「精神病床を内科、慢性期病床に転換してはどうか」── 6月30日の会見で武久会長

会長メッセージ 協会の活動等 役員メッセージ

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 日本慢性期医療協会は6月30日、第41回通常総会後に定例記者会見を開きました。次期会長に全会一致で再選された武久洋三会長は会見で、急増する認知症患者への対応策に言及し、「精神病床を内科、慢性期病床に転換してはどうか」と提案しました。武久会長は、認知症の治療病棟を充実させる必要性を指摘したうえで、「精神病棟を一般病床に変え、そこに内科と精神科の医師がいて、適切に治療できるような病棟にすべき」との考えを示しました。

 この日の会見には、中川翼副会長と池端幸彦副会長が同席。冒頭、中川副会長が次期執行部の新体制を紹介し、「2年後の同時改定に向けて、引き続き同じ体制で臨もうという考えで一致した」と伝えました。また、慢性期リハビリテーション協会についても、引き続き同様の体制を継続することを伝え、「良質な慢性期リハビリテーションを目指して活動していく」と抱負を述べました。

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 続いて、武久会長が「平成27年度総括」と題して、昨年度に示した提言に対する厚生労働省の対応などを紹介。療養病床の在り方について、「これからの療養病床は『慢性期治療病棟』を目指すべき」との考えを改めて強調したうえで、「急性期病院から頼られるような慢性期医療を提供しなければいけない」と語りました。精神病床の在り方についても言及し、「精神科から切り離して一般病床化すべき」と提案。「身体合併症の多い認知症の場合は、精神保健指定医と総合診療医の2つの科で共診することが最良の方法」との考えを示しました。

 最後に、池端副会長が療養病床の転換をめぐる問題について、現時点での見解を述べました。昨年7月から今年1月にかけて開催された厚労省の「療養病床の在り方等に関する検討会」に委員として参加した池端副会長は、同検討会が1月にまとめた「新たな選択肢の整理案」の方向性などを紹介。「私どもの考え方と厚生労働省の考え方には大きな差異はない」としたうえで、円滑な転換に向けて「療養病床の最低基準である『6.4㎡の4人部屋』ということは死守したい」との要望を述べました。今後の議論については、「譲れるところは譲って、落とし所を探っていく必要がある。病院が運営しやすい方向で、特別部会の議論がまとまることを願っている」と期待を込めました。

 以下、同日の会見要旨をお伝えいたします。会見資料は、こちら(http://jamcf.jp/chairman/2016/chairman160630.html)をご覧ください。

 
[武久洋三会長]
 本日の記者会見では、①平成28年度、平成29年度 日本慢性期医療協会 新人事発表、②平成27年度統括、③精神病棟の病棟転換、④療養病床の在り方等に関する特別部会に対するスタンス──の4項目についてお伝えしたい。

 まず、平成28年度、平成29年度の新人事について。本日、第41回通常総会を開催し、平成27年度事業報告と決算報告などを承認し、新たな役員の選任も行われた。総会の結果について、中川翼副会長からご説明を申し上げる。
 

■ 2年後の同時改定に向け、引き続き同じ体制で臨む
 
[中川翼副会長]
中川副会長20160630 本日の通常総会で、平成28年度、平成29年度の役員人事を決定した。本日の理事会において慎重に検討した結果、これから2年間、引き続き武久洋三先生に会長をお願いしたいということを全会一致で決めた。副会長についても、2年後の同時改定に向けて、引き続き同じ体制で臨もうという考えで一致した。

 会長1名、副会長5名、常任理事17名、理事42名、監事2名、計67名の体制である。うち新任は16名で、常任理事1名、理事15名となっている。

 組織については、正副会長会議の下に学術部、研修部、医療保険部、介護保険部、事業部を設置するとともに、9つの委員会を置く。各部の部長・副部長、各委員会の委員長・副委員長らが一致団結して進めていく。

 また、慢性期リハビリテーション協会についても、引き続き会長を武久洋三先生が務め、副会長3名とともに良質な慢性期リハビリテーションを目指して活動していく。
 

■「一般病床ならば取れるというのは理屈に合わない」
 
[武久会長]
 続いて「平成27年度の総括」として、当協会が打ち出した提案の帰趨をご報告する。

 まず、平成27年4月9日の会見で「障害・特殊疾患病棟は『超慢性期』」という考えを示した。すなわち、「障害・特殊疾患病棟は一般病床だけではなく、療養病床からも算定できるようにしてほしい」と要望した。この要望はどうなったか。

 平成28年度の診療報酬改定で、私たちの要望は受け入れられた。すなわち、平成28年度改定では、「重度の意識障害(脳卒中の後遺症に限る。)であって、当該患者の疾患及び状態等が療養病棟入院基本料に規定する医療区分1又は2に相当する場合は、療養病棟入院基本料の評価体系を踏まえた評価とする」とされた。

 そもそも、なぜこのような改定を求めたのか。一般病床では、4.3㎡の8人部屋でも障害・特殊疾患病棟を算定できる。これはちょっとおかしいのではないかとの問題意識があった。

 一般病床の中で、障害・特殊疾患病棟というのは「超慢性期」である。その「超慢性期」の患者さんが狭い部屋に入院している。8人部屋、10人部屋に入っている。6.4㎡の療養病床よりも入院環境が劣るのに、一般病床ならば取れるというのは理屈に合わない。従って、障害・特殊疾患病棟の施設基準は、最低でも療養病床の基準を満たすべきではないかと考えた。これについては、要望したが対応していただけなかった。

 その理由として、「医師の数が少ない」ということも考えられるが、われわれとしては、療養病床から地域包括ケア病棟も回復期リハビリ病棟も取れるので、医療スタッフの問題ではないと考えている。従って、平成30年度の同時改定に向けて、「最低でも6.4㎡の4人部屋」という基準を要望していきたいと思っている。
 

■「医療外付型」は「SNR」に非常によく似た類型

 次に、昨年7月16日の会見で発表した「新しい病院内施設(SNR)の提案」について。病院内の空床を施設として転換利用する「病院内施設」の創設を提案した。

 平成29年度末に期限を迎える療養病床の在り方をめぐっては、昨年7月から、厚労省の「療養病床の在り方等に関する検討会」で議論がなされ、今年1月に「新たな選択肢の整理案」が取りまとめられた。現在、社会保障審議会の「療養病床の在り方等に関する特別部会」に議論が引き継がれている。

 整理案では、「医療内包型」(案1ー1、1ー2)と「医療外付型」(案2)を軸に、3つの案が提示されている。このうち、「医療外付型」は、医療サービスを外付けする「住居」であり、これはわれわれが提案した「SNR」(Skilled Nursing Residence)に非常によく似た類型である。社保審の特別部会では、上記の案をベースにして具体的な肉付けをしていく。私たちは、療養病床の20対1は重症病棟と考え、それよりも看護配置等が手薄な25対1は施設に移行しても、ある程度やむを得ないと主張していたので、こうした考え方に準じた方向性で改革が進んでいる。

 昨年10月8日の会見でお伝えした「これからのリハビリ提供体制」についてはどうか。在宅復帰にとっての最大の阻害因子は、自分で食べられないこと、一人でトイレに行けないことであるから、このような機能の回復をまず目指すべきである。われわれはこのように考え、嚥下障害と膀胱直腸障害に対するリハビリの成果を厚労省の担当部局に提出した。学会などでも発表してきた。

 平成28年度の診療報酬改定では、「排尿自立指導料」が新設されたほか、「経口摂取回復促進加算2」も新設していただいた。自分の口から食べて、自ら排泄する。これは人間としてファンダメンタルな機能である。今後は当協会の会員病院だけでなく、多くの病院でも、こうした機能の回復を目指すような取り組みが進められるものと期待している。
 

■ 急性期病院から頼られるような慢性期医療を提供

 療養病棟入院基本料2(25対1)についても、われわれは意見を述べてきた。25対1には医療区分の縛りがなく、看護師等が1人夜勤でも基準をクリアできるので、「社会的入院の温床」と言われる面も一部に存在していた。そのため、われわれは「療養病床は変わらねばならぬ」、「介護療養は医療療養にシフトを」、「できれば25対1を20対1にレベルアップしていただきたい」ということを会員病院に強く求めてきた。すなわち、これからの療養病床は「慢性期治療病棟」を目指すべきであると考えている。

 平成28年度の診療報酬改定では、「療養病棟入院基本料2(25対1)に、医療区分2、3の患者割合の合計が5割以上(平成28年9月30日までの経過措置あり)」とされた。すなわち、 「慢性期治療病棟」は認めるけれども、「25対1」は病床でなく施設に変わってくださいという方向に厚生労働省の方針が動きつつあると言える。今回の改定を見ても、われわれが予想した通りの展開となっているので、当協会の会員病院では逐次、準備を進めている。介護療養型医療施設は、やがて「病床」ではなく「施設」になるということも予想している。

 当協会の会員病院の中にも、25対1を持つ病院がわずかに存在する。その主な原因は、スタッフ数の不足である。「重症患者が少ない」ということよりも、スタッフ数の問題のほうが大きい。このため、スタッフを十分に配置して、 「慢性期治療病棟」として、急性期病院から頼られるような慢性期医療を提供しなければいけないと思っている。

 平成28年度の展望について述べる。まず、「療養病床の在り方等に関する特別部会」の議論がある。そして、平成30年度の同時改定に向けた検討も進む。これに対し、われわれはシンプルに良質な慢性期医療の提供を目指していく。日本慢性期医療協会は学術団体である。すなわち、病院の経営安定を目指すための団体ではなく、学問的な課題に取り組み、また診療の質を上げるために集まっている。このような共通概念、視点で頑張っていきたいと思っている。そうした成果について、今後もまた毎月の記者会見で、お伝えしていきたい。
 

■ 削減される運命にある精神病床を「認知症専門の病床」に

 本日の会見では、「精神病床を内科、慢性期病床にどんどん転換してはどうか」という提案をお伝えしたい。これからは、「認知症」が最も困難な病気になると思っている。認知症をめぐるさまざまな課題については、厚生労働省も早くから対応を進めているが、われわれ現場で診療している立場から言えば、「認知症の患者さんはいったいどこに入院したらいいのか」という問題がある。

 精神科の先生は、「認知症は精神科が診るべきだ」とおっしゃるが、高齢の認知症患者は認知症だけでなく、多くの身体合併症を伴っているので、精神科の先生だけではなかなか治せない。従って、精神保健指定医と総合診療医が共診で治療していかないと、一生、精神科病院に入院し続けなければいけないという状態になる。できるだけ身体疾患と精神症状をおさめて在宅に復帰させ、日常生活に戻れるようにしようと思えば、認知症専門の病棟が必要となる。

 現在、認知症の治療病棟というのは精神科しか認められていないが、これはちょっと違うのではないか。むしろ、「精神科病棟」という枠を外すべきではないか。精神病床は削減される運命にある。精神病床は内科、慢性期病床にどんどん転換してはどうかということを提案したい。

 精神科病院ではあるが、病棟だけは認知症の病棟に変わったほうがいいのではないか。認知症患者は2025年に700万人を突破し、65歳以上の5人に1人が認知症になる時代が来る。認知症は「国民病」となる。精神病棟を一般病床に変えて、そこには内科と精神科の医師がいて、適切に治療できるような病棟にすべきであると思っている。

 削減される運命にある精神病床を「認知症専門の病床」とし、精神科から切り離して一般病床化することを提案したい。身体合併症の多い認知症の場合は、精神保健指定医と総合診療医の2つの科で共診することが最良の方法であると思っている。

 最後に、社会保障審議会の「療養病床の在り方等に関する特別部会」について、当協会の池端幸彦副会長からご説明を申し上げる。この特別部会に先だち、昨年夏から「療養病床の在り方等に関する検討会」で議論され、この検討会に池端副会長が委員として参加した。また、中央社会保険医療協議会の診療報酬調査専門組織である「入院医療等の調査・評価分科会」にも引き続き委員として出席しているので、今後に向けた池端先生のお考えなどをお聞きしたい。
 

■「6.4㎡の4人部屋」という最低基準は死守したい
 
[池端幸彦副会長]
池端副会長20160630 療養病床の在り方等をめぐる問題について、現時点での見解などを述べたい。本日、通常総会の記念講演として厚生労働省医政局の神田裕二局長をお招きし、「地域医療構想と療養病床の在り方」と題してご講演いただいた。皆さまもお感じになられたと思うが、私どもの考え方と厚生労働省の考え方には大きな差異はない。

 介護療養型医療施設について、しばしば「再延長を認めるかどうか」ということが問題となる。当協会でも、理事会等でいろいろな意見が交わされた。先ほど会長からお話があったように、「療養病床の在り方等に関する検討会」で議論がなされ、新類型について一定の方向性が示されている。これに私たちは賛成した。この方向性をベースに、次は社保審の特別部会で具体的な議論を進める段階まできた。こうした中で、当協会として「廃止の廃止」を訴えるのは、ちょっと筋が違うのではないかとの意見が大勢を占めた。協会の方針として、「廃止の廃止」を現時点で求めることはしないということで意見の一致を見た。

 ただ、地域差もある。全国の病院の先生方は不安な気持ちであると思う。そうした中で、まず担保しておかなければいけない点は何か。今年1月の整理案では、「医療内包型」「医療外付型」という2類型が示されている。このうち「医療内包型」の「案1-1」と「案1-2」は、それぞれ「療養機能強化型A」と「療養機能強化型B」の転換先としての院内施設を意識したものではないかと感じている。その最低基準については、「施設」とするにしても「住まい」とするにしても、療養病床の最低基準である「6.4㎡の4人部屋」ということは死守したい。

 案2の「医療外付型」についてはどうか。たとえ、「住まい」に転換するとしても、円滑な転換を進めていくためには「6.4㎡の4人部屋」という基準は維持していただきたい。「住まい」なのだから、せめて8㎡や10.65㎡という最低基準が必要であると考えも理解できるが、それを言い出したら転換が進まないことは火を見るよりも明らかである。少なくとも大規模改築等の時期までの経過措置としてでも、「6.4㎡の4人部屋」という線は死守したい。新たに投資をして大規模な新築や改築をするのは非常に難しい。特に、都市型の小規模な介護療養型医療施設はこの点を非常に危惧しているので、この最低ラインはぜひ担保していただきたいと考えている。
 
 更に経過措置についても、単に2年や3年の経過措置では足りない。病院の建て替えということになれば、10年、15年という長いスパンの経過措置を想定しなければいけないのではないか。
 

■ 譲れるところは譲って、落とし所を探っていく

 社保審の特別部会では、「新規参入をどう考えるか」ということも議論になっている。個人的な見解を申し上げると、「転換型」と「新規参入型」では、ハードルの高さが違ってもいいのではないかと思っている。一般病床からの転換については、「6.4㎡の4人部屋」という基準をクリアすれば認めてもいい。

 また、施設基準や利用料の面については、当然のことながら、利用料が大きく下がることによって病院の経営が成り立たないようでは転換が進まない。一方で、利用者の立場からすれば自己負担額が大きく増えてしまっては利用しにくい施設になってしまう。保険者の側から見れば、限られた保険財政の中で負担額が大きく増えてしまうようでは賛成しがたい。それぞれの立場が譲れるところは譲って、落とし所を探っていく必要がある。特別部会の議論では、武久会長にぜひ頑張ってほしいと期待している。病院が運営しやすい方向で、特別部会の議論がまとまることを願っている。

 介護スタッフが集まらないために基準をクリアできない地域もある。一定の方向性について、情報を早く提供していただいて準備を進めたい。特別部会では、年内の取りまとめを急いでいるが、その2年後に一斉に転換できるとは考えにくいので、転換が決まった後の経過措置が必要である。会長にはぜひ頑張っていただきたい。

 われわれは、決して自分たちの利益を増やそうと考えているわけではなく、利用者が困らないように、地域の病院がつぶれないようにという観点で、療養病床の転換問題を考えていきたい。マスコミの皆さま方のご協力も必要である。今後、みんなが困らないようにするためにはどうすればいいのか、本音の議論をしたいと思っている。良い方向に進むように、汗をかいていきたいと思っているので、引き続きご協力をお願いしたい。

                           (取材・執筆=新井裕充)
 

※ 8月29日に、本記事の中で認知症専門病床に関する内容に掲載されていた下記の文言を削除いたしました。
  “本人やご家族の気持ちを察すると、「精神科病院には入院したくない」という思いがある。”

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