医療療養病床には若い患者も多い

会長メッセージ

FF135

■ 講演
 

 1. 「今後の慢性期入院医療の診療報酬について」
    猪口雄二氏(全日本病院協会副会長、医療法人財団寿康会理事長)

 
 現行の診療報酬制度上の入院基本料、特定入院料の種類を挙げて説明した上で、現在の一般病床、療養病床の病床区分を今後は急性期・亜急性期・慢性期にすべきであるとした。

 その中で、亜急性期に分類される病床には、現行の回復期リハビリテーション病棟および亜急性期病床とし、慢性期に分類される病床には、現行の療養病棟入院基本料算定病床をはじめ、一般病床に入院している90日超の特定除外対象患者だけでなく、精神病棟や特殊疾患病床、障害者施設等入院基本料算定病床に入院している長期入院患者も含まれるのではないかと述べた。

 また、一般の特殊疾患病棟および精神療養病床、認知症治療病棟に入院している長期入院患者に関しては、特定入院料算定病床としてはどうかと述べた。

 また、特殊疾患病床や一般病床の90日超の特定除外規定患者について慢性期に分類するに当たり、入院患者の疾患・状態像の分類等の現状把握を行った上でコスト分析を行い、さらなる検討を重ねて、新たな慢性期入院基本料の支払い方式を決めていくべきであるとした。

 2. 「慢性期医療の報酬はどうあるべきか」
 関健氏(社会医療法人城西医療財団理事長、総長)

 続いて関氏は、ご自身の病院における病床種別、施設別の1人1か月当たりの収入のシミュレーションを比較した表を示された。

 そこで現行の診療報酬体系、介護報酬体系では、入院基本料の算定法の根拠が不明である。また、設備(ハコ)、材料(モノ)、人員配置(ヒト)に報酬がつく体系であり、高齢者の慢性期医療には医療費以外に介護・生活支援が必要であるが、その費用が算定されていない。

 医療療養病床における医療区分とADL区分のマトリックスにより入院基本料が決まる仕組みは非人間的であると問題点を述べた。そして、新しい報酬算定上の留意点として、慢性期医療の費用分担シミュレーションを示し、医療費の他に介護・生活支援費、リハビリ費、食費療養費、管理費(ホスピタルフィー)を挙げた。
 
3. 「慢性期医療における新しい診療報酬体系を考える」
    高橋泰氏(国際医療福祉大学大学院教授)

 高橋氏は、これからの日本の将来像について、大都市部における後期高齢者の人口が急増、高度医療のニーズは15%程度減少し、後期高齢者向け医療(地域密着型医療)のニーズが60%程度増加すると述べた。そして、新たな診療報酬体系について、診療報酬点数表の2本立てを提示した。

 まず1つ目は急性期型医療に対応する「DPCをもとにした診療報酬点数表」、2つ目は中長期型医療(仮称)に対応した「医療区分と入院期間、人員レベル、病室の広さをもとにした診療報酬点数表」である。

 1つ目の「DPCをもとにした診療報酬点数表」を使用する「高度医療、救急・救命医療、パスに乗る典型的な急性期医療」を提供する病院を急性期型病院とし、それ以外の一般、亜急性期、療養、障害者病棟の患者は、中長期型医療(仮称)に対応した「医療区分・ADL、入院期間、人員レベル・病室の広さをもとにした診療報酬点数表」で支払われる。

 回復期リハビリテーション病棟については、①独立して扱う、②生活支援型病棟の中に取り込む、いずれの対応方法も考えられるとの考えを示した。

 またさらに、急性期に対する考え方として、地域の高度医療は必要としない(駆け込み寺的)急性期の入院と、急性期からの継続的治療(ポストアキュート)機能を担う病院を在宅療養支援病院とするとし、在宅療養支援病院の急性期対応部分に対して、特定的に病室単位および13:1看護体制のDPC病棟を認めることが望ましいとの見解を示した。

 4. 「慢性期医療における新しい診療報酬体系を考える」
    池端幸彦氏(日本慢性期医療協会事務局長)

 池端氏は、これからの慢性期病床のあり方について、終末期における療養場所についてのアンケート結果において約6割が「自宅」を希望している結果を示し、在宅ケアの基本条件の一つとして「いつでも、必要なとき、必要な期間、入院できるベッドがあること」として、慢性期医療の5大機能の一つである「在宅支援機能」を取り上げ、在宅ケアを行っていくためにも、慢性期医療は必要であると訴えた。

 そして、在宅療養支援病院の現状と課題について、在宅療養支援診療所との違い、5つの指針について説明した。

 また、日本慢性期医療協会において作成した慢性期病態別診療報酬試案について説明し、平成23年4月に日本慢性期医療協会の医療療養病床を対象として実施した「医療区分の適正な実施に関する状況調査」の集計結果について、現行の医療区分と慢性期病態別診療報酬試案の比較をした結果、病態分類における医療区分1の対象者が増えたと報告した。

 そして医療区分1では不適切と思われる患者の状況について、がんターミナル(余命1か月以内)が40.3%であり、改めてこれらの医療区分の見直しの必要性を訴えた。
 
 
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