第5回地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会 出席のご報告

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第5回ガイドライン検討会

 平成26年12月12日、「第5回地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」が開催され、武久洋三会長が構成員として出席いたしました。武久洋三会長は、議題となった「2025年の医療需要の推計方法」に関連し、病床機能報告制度において定義された4つの医療機能について自らの考えを述べ、中川俊男構成員(日本医師会副会長)との間で非常に白熱した議論が展開されました。

 都道府県が「地域医療構想」を策定する目的は、団塊の世代が後期高齢者となる2025年に向けて、高度急性期機能⇒急性期機能⇒回復期機能⇒慢性期機能という整然とした切れ目のない医療提供体制を構築することにあります。

4つの医療機能

 そのため都道府県では、各医療機能の医療需要を算出する必要があることから、本検討会でガイドラインにその推計方法(計算式)を盛り込むこととなっています。武久洋三会長は、医療需要推計の前提となる「急性期機能」と「慢性期機能」の定義について以下の意見を述べました。

[武久洋三会長]
 * 7対1入院基本料や10対1入院基本料に急性期の患者ばかりが入院しているわけではないということは、中川俊男構成員が言われるとおりである。同様に、慢性期病棟に長期療養の患者ばかりが入院しているわけでもない。このことは、参考資料3として示された療養病床の二次医療圏別平均在院日数から明らかであり、また、当協会が実施した調査結果においても、医療療養20対1に入院する患者の32%が2週間以内に退院していたことについては以前お話しした。

* 医療需要推計の根拠となりうるデータとして、医療資源投入量と入院日数との関係が示されているが、ポイントは、医療を提供する側が体制を切り替えるべき時点をどのように捉えるかである。この点についてはまず、急性期病棟の役割は、手術や特殊な処置などの急性期治療が終了する段階までと考えるべきである。7対1入院基本料の平均在院日数が18日以内とされていることからも、急性期病棟で数か月にわたる入院が必要だとは考えられない。2週間程度で退院するのが通常である。まさに、医療資源投入量が一定程度落ち着いた段階こそ、次のステップに移るべきタイミングである。リハビリをほとんど実施することができない急性期病棟に漫然と入院していては、在宅に復帰できるはずはない。高齢者であればなおさらである。このように考えれば、7対1入院基本料の病床を削減して急性期治療を短期集中的なものとし、在宅への患者の流れを効率化するという国の方針にも適う。

* 急性期機能は、病床機能報告制度において、「急性期の患者に対し、状態の早期安定化に向けて医療を提供する機能」と定義されているが、見直しが必要であろう。急性期機能における「安定」とは果たしてどのような状態をいうのか。急性期病棟から療養病床に転院してくる患者の中には、人工呼吸器または難病の患者、すなわち不安定どころか重態の患者がいる。そのため、療養病床では医師や看護師を加配し、リハビリを実施して在宅復帰に努めているというのが現状である。したがってまた、慢性期機能の定義を「長期にわたり療養が必要な患者を入院させる機能」に限定してしまうと、実際とは大きくかけ離れてしまうということになる。現実問題として、急性期病棟から移ってきた患者を引き継いで在宅に復帰させる機能を担っている療養病床は、「地域医療構想」でどのように扱われることになるのか。回復期機能に該当すると認められるのか。もし、療養病床は慢性期機能であると画一的に考えているわけではないというのであれば、まだ納得の余地はある。是非、柔軟な対応をお願いしたい。

* 前回の検討会で、中川俊男構成員はサブアキュートという用語は使用されなくなったと言われたが、それはあくまで中川俊男構成員の個人的な意見なのではないか。現実に、在宅や介護施設等において肺炎や脱水を発症した患者が療養病床に多く入院しているという実態がある。

[中川俊男構成員・日本医師会副会長]
* 急性期の患者が慢性期病棟にも多く入院しているということだが、そのような地域は急性期病棟が不足しており、そもそもあるべき姿にないということなのではないか。

* 高度急性期機能、急性期機能、回復期機能、慢性期機能の4つの医療機能について2025年の医療需要を推計し、それに対応する病床数を算定していこうという議論は、今突然はじまったわけではない。これまで社会保障審議会医療部会をはじめとしたいくつかの検討会において議論が尽くされてきた結論である。療養病床でも急性期の患者を診ているのだから急性期機能の定義を見直すべきだなどという意見は、議論を根底から覆すようなもので、まるでちゃぶ台返しである。本検討会は、病床機能報告制度のデータに基づいて、「地域医療構想」として4つの医療機能がそれぞれどのくらい必要なのかを算出し、2025年においてあるべき医療提供体制を示すためのガイドラインを策定することを目的とした検討会である。特殊で例外的な意見を逐一汲んでいたら議論が前に進んでいかない。

* 急性期の患者を療養病床で診るという主張はいかがなものか。サブアキュートという用語については、軽症急性期という意味合いが誤解を招きやすく、また、症状が重いか軽いかは後からわかることなので、使用すべきでないと主張してきている。慢性期病床や在宅、介護施設において高齢者が肺炎を発症したらそれは急性期の患者であり、急性期病棟で対応するべきである。
 

[武久洋三会長]
* 既に結論が出ているのだから議論を蒸し返すなと言われても、そういうわけにはいかない。なぜなら、4つの医療機能が定義されてからこの間、平成26年度診療報酬改定という大きな転換点があったからである。どのような意味で大転換点であったのか。それは、7対1入院基本料についても特定除外制度が原則として廃止されたという意味においてである。つまり、一般病棟に入院する患者で90日を超えて入院する患者は、療養病床と同じ診療報酬とすることになったのである。したがって、一般病棟でありながら入院患者の多くは慢性期の患者であったといういわば“自称急性期”が数多く混在していた当時の議論が、現在もそのまま通用するとは到底考えられない。改定の前と後とでは、局面がまるで異なる。大きな改革を伴った診療報酬改定があった以上、それを踏まえた再検討はあってしかるべきではないか。

* 先ほども述べたとおり、慢性期医療を長期にわたる療養に限定するような定義は、現状を反映しているとはとても言えない。4つの医療機能は、「病床機能情報の報告・提供の具体的なあり方に関する検討会」において定義されたが、残念ながらその議論に慢性期医療の代表は誰も参加していなかった。療養病床には安定した患者ばかりが入院している、療養病床には急性期の患者は一人も入院していない、療養病床の医師や看護師は時間を持て余している、という誤解はまだまだあるようだ。ここにお集まりの構成員の中で、医療区分2、3の患者がどのような状態の患者なのかをご存知の方は一体どれくらいいるのか。西澤寛俊構成員(全日本病院協会会長)から、医療機能をよりよく分類するために医師・看護師の業務についてタイムスタディを実施するべきだという提案があったが、私も賛成である。是非一度、急性期機能に該当すると思われる一般病棟と療養病床の医師・看護師の業務を比較検討していただきたい。

* 急性期機能と慢性期機能を併せ持っている病院であれば、中川俊男構成員が言われるとおり、サブアキュートであるかどうかなどということは問題とならず、まず急性期病棟で引き受け、状態が落ち着いたら慢性期病棟に移すということになろう。問題は慢性期機能単体の病院についてであり、中川俊男構成員と私との間に見解の相違があるとすれば、この点をどのように捉えるかだけなのだろうと思う。我々としては、病態が急変した地域のお年寄りが目の前にいれば、懸命に治療するだけである。
 

 他の構成員からの発言としては、「参考資料1として示された医療資源投入量と各医療機能に該当する患者数の推移からは、急性期機能とそれ以外の機能についてある程度分けることができるが、高度急性期機能と急性期機能とを分ける基準とするのはかなり難しい」(尾形裕也構成員・東京大学政策ビジョン研究センター特任教授)、「平成26年度の診療報酬改定で新設された地域包括ケア病棟は複数の医療機能を有し、まさしく地域医療構想を体現する病棟であると思うが、具体的にはどの医療機能に該当すると想定されているのか。地方の自治体病院や中小の病院では、地域包括ケア病棟に活路を見出している割合がかなりの数に上るはず」(邉見公雄構成員・全国自治体病院協議会会長)などの意見がありました。

○第5回地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000068549.html
 

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