医療療養病床には若い患者も多い

会長メッセージ

FF135

 お年寄りが長期にわたり入院している病院のベッドを「療養病床」と思いがちですが、実際は違うみたいです。

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長は、「医療療養病床をはじめとする慢性期病床の入院患者の病態は多彩になってきており、若い患者も多くなっている。これは医療療養病床の役割が長期の老人収容施設的性格から、積極的治療による在宅復帰を目指すものに変わりつつあることを意味している」と言います。

 武久会長がJMC77号に寄稿した「慢性期医療における新しい診療報酬体系を考える」をご紹介します。6月30日に札幌市内で開かれた「第19回日本慢性期医療学会」を振り返りながら、療養病床をめぐる今後の課題について述べています。

長期入院できる急性期機能を持った
「長期急性期病床」の設立を提案

 慢性期医療における新しい診療報酬体系を考えるにあたり、現行の医療区分制度について考えてみたい。

 医療療養病床は、医療区分が導入されるまで、患者の状態に関わらずすべて包括制であったため、軽症の患者を多く入院させている病院も多くあり、療養病床は、世間から社会的入院の温床であるというマイナスイメージを持たれていたことも事実である。

 しかし、医療区分導入後5年が経過し、平均在院日数短縮化傾向などもあって、急性期病院から医療療養病床への紹介入院が多くなり、現在、医療療養病床に入院している患者の状態は明らかに重症化している。

 医療区分はご存知のように重度の病態を区分3、中等度の医療必要度を持つ患者を区分2とし、医療区分2、3の37項目に該当しない患者を医療区分1としているが、医療区分1の中には、がんターミナル等の重度な病態も多く含まれている。当協会では医療区分1をさらに1-1から1-5までに分類している。平成18年度と20年度では、1-5の割合が41%も増えている結果も得られている。

 また、当協会では、医療処置を評価する医療区分ではなく、患者の病態別に新しい診療報酬体系を提案し大規模な調査を行い、その結果、医療的にかなり重度である病態が、区分1のまま放置されているという現状が示された。

 そこで、これらの病態が医療療養病床において、平成24年に慢性期病態別診療報酬体系としてすぐに導入できなくても、最低でもこれらの上位10程度の病態については、診療報酬で評価するべきだという主張をしている。

 中医協の慢性期医療の包括評価調査分科会では、医療区分1の見直しに関する議論を始めており、来年の診療報酬・介護報酬同時改定に向けた準備が進んでいる。

 最近では、医療療養病床をはじめとする慢性期病床の入院患者の病態は多彩になってきており、若い患者も多くなっている。これは医療療養病床の役割が長期の老人収容施設的性格から、積極的治療による在宅復帰を目指すものに変わりつつあることを意味していると思われる。

 平成22年6月に厚生労働省が実施した横断調査結果をはじめ、当協会において実施した慢性期病態別診療報酬試案の調査結果では、一般病床13:1や15:1の入院患者と医療療養病床の入院患者の状態に大きな差がないことが示されている。

 しかし少なくとも一般病床には、慢性期高齢者以外にも急性期に準じる患者も相当数入院していることを考えると、単純に慢性期高齢者のための診療報酬体系である医療区分を押し付けることはあまりに失礼であるので、医療療養病床だけではなく、一般病床13:1、15:1を含めた急性期治療後の病床を包括し、新しい慢性期病態別診療報酬体系が必要となってくる。

 そこで今回は、4名の先生方にそれぞれの立場における切り口で、どのような診療報酬体系が慢性期医療にとって最も適切なのかを討議していただいた。
 

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