「中心静脈栄養を抜くことは現実的にはできない」 ── 9月5日の入院分科会で池端副会長

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池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)_20190905中医協入院分科会

 日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は9月5日、次期改定に向けて療養病棟入院料の医療区分などがテーマになった厚生労働省の会議で、中心静脈栄養(IVH)の長期患者について「急性期病院から一定程度の持ち込みがある。一度入れられたIVHを抜くことは現実的にはできない状況にある」と理解を求めた。

 厚労省は同日、中医協の診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(分科会長=尾形裕也・九州大学名誉教授)の2019年度第6回会合を開き、厚労省の研究班や作業グループなどの分析結果を示した。

 この中で厚労省の担当者は、中心静脈栄養の実施率が医療区分3で48.3%であることや、長期にわたり中心静脈栄養を実施している患者がいることを改めて紹介。「長期間留置する場合にはカテーテル感染などの合併症に注意する必要があるのではないか、というご意見を頂いているところ」と伝えた。
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20190905中医協入院分科会
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 質疑で、保険者を代表する委員は「中心静脈栄養が延命措置で行われている場合があるのは想像に難くない。アドバンス・ケア・プランニングを被保険者、家族に広めて取り組む必要がある。中心静脈栄養がどういう状態にあるかを明らかにして、もし改める点があれば改善をお願いしたい」と述べた。

 これに対し池端副会長は、感染対策にも十分に取り組んでいることなどを説明。延命中止をめぐる問題にも言及し、「国民的議論もしていかなければいけない」と述べた。

 池端副会長の発言要旨は以下のとおり。

〇池端幸彦副会長
 作業グループの分析は、「入棟時」と「基準日」という2点の定点調査となっている。このため、入棟時の「持ち込みのIVH」なのかは、2点での比較なので、きちんと判断できないのではないか。急性期病院からの一定程度の持ち込みがあることは間違いない。
 厚労省の資料によると、医療区分3の半分がIVHとされているが、療養病床の入院患者のうち医療区分3は3割弱であり、その半分なので15%か20%ぐらいである。これが本当に多い数字なのか、「けしからん」という数字なのか、もう少し冷静に考えていただきたい。
 中心静脈栄養の患者に対する感染対策は十分になされており、定期的に、あるいは高熱が出た場合などにはカテーテルの入れ替えをしている。そういった努力によって入院日数が長くなっているという一面もある。療養病棟を信用していただきたいと思っている。
 こうした問題については、われわれ療養病棟の団体としても分析したい。先日、当協会内で、約6,300人のアンケート調査を実施したので、次回の会合で結果を報告させていただきたい。
 中心静脈栄養の実施が長期間にわたっていることについて指摘があるが、この5年から10年の間に、急性期病院でIVHを入れてから慢性期病院に送られてくるケースが非常に増えている。急性期病院で入れられてしまったIVHを慢性期病院で抜くことは現実的にはできない状況にあるということをご理解いただきたい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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