「かかりつけ医機能が少し落ちている」 ── 11月28日の医療保険部会で武久会長
日本慢性期医療協会の武久洋三会長は11月28日、次期改定の基本方針などを審議した厚生労働省の会議で、開業医の高齢化や後継者不足などに触れながら「かかりつけ医機能が少し落ちている」との認識を示し、多機能な中小病院と診療所との連携などを進める必要性を指摘した。
厚労省は同日、社会保障審議会(社保審)の医療保険部会(部会長=遠藤久夫・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第122回会合を開き、これまでの議論を踏まえた基本方針(案)を示した。
医療従事者の勤務環境を改善するための施策などを「重点課題」に位置付ける方針に変わりはなかった。
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これに対し、保険者の代表など支払側委員は、ほかにも優先課題があることを指摘し「残念」と述べたが、強く反対することはなかった。
議論を踏まえ、遠藤部会長は支払側の意見に配慮しつつ「だいたいこの内容でご了承いただけたと思う」とまとめた。
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かかりつけ医と病院、「うまく連携を」
質疑で、池端幸彦委員の代理として出席した武久会長は、改定の基本的視点2《患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現》に挙げられた「かかりつけ機能の評価」について意見を述べた。
基本方針(案)では、「複数の慢性疾患を有する患者に対し、療養上の指導、服薬管理、健康管理等の対応を継続的に実施するなど、個別の疾患だけでなく、患者の療養環境や希望に応じた診療が行われるよう、かかりつけ医機能を評価」としている。
武久会長は、在宅医療に取り組む開業医が地方で不足している原因などを挙げ、「かかりつけ医はかかりつけ医、病院は病院というふうに分けないで、ここを地域医療でうまく連携できるような方策を講じていただけると大変ありがたい」と提言した。
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【武久会長の発言要旨】
「改定の基本的視点2」のかかりつけ医の問題について述べる。私の周辺では、かかりつけの開業医が高齢化しており、医院を辞めてしまう先生方が結構いらっしゃる。その息子さんもお医者さんなのだが、なかなか継いでくれないという事情もある。
現在、有床診療所だけではなく無床の診療所もだんだん減っている。都会では、在宅専門の先生がビル診などで効率化している。
地方では、土地を買って、そこに建物を建てて開業医を始める先生もおられるが、投下資本に見合うだけのインカムがなかなか得られないので、かかりつけ医というもの自体の機能が少し落ちているような感じがする。
開業医の先生が地域の患者さんの医療を守り、その近くにある多機能な病院が連携して、うまく在宅医療が進められるようにすることが医療行政において非常に重要なことだと思う。かかりつけ医はかかりつけ医、病院は病院というふうに分けないで、地域医療でうまく連携できるような方策を講じていただけると大変ありがたいと思っている。
(取材・執筆=新井裕充)
この記事を印刷する2019年11月29日