったり来たりしている中で、ケアマネジャーは「ケア」のマネジャーであるから、主に介護のマネジャーである。しかし、これからは医療・介護のマネジャーである「メディカルケアマネジャー」が利用者1人ひとりに付いて医療・介護のサービスを適切に選ぶようにしたほうがいい。医療側と介護側の別々の立場でいると、スムーズにいかなくなるような気がしている。
 ケアマネジャーとして頑張っていただいている方々に医療のことを少し勉強していただいて、医療も介護も1人の「メディカルケアマネジャー」がコーディネートすることによって、利用者に対するサービスがスムーズに行き届くようにしてあげる必要があると思う。

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【厚労省保険局医療介護連携政策課・水谷忠由課長】
 本日、さまざまなご指摘を頂戴した。総合確保方針は医療計画、介護保険事業計画の基本方針の上位に位置するものである。 
 さらに今回、新しくつくった「ポスト2025年の医療・介護提供体制の姿」は、あるべき姿を描いている。これを実現していく手段として、医療計画、介護保険事業計画もあるし、医療介護総合確保基金あるいは診療報酬、介護報酬、さまざまな手段がある。そうした意味において、総合確保方針、あるいは別紙の「ポスト2025年の姿」に記載すべきことを記載した上で、実現していくにあたって、どういう観点を重視すべきか、座長とも相談しながら整理してまいりたい。

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■ 地域完結型の医療・介護提供体制の構築について
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 加納先生がおっしゃったように、救急は高度救急ばかりではない。2022年の改定では慢性期病院でも救急を取れば減算されない措置が入った。厚労省側としては、慢性期の患者さんが急変した場合、県内トップの救急医療センターへ行かなくても、近くの二次救急で対応したり、地域多機能病院が受け入れたりすればいいという考えがあるのだろう。救急を大きく2つに分割して対応していこうという流れがあるように感じる。
 しかし、この図を見ると、加納先生がおっしゃったように特定機能病院の所にしか救急車が行かないような感じの絵になっている。高齢者が急変する場合が非常に多くなっているので、そのあたりを皆さんにご理解いただけるようなイラストにしていただきたいというのが加納先生のご意思であると思う。私もそれに同感であるので発言させていただいた。

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【厚労省医政局地域医療計画課・鷲見学課長】
 医療計画について昨年末に一定程度の取りまとめが行われたが、その際にも、今後増えるであろう高齢者救急の重要性、その対応についてはしっかり記載されている。先生方のご指摘を踏まえて、こうしたポンチ絵を作る際には、そうした点もわかりやすいように、漏れがないように検討させていただきたい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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