「皆さんの意見を丁寧に反映している」 ── 介護保険制度の見直し案に橋本会長

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橋本康子委員(日本慢性期医療協会会長)_20221219介護保険部会

 介護保険制度の見直しに向けた意見書をまとめた厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の橋本康子会長は「皆さんの意見を丁寧に反映している」と評価した。厚労省老健局の大西証史局長は「来年も検討を深めてまいりたい」とあいさつした。

 厚労省は12月19日、社会保障審議会(社保審)介護保険部会(部会長=菊池馨実・早大理事・法学学術院教授)の第105回会合をオンライン形式で開催し、当会から橋本会長が委員として出席した。

 厚労省は同日の部会に「介護保険制度の見直しに関する意見(案)」を提示。政府の会議が16日にまとめた報告書などを踏まえ、前回会合では空白にしていた「給付と負担」に関する記載などを追加し、委員の意見を聴いた。

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来年も検討を深めていきたい

 「給付と負担」の議論などで意見が分かれていた項目は両論を併記した上で継続審議となった。高齢者負担の見直しや多床室の室料負担は「次期計画に向けて結論を得る」とし、ケアマネジメントの利用者負担は「第10期計画期間の開始までの間に結論を出す」としている。「意見(案)」は大筋で了承された。

 取りまとめに際し、菊池部会長は「全世代型社会保障構築会議との調整もある中で、皆さまの委員の意見を丁寧に聴いて取りまとめていただいた」と謝意を示した。

 大西局長は「意見書において次期計画に向けて結論を得ることが適当とされた1号保険料負担の在り方や、利用者負担における一定以上所得の判断基準については当部会で引き続きご議論いただく」と伝え、「来年もこれらの課題について委員の皆さまから活発なご議論、ご指導により検討を深めていきたい」と述べた。

 この日の会合で橋本会長は、多床室の室料負担、ケアマネジメントに関する給付について意見を述べた。橋本会長の発言要旨は以下のとおり。

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20221219介護保険部会

■ 多床室の室料負担について
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 今回の取りまとめは非常に丁寧に皆さんの意見を反映している。感謝を申し上げる。その上で意見を述べる。
 35ページ。多床室の室料負担について「介護給付費分科会において介護報酬の設定等も含めた検討を行い、次期計画に向けて、結論を得る」としている。
 今後の検討に向けては、介護保険3施設における入所者の性格を考える必要がある。特養、老健、介護医療院の入所者はそれぞれ異なることを改めて指摘する。
 すなわち、老健は在宅復帰を目的とした療養支援を行う場であり、介護医療院は長期療養を必要とする者に対する医療を提供する場である。各施設が有する機能には違いがある。老健と介護医療院は、医療提供施設として在宅復帰のためのリハビリや濃厚な治療等を行っており、入所者・退所者の状況や居住環境も特養とは異なるため、室料を求めるべきでない。
 なお、特養は事実上の生活の場であるから多床室の室料負担があるとされるが、地方では、電気やガス代は負担しても室料は負担しない特養のほうが多いように思う。私の知る限りでは、広めの個室ではご負担いただくが、狭い個室なら室料をいただかない。広めの個室であっても、支払える人のみ負担していただくケースが多いように思う。

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■ ケアマネジメントに関する給付について
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 ケアマネジャーが人員不足である。今後さらに減り続け、介護職と同じような状況になるのではないかと危惧している。
 ケアマネジャーの業務には幅がある。参考資料に「ケアマネジメント業務以外で、必要に迫られ、やむを得ず行ったことがあること」が多く挙げられている。ケアマネジャーの業務負担は大きいものになっている。
 今後、認知症の人が増えてくると、時間をかけて丁寧に話を聴くケースも増えるだろう。認知症ではない高齢者に比べて、時間をかけた特別なケアマネジメントをしなければいけない場合もあると思う。
 そうした中で、かかりつけ医との連携もケアマネジャーの役割になっていくのではないか。現在のケアマネジャーの人数では、かかりつけ医などと連携を取るのは難しい。そうしたことも考えていかなければいけない。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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