「設立20周年記念祝賀会」のご報告(1)

協会の活動等

設立20周年記念祝賀会

 

■ 深尾立氏(日本病院団体協議会代表者会議議長)
 

深尾立氏 日本の国民は、ともすると急性期医療にばかり目が行く。華々しい手術などに関心が行く。しかし、実は最も大事なのは慢性期医療だ。慢性期医療の質が落ちるということは、ボディブローが効いてきて、5疾病5事業のような医療政策も頓挫すると思っている。

 日本の医療は非常に重要な時期にある。超高齢化を迎えているこの時期に、非常に強力な武久会長が日本慢性期医療協会を率いている。20年間に非常にいろいろな成果を挙げている。「アジア慢性期医療学会」を開催するなど、国際的にも大変活躍されていることは本当に素晴らしい。

 武久会長は、日本病院団体協議会の副議長をされている。11ある病院団体のいろいろな意見を取りまとめる上で非常にご尽力されている。私もいろいろ教えていただいている。武久先生は発信力と実行力がある。こういうリーダーに率いられたこの協会は、これからもますます発展すると信じている。日本病院団体協議会に所属する11団体こぞって、日本慢性期医療協会が日本の医療のために成果を挙げて、素晴らしく発展されることを心から期待している。
 

■ 坂本すが氏(日本看護協会会長)
 

坂本すが氏 日本看護協会としても武久先生にはいろいろな所でご指導を頂いている。そのご指導の下に、日本看護協会は昨年から慢性期、在宅という領域をつくった。

 看護の分野を2つに分けて、急性期から慢性期、それから在宅に向けて分野をつくり、そして慢性期、在宅についての看護を強化していきたいと考えている。

 国民が笑顔で生活できるように、日本慢性期医療協会と共に、看護協会もいろいろな所でご指導を頂きながらケアしていきたいと考えている。ぜひ仲間に入れていただき、これからもご一緒させていただきたい。
 

■ 天本宏氏(日本慢性期医療協会・初代会長)
 

天本宏氏 「介護力強化病院」は、今までと違った医療のスタートだった。我々は、「生活を大切にしたい」ということで、救命や延命といった生存だけではなく、生活を支援する医療を目指そうということで、「介護力強化病院連絡協議会」を設立した。

 そして診療報酬上、初めて定額制となり、医療の主体性を我々に頂いた。その中で、薬や検査に頼らない医療、そして医師のみならずさまざまな幅広い職種が関わる組織力で、高齢者を、家族を支えていこうとスタートした。

 従って、今後の日本慢性期医療協会は当然、生活を支えていくので、地域であるべきだ。これからは、24時間365日のプライマリーケアを構築しなければいけない。我々の20年間を、慢性期医療の組織力を、地域でこれから展開しなければいけない。

 プライマリーケアを担う「プライマリーケア・ホスピタル」という新しい概念の下、ただお預かりするだけではなく、24時間365日、地域医療を担う先生方が看護や介護を支える。我々、慢性期医療を担う者は地域に出かけていく。そういうサービスモデルをこれから構築しなければいけない。

 現在、90歳以上が約130万人いる。20年後は250万人になる。30年後は500万人になる。その後20年間、90歳以上は減らない。そのようなモデルなき挑戦を、我々日本慢性期医療協会は武久会長と共に地域ごとのモデルを提示していく。

 それを行政は政策的に、制度として普遍的なものにしていただかなければいけない。そして政治家は、そこにきちんと財源を持ってきてもらわなければ困る。これからも一歩一歩、地域の高齢者やご家族のために一生懸命頑張っていただきたい。
 

■ 小山秀夫氏(兵庫県立大学大学院教授)
 

小山秀夫氏  28歳で厚生省の「国立医療・病院管理研究所」に就職し、そのころからリュックサックを背負って日本の病院を歩いて回る人生だった。今でも、ここにいらっしゃる先生方の病院に行って、「ああだこうだ」と言っている。

 慢性期医療に関わらず、医療の質を上げるには医療現場を絶えず回っている人間が大事だ。私は、はっきりものを言う。かつて、ある病院で48人部屋があった。その横に100本以上の点滴支柱台が立っている姿を見て、「こんなものが医療なのか」と思ったことがある。そんなことで、皆さんとけんかばかりしている。

 医療の質を上げていくためには、医療の質を上げていく人たちと一緒に走ることができる人間が大事なのではないか。これからも命ある限り、リュックサックを背負って皆様の所にお邪魔したい。
 

■ 猿原孝行氏(日本慢性期医療協会・前事務局長)
 

猿原孝行氏 武久先生が会長に就任される時、名称を「慢性期医療協会にする」というお話をされた。そこで私はすかさず、「慢性期って何ですか?」と質問した。そうしたら、「急性期以外はみんな慢性期だ」とお答えになった。慢性期というのは、特別養護老人ホームでなされる医療も、老人保健施設でなされる医療も、それから在宅でなされる医療も、これから増えるであろう特定施設でなされる医療も、すべて含めて慢性期であるということを教えていただいた。

 それを聞いた時、私は「これは非常に大変な事業を手がけるんだな」と思った。というのは、慢性期というものを突き詰めていくと、どうしてもターミナルに行き着く。急性期はこれから絞られるという話だが、日本人のターミナル、看取りの部分をやっていくのはすべて慢性期だ。皆さんご承知のように、この「慢性期」の部分には、いろんなムラがたくさんある。それをすべて武久先生がまとめる。そこでなされる医療、あるいはケアも全部、武久先生がやる。そういうお話をされて、私はびっくりした。

 今後、「非がん多死」の時代に入り、日本人のアイデンティティーを確保しながら、その人の一生に接していく。そういう部分をすべて武久先生が束ねる。時代が人を生むのか、あるいは人が時代をつくるのか。この日本慢性期医療協会は、今の時代に本当に求められているものであり、我々がしっかりとした看取りを行うことによって、新たな日本の文化をつくりあげていく。その担い手は、親分は、やはり武久先生しかいない。
 

■ 堺常雄氏(日本病院会会長)
 

堺常雄氏 日本の医療を取り巻く環境はさらに厳しくなっている。そこで、「社会保障と税の一体改革」が出て、2025年に向けた医療提供体制をどうするのか、非常に議論になっている。

 その中で、日本慢性期医療協会は果敢にも、「一般病床と療養病床の区分はクソ食らえ」とはおっしゃらないが、もっと上品に「急性期病床群と慢性期病床群」を提言なさった。これは非常に貴重なご提言だと思う。我々は、これを真摯に受け止めて、本当に実のある議論をすべきだと思っている。

 厚生労働省では、局長が全部替わるという、とんでもないことが起こった。世の中はえてして対立構図が好きで、例えば「行政と病院団体」、それから「病院団体と医師会」など、いろいろある。しかし、決してそんなことはない。病院団体にはいろいろあるが、例えば「四病協」と「日慢協」は非常に良い関係だ。それから「四病協」と「日病協」も非常に良い関係だ。ましてや、日本医師会と病院団体は本当に良い関係にある。

 そういう中で、厚生労働省の異動があった。これからは「どこどこのため」ということではなく、オールジャパンで日本の医療を良くする必要があると思う。
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