2020年の役員合同新年会を開催 ── 日慢協とLTAC研究会
日本慢性期医療協会(日慢協)と日本長期急性期病床研究会(LTAC研究会)は1月9日、2020年の役員合同新年会を開催した。開会のあいさつで、日慢協の武久洋三会長は「アウトカムが良くなったら、ご褒美をどさっとやる。その代わり、90歳で手間がかかる高齢者らの場合には『重症患者手当』を出してはどうか」と提案した。LTAC研究会の上西紀夫会長は、地域の病院同士の連携を進めるため、今年度から新たに「地域病病連携推進機構」(仮)を発足させる予定であると伝えた。
合同新年会に先立つ日慢協の定例記者会見で武久会長は「基準リハビリ」の導入を提案。「病棟に何名のリハビリ療法士が在籍しているかを看護職員や介護職員と同じように評価してはどうか。病棟をあげてアウトカムを意識し、短期間の入院で日常に戻ることができるように、あらゆる病棟が在宅復帰に向くことで、入院日数の短縮化が可能になるだろう」と説明した。
武久会長は新年会のあいさつでも「基準リハビリ」の制度に言及し、「20分間1単位というよりは、5分でも3分でも、必要に応じたリハビリを実施すべきで、そうすれば個別ではなく集団でもできるし、いろいろなリハビリができる。看護職員や介護職員などと共にリハビリを一緒にすることもできる」と述べた。
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続いて、LTAC研究会の上西会長があいさつ。「これからは、やはり病院同士のコネクション。そして、しっかりとコミュニケーションをとらなければいけない」と連携の必要性を強調した上で、「地域の病院同士の連携なども含めて検討する勉強会をつくろうということで、LTAC研究会を終了し、令和2年度から『地域病病連携推進機構』(仮)を発足させる。一緒にいろいろと考えていきたい」と多くの参加を呼び掛けた。
乾杯のご発声は、パラマウントベッド株式会社の木村恭介代表取締役社長。「年が明けて、株価が乱高下している。産業界には、いい話はどこにもないが、うちの株は上がっている」と笑いを誘った上で、「ベッド以外にもいろんなことに取り組み、皆さまのところにお届けをしたいと思っている」と抱負を語った。
新年会の模様は以下のとおり。
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現場からしか見えない部分がある
[司会:池端幸彦副会長]
ただいまから、日本慢性期医療協会ならびに日本長期急性期病床研究会の役員合同新年会を開催したいと思います。司会進行させていただきます、副会長の池端と申します。どうかよろしくお願いいたします。(拍手)
ありがとうございます。では、令和初めての新年会、武久会長から、まずごあいさついただきたいと思います。よろしくお願いいたします。(拍手)
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[武久洋三会長]
あちらこちらから、非難されております武久でございます。なかなか褒めていただけませんけれども。(笑)
実は私の誕生日は1月6日です。晴れて78歳ということで頑張っておりますが、どうも白髪は増えるし、なんとなく、ちょっと年寄ったかなと思います。80歳ぐらいまで頑張ろうかなと思ってますので、よろしくお願いします。(拍手)
恒例の新年会でございますが、本当に、お忙しい中、多方面の先生方にお越したまわりまして、誠にありがとうございます。
私は、なんか、ほかの団体に嫌われてるような気がして、どこかで襲われるかなと思っているんですけども。(笑) 「寝たきりは急性期病院でつくられる」なんて言っておりますし。
今、急性期病院に入院する患者さんの高齢化が進み、高齢者が倍になっているんですね。現実に、「クローズアップ現代」でも言われていましたように介護の必要な人が多いので、夜中にうろうろされたら困るということで拘束したり、バルーンカテーテルを入れたりしている。「こうしないと看護はやっていけないんです」と、現場の看護師さんたちがテレビでおっしゃっているんですね。
歩ける人が急性期に入院して、1カ月ぐらいをそういう状態でいると、今度は寝たきりになってしまう。それを介護側が引き受けて、介護保険はどんどん増大していくというようなことも、ちょっと問題ではないかと思います。
先生方の所でも、同じことがあるのではないでしょうか。われわれは現場でいろいろやっていると見えてくる。現場からしか見えない部分が非常に多いので、その現場発信をするということが、私たちの役目かと思い、このように言っております。
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「基準リハビリ」を導入してはどうか
先ほど行われました記者会見で「基準リハビリ」の制度を提案致しました。今、病院の入院費が「基準看護」という仕組みになっており、看護師さんの数だけで入院基本料が決まっています。これは、ちょっとおかしいんとちがう? ということで、去年の8月に「基準介護」という概念を提案しました。
急性期病院でも介護の必要な人がすでに倍になっている。そういう状況で、看護師さんがオムツを換えたり、トイレ誘導をしたりするよりも、やっぱり看護は看護本来の業務に専念して、介護の業務は介護職員にまかせるほうがいいだろうと思います。
リハビリテーションも今、20分間1単位として実施しています。「熱が出ているから、今日はリハビリをしたくない」と言ったら安静にしたほうがいいのに、わざわざ病室へ行って、20分間足をマッサージすることに意味があるのかなと思う。
そうじゃないだろうと。やはり、どれだけ良くなったかというアウトカムですよね。今年4月の改定に向けて、厚労省保険局医療課の森光課長さんも、リハビリのアウトカム評価に関する資料を前回と同じように出されております。
私は、病棟に介護職員を一定以上入れるべきと言っております。「基準看護」だけではなく、「基準介護」を制度に入れて、さらに今日の記者会見でお話し致しました「基準リハビリ」の制度を導入してはどうかと思います。
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アウトカム評価と「重症患者手当」を
実際、病院にPT・OT・STが100人いたとしても、外来のリハビリは、ほんの10人ぐらいです。ほとんどは入院患者のリハビリをしています。回復期リハビリ病棟で疾患別のリハビリをしています。
しかし、回復期だけにリハビリを集中するよりは、病気になったら、すぐにリハビリをしたほうがいいことは間違いないのです。
このことは、診療報酬改定を担当する保険局医療課も分かっていて、脳血管障害のリハビリだったら6カ月、その始まりの日は、発症の日です。回復期に入院した日ではないんですよ。厚労省にはそういう考え方がベースにある。
リハビリ療法士が訓練室のスタッフ控室にいるよりは、病棟の詰所にいてくれたほうが何かと便利だし、リハビリに関わるのに20分間1単位ということではなく、5分でも3分でも、場合によっては必要に応じていろんなリハビリを実施すべきではないかと思います。そうすれば、個別ではなく集団でもできるし、いろんなリハビリができます。看護職員や介護職員などと一緒にリハビリを提供することもできます。
そのことによってアウトカムが良くなったら、ご褒美をどさっとやる。その代わり、年寄りで90歳でも、なかなかFIM点数が上がらない人に対しては、手間がかかるということで、そういう人には「重症患者手当」のようなものを出していただくということも、1つの案として考えていきたいと思います。
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治るものなら治してさしあげる
医療というのは、信頼関係が大事です。FIM利得が10点になった途端に、それまで15だったのが23に上がっている。こういうデータを厚労省が中医協に出しているんですね。
つまり、こういうふうに制度が変わったら、病院はこんなふうに対応しているという意味で出されているわけです。現場を信用できないぞというデータを出されているわけです。やっぱりそう思われても仕方がないようなデータです。しかし、われわれ日慢協はきちんとやりたいと思います。
お年寄りの皆さんにはそれぞれ寿命があります。寿命だけは全うさせてあげたい。急性期病院で寝たきりにされて、低栄養で脱水になった患者さんも、治るものなら治してさしあげて、本来の寿命を全うさせてあげるというのが、慢性期医療の主なテーマでないかと思っております。
今年は2020年という切りのいい年です。次の切りのいい年は2030年ですから、その時には私はおりません。(笑)
ここにおられる人も一部はいらっしゃいませんけれど(笑)、向こうから見ておりますので、今日は楽しくなさってください。本日は、ありがとうございます。(拍手)
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一つの時代が終わって次の時代に
[司会:池端副会長]
ありがとうございました。では、引き続きまして、日本長期急性期病床(LTAC)研究会会長の上西先生です。よろしくお願いいたします。
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[上西紀夫・LTAC研究会会長(公立昭和病院院長)]
皆さん、明けましておめでとうございます。諸先輩の中、大変僭越ですけども、ご指名ですので、一言ごあいさつをさせていただきますが、悪者の急性期病院の代表でございます。(笑)
先ほど、武久会長がお歳の話をされましたけど、私も今月で72になります。要するに子年、年男。「子」の字について申し上げますと、「子」は2つの文字からなっているんですね。
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「了」という字と「一」です。つまり、「了」というのは「完了」の「了」で終わった。で、「一」は初め。一つの時代が終わって、次の時代になるよというのが子年なんです。ですから、これからです。
でも、今年はどうでしょうか。厳しい年になるような気がして、非常に困っております。特に急性期は、今、ひいひい言っております。もちろん、慢性期の先生方も非常に大変なことになっていると思います。地域医療構想、地域包括ケア、そして働き方改革です。
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病病連携をどのように進めていくか
こうした中で、私どもLTAC研究会では地域包括の話をさせていただいて、今、仲井培雄先生(芳珠記念病院理事長)が地域包括ケア病棟協会の会長として非常に頑張っていらっしゃる。ということで、LTAC研究会の目的はおおむね達成できたと思っております。
これからは、やはり病院同士のコネクション。そして、しっかりとコミュニケーションをとらなければいけない。それも、単に病院同士がちょこちょこ話すのではなくて、もっと密に、病院同士が機能をお互いに理解しながらやる。これはなかなか難しいと思うんですね。病院同士は非常に利害関係が強いですからね。
でも、そうしていかないと、これからは非常に厳しい時代。今後、人口が減って診療報酬は大きく上がらない。そうなると、どこかでいろいろと検討していかなければいけないだろうと思います。
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そこで、地域の病院同士の連携なども含めて検討する勉強会をつくろうということで、LTAC研究会を終了し、令和2年度から「地域病病連携推進機構」(仮)を発足させます。今後、病病連携をどのように進めていくのか、どういうかたちでやればいいのか。特に都会よりも、地方とか、そういう所で、どうやってうまく連携していくか。
そのために、ぴしっとした病院のいろんなシステムをつくらないと、たぶん、町がつぶれていくと思うんです。ですから、そういう地方の町で病院同士、あるいは地域の先生方を中心とした医療関係がきちんとないと、おそらく、もっとひどいことになると思います。一緒にいろいろと考えていきたいと思います。
この日慢協では、私も大変、勉強させていただきました。新しい機構も含めて改めて勉強したいと思いますし、引き続き先生方のご指導をいただければ大変ありがたいと思います。お願いともども、ごあいさつとさせていただきたいと思います。ありがとうございます。(拍手)
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日慢協の皆さんが一番安定している
[司会:池端副会長]
上西先生、ありがとうございました。では、このあと乾杯に移りたいと思います。
グラスを持っていただきまして、乾杯のご発声は、例年、本当にお忙しい中、いつも駆けつけていただいて、公私とも陰日向でお世話になっています、パラマウントベッド株式会社代表取締役社長、木村恭介様にお願いしたいと思います。木村様、よろしくお願いいたします。
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[木村恭介氏(パラマウントベッド株式会社代表取締役社長)]
皆さま、おめでとうございます。ご指名でございますので、ちょっとお話しをさせていただきます。
年が明けて、株価が乱高下しております。これもアメリカと中国の関係だけで動いている、戦争がどうのこうのということで動いている。産業界には、いい話はどこにもありません。それなのに、うちの株は上がっている。(笑)
非常に難しい時代です。2009年ごろは、ベッドを22万台ぐらい作っていたのですが、今期は15万台がいいところで、7掛けぐらいですね。非常に厳しい時代になっております。株価だけは、なんとかという、そういう状況でございます。
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[武久会長]
期待感ですよ、期待感。(笑)
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[木村氏]
ありがとうございます。ということで、ベッド以外にもいろんなことに取り組み、皆さまのところにお届けをしたいなというふうに思っております。
この日慢協の皆さんが一番安定している分野でございますので、今年も何とぞ、よろしくお願いします。(笑)
おめでとうございます。乾杯!
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(取材・執筆=新井裕充)
2020年1月10日