「日本特定看護師協会(仮称)」を設立へ ── 7月12日の定例記者会見

会長メッセージ 協会の活動等

武久洋三会長20180712会見

 日本慢性期医療協会は7月12日の定例記者会見で、「日本特定看護師協会(仮称)」の設立に向けて準備を進めていることを発表しました。会見で武久洋三会長は、特定行為研修を修了した後の研修などフォローアップ体制を充実させていく必要性を指摘。「研修修了後も特定行為業務を継続しなければ忘れてしまう。特定行為研修に最初から参加して100名を超える研修修了者を出している日慢協が、厚労省の看護課や日本看護協会とも今後連携を取り、レベルを上げていきたい」と述べました。

 会見で武久会長は「特定看護師というのは、一体どこで活躍するのか。ICUやHCUなど高度医療の中で医師の補助として仕事をするのだろうか」と問題提起。21区分38行為のうち、日本看護協会がカバーしている区分との間に差があることを指摘し、「特定看護師はICUなどの急性期医療において必要というよりも、慢性期医療、さらには在宅医療にこそ必要である。訪問看護ステーションの訪問看護師が在宅に行っていろいろな処置ができれば、これほど役に立つことはない」との考えを示しました。

 武久会長はまた、「介護医療院などの責任者は医師ではなく特定看護師でもいいのではないか」との問題意識も提示。「特定看護師の制度がどんどんレベルアップしていって、諸外国のように、ある一定の基準を満たしたならば、適当と思われる分野については特定看護師にある程度任せるというような制度改正が行われる可能性はある」と見通しました。

 日本看護協会との関係については、「連携を強めていきたい」とし、新たに設立する日本特定看護師協会について「あくまでも日慢協内部の組織であり、外部に独立して設立するものではない」と述べました。

 以下、同日の会見要旨をお伝えいたします。会見資料は、日本慢性期医療協会のホームページ(http://jamcf.jp/chairman/2018/chairman180712.html)に掲載しておりますので、こちらをご参照ください。

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研修を終えた後の実習をどうするか

 
[武久洋三会長]
 広島や岡山など西日本を中心とする豪雨による災害の影響で地域の病院が大変苦労されている。そうした中で、岡山県の「まび記念病院」は非常に立派な対応をしたということで、先ほどの理事会で日慢協としてお見舞い金をお贈りすることを決定した。いざというときには、あのように地域の医療をちゃんとしなくてはいけないという教訓であると思う。

 さて、2015年から特定看護師の養成が始まったが、これは皆さんもよくご存じのことと思う。特定看護師の養成について、日本慢性期医療協会は最初に手を挙げ、いろいろなテキストやe-ラーニング資料などはすべて会員の手作りで運営している。これにより、現在はすでに百数十名の特定看護師を送り出したが、その後の実習や実務をどうするかが課題となっている。

 すなわち、特定行為研修を修了したとしても、実務をやらなければだんだん忘れていく。また、いろいろな実務を経験していく中で、いろいろな疑問が出ることもあろう。そうした場合にはどうするか。こうした思いから、特定看護師らが中心となって研鑽を積めるような協会をつくり、そこで勉強会をする必要があると考えた。そこで本日の記者会見では、「日本特定看護師協会(仮称)」の設立について述べたい。

 現在、全国に約1,000名の特定看護師がいる。われわれの協会からは200名近い人が特定看護師として巣立つが、日本看護協会も同じくらいの数を輩出しており、この2つの団体が特定看護師の大きな母数となっている。国としては、この特定看護師という制度を非常に重要視していて、今年度も4億円以上の予算を付けている。非常に熱心に特定看護師の育成を行う方向性である。

 では、こうして誕生した特定看護師というのは、一体どこで活躍するのか。ICUやHCUなど高度医療の中で医師の補助として仕事をするのだろうか。いや、むしろお医者さんが少ないところで、お医者さんの代わりをちゃんとしてくれる、すなわち慢性期医療や在宅医療において特定看護師というのは力を発揮するのではないかという思いを強くしている。

 このため、日慢協では特定看護師の養成などについて非常に力を入れてきた。日慢協としては、特定看護師を全面的に応援している。そのため、先ほどの理事会でも全員一致で、仮称であるが「日本特定看護師協会」をつくって、特定看護師の勉強をサポートしていきたいと考えている。これはあくまでも日慢協内部の組織であり、外部に独立して設立するものではない。

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介護医療院では特定看護師を施設長に

 本日の午前10時、「日本特定看護師協会設立準備会」を開催した。特定看護師の方々にもお集まりいただき、いろいろと協議をした。近く総会を開催して、会長や副会長などの役員を決める予定である。来年1月ごろに特定行為研修の修了者による学会を開き、現場での諸問題を共有したいと思っている。

 われわれは、看護師特定行為研修修了者の修了後の研修はどうしても必要だと考えている。これはどこが音頭を取っているのか。修了後研修は、特定行為研修を実施した協会が行わなければ誰もしてくれるものではない。そして、特定看護師自身が勉強をしなければいけない。

 先ほど申し上げたように、特定看護師は、ICUなどの急性期医療において必要というよりも、慢性期医療、さらには在宅医療にこそ必要である。訪問看護ステーションの訪問看護師が在宅に行っていろいろな処置ができれば、これほど役に立つことはない。

 しかし、現状はどうか。6ページをご覧いただきたい。特定行為の種類によって、修了した数にこれほどの差がある。

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7月12日の会見資料06

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 7ページをご覧いただきたい。ほとんどが病院に勤務している。

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7月12日の会見資料07

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 これは厚生労働省医政局看護課の看護サービス推進室が今年2月に発表した資料なので、この時点では523名であるが、現在は1,000名ぐらいになっている。今後、特定看護師がさらに増えると、訪問看護ステーションや介護施設のほか、今年4月から新しくできた介護医療院で働く特定看護師も増えることになるだろう。そうすれば、介護医療院などの責任者は医師ではなく特定看護師でもいいのではないか。日慢協では、早急にこのような要請をして、介護医療院の場合には特定看護師が施設長として認められるように努力をしたい。

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日看協と日慢協の開講区分に差がある

 8ページをご覧いただきたい。特定行為および特定行為区分である。現在、21区分38行為となっている。このうち日本慢性期医医療協会での開講は黄色い所、9区分16行為である。

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7月12日の会見資料08

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 この黄色い所は看護師の希望制ではない。これだけの行為を全部やらなければいけないという必須制である。したがって、当協会の研修修了者は、この黄色い所はすべて講義を受け、実習を修了している。そのために必要な特定行為研修に関する教材はすべて、当協会の会員が自ら制作したものである。

 10ページをご覧いただきたい。日本慢性期医療協会と日本看護協会との比較(平成30年3月末日現在)である。

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7月12日の会見資料10

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 日本看護協会のホームページによると、日本看護協会での開講は14区分である。これに対し、日慢協は8区分である。表の左の下を見ていただくと分かるように、日本看護協会では1区分、2区分、3区分あたりの修了が非常に多くなってる。一方、日本慢性期医療協会は7区分、8区分である。日看協と日慢協の修了区分には差がある。

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一定の分野は特定看護師に任せる制度改正も

 日慢協では特定行為研修の第1回開講から多くの看護師が参加し、現在119名の修了者がいる。今年度中の修了予定者を入れると171名である。全国の特定行為研修の修了者総数は1,006名である。

 日本看護協会で実践している認定看護師制度は、歴史もあり非常に優れていると私たちは思っている。この認定看護師制度が特定看護師研修制度に影響を与えたものと考えている。日本看護協会の認定看護師には、特定行為研修の実習等において当然便宜を図るべきだと思っている。

 13ページは、看護師の業務範囲に関する法的整理である。赤枠が医師の業務、青枠が看護師の業務で、両者が重なり合う部分に「特定行為」がある。

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7月12日の会見資料13

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 私は将来、特に慢性期医療や介護では、特定看護師が10名いれば医師1人に換算するというような基準整備が10年以内ぐらいになされる可能性があるのではないかと期待している。日慢協としては、この特定看護師の研修に対して全力を尽くして、特定看護師を増やしていきたいと思っている。

 14ページをご覧いただきたい。施行通知にはこのように書いてある。

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7月12日の会見資料14

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 それによると、「特定行為以外の医行為と同様に、特定行為の実施に当たり、医師又は歯科医師が医行為を直接実施するか、どのような指示により看護師に診療の補助を行わせるかの判断は、患者の病状や看護師の能力を勘案し、医師又は歯科医師が行う」としている。

 すなわち、当然に医師または歯科医師が主体性を持って指示をして、管理監督しなければいけない。ただ、特定看護師の制度がどんどんレベルアップしていって、諸外国のように、ある一定の基準を満たしたならば、一定の分野については特定看護師にある程度任せるというような制度改正が行われる可能性はある。

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日看協などと連携を強めていきたい

 現在、特定行為の手順書は「医師又は歯科医師が看護師に診療の補助を行わせるためにその指示として悪性する文書又は電磁的記録であって、次に掲げる事項が定められているものであること」ということで(1)から(6)が挙げられている。

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7月12日の会見資料15

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 看護師に診療の補助を行わせる患者の病状の範囲、診療の補助の内容、当該手順書に係る特定行為の対象となる患者──などについて、法律を守ってきちんとやるべきである。

 われわれは、特定行為研修で少なくとも10行為以上の研修をしなければ現場では役に立たないと考えている。例えば、褥瘡の特定行為だけができるというのでは、慢性期の患者さんを全体的にみることはできないので、ぜひ10行為以上の研修を行っていただきたい。

 特定行為研修修了者のレベルを上げるため、研修修了後も特定行為業務を継続しなければ忘れてしまう。特定行為研修に最初から参加して100名を超える研修修了者を出している日慢協が、厚労省の看護課や日本看護協会とも今後連携を取り、レベルを上げていきたい。日看協などとの連携を強めていきたいと思っている。

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特定看護師を全面的にサポートする

 20ページは、特定行為研修を行う指定研修機関の状況。このような分布になっている。

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7月12日の会見資料20

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 この中で、「医療関係団体等」は10(14%)となっており、これに日本慢性期医療協会も含まれている。日本慢性期医療協会では、特定看護師の研修に早くから参加をさせていただき、たくさんの特定看護師を生み出すことができている。特定行為研修を継続して実施しており、現在も開講中である。当協会は特定看護師に対して格別の支援を行い、彼らの行為を全面的にサポートして、さらに上を目指すよう研修に協力したいと思っている。

 特定行為研修のテキストを皆様に、ぜひご覧いただきたい。すべて当協会の会員病院の医師が執筆している。e-ラーニングの資料もすべて当協会が作り、他には一切頼っていない。以上である。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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