「第57回社会保障審議会介護保険部会」 出席のご報告

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「第57回社会保障審議会介護保険部会」 出席のご報告

 平成28年4月22日、第57回社会保障審議会介護保険部会が開催され、武久洋三会長が委員として出席いたしました。議題は、下記の通りです。
 
 1.地域の実情に応じたサービスの推進(保険者機能の強化等)
 2.その他
 

◇武久洋三会長の発言
 介護保険制度とは、要介護状態の改善・予防のためのものだと考えている。しかし、医療保険と介護保険は関連性があり、医療費を減らせば要介護度も比例して悪くなり、その結果、要介護度が重度になって利用者は医療に流れ、医療費が増大するという悪循環に陥る。
 平成30年度の診療報酬・介護報酬同時改定の際、国民健康保険の保険者は市町村から都道府県に移る。医療保険部会で委員として経過を見ていると、都道府県が保険者となり、実質的な対応を市町村が行うという、介護保険制度と似たような仕組みが考えられている。だが介護保険制度は、市町村の規模によって運営に差が出てきている。県庁所在地と過疎地とでは、状況が大きく違う。いっそ、医療・介護の連携という観点から、国民健康保険と介護保険を連動させるような方策をとる方がうまくいくのではないか。
 介護保険制度は、まず利用者本位ということがある。その利用者本位を逆手にとり、生活支援のヘルパーを支給限度額いっぱいに利用する等、自分の都合に合せるケースが多く出てきた。その結果、本来の目的である要介護状態の改善・予防につながらないという現状が、多く報告されている。利用者本位とはいうものの、あるサービスについては利用を制限する等何らかの対策を取らねば、いつまでもケアマネジャーの本領は発揮されず、本来あるべきケアマネージメントのあり方が機能しない。
 介護保険の支出を減らすだけなら、要介護認定を厳しくし、提供サービス量を減らせば可能だろう。だが、利用者にとって悪い結果になるようでは意味がない。診療報酬では、リハビリテーションのFIM利得のような、効果があれば評価するという費用対効果の観点がある。処方する薬の種類を減らした場合の評価や、入院料の算定要件に一定以上の在宅復帰率が入っていることも費用対効果を考慮してのことである。
 しかし介護保険では、サービスを受けたことでどれだけ改善したかが分からない。要介護認定調査は、一度調査を受けても次回調査までに一年近くかかることもあるので、これで改善率をはかるのは現場としてもやりづらいだろう。
 分かりやすいのは、要介護認定調査においてコンピュータで出す一次判定の結果を指標とすることではないか。その上で、提供サービス項目ごとに点数を定め、このサービスを受けたら効果があった、このケアプラン通りにサービスを受けたら良くなったということを明確にする必要があるだろう。平成30年度同時改定までの間に、様々な観点から検討、評価していただきたい。

 資料3「ケアマネジメントのあり方」4ページの論点の1つに「自立支援、公正中立、総合的かつ効率的なサービス提供の視点に基づく適切なケアマネジメントを確保するためには、どのような方策が考えられるか」とある。つまり、ケアマネジメントにおいては「自立支援、公正中立、総合的かつ効率的なサービス提供の視点」が目標として設定されている。目標の設定がある以上、達成されなかった場合には、何らかのペナルティがあるべきではないだろうか。また、この「公正中立」とは、利用者、事業者、ケアマネ等誰にとってのものなのかという点も曖昧である。
 いくら点検をしても、ケアプランの中には、サービスが1~2つしかないものが多く見受けられる。しかも軽度者による生活支援のヘルパーの依頼が圧倒的に多い。また、ケアプランを点検する際、不備を見つけたら指導をする必要があるのかどうかもはっきりしない。現状ではただ点検するだけなので、ここは是正する必要があるだろう。今後は、軽度者の生活支援のヘルパー利用は自己負担を多少上げる、利用サービスが1~2つしかないケアプランは差し戻すといったやり方も必要となってくるだろう。
 また、地域包括ケア会議で多職種が集まり、この利用者はこのようにしようと方針を決定しても、家族の一言で無に帰すということが実際に起こっている。本人ならまだしも、医療者ではない家族の一言で、それまでの議論のすべてがなかったことにされるというのは、制度のあり方としてどうだろうか。家族教育の必要性の観点からも見直しを行い、良い方向に進めればと思う。

○第57回社会保障審議会介護保険部会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
 ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000122339.html
 

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