年頭所感 ― 慢性期医療を、次の時代の中核へ ―

会長メッセージ 協会の活動等

2026_橋本康子会長

新年あけましておめでとうございます。
令和8年(2026年)の年頭にあたり、年頭の所感を申し上げます。

医療・介護を取り巻く環境は、年を追うごとに厳しさを増しています。人口減少と高齢化の進行、就労人口の減少、物価やエネルギー価格の高騰、人材確保の困難さ――。これらは一過性の問題ではなく、医療提供体制そのものの持続可能性を揺るがす構造的な課題となっています。
さらに本年は診療報酬改定の年でもありますが、現時点で示されている議論の方向性を見る限り、現場の実態や日々の努力が十分に評価される改定になるとは言い難い状況です。

こうした中にあって、慢性期医療に携わる私たちの役割は、これまで以上に明確になってきていると感じています。それは、「寝たきり高齢者を作らない、増やさない」ことを軸に、治療・ケア・リハビリテーション・栄養管理を通じて患者様の状態を改善し、生活を再構築し、地域につないでいくことです。

昨年は、各月の定例記者会見を通じて、慢性期医療・介護が直面する本質的な課題について提言を重ねてきました。
1月には、**「介護保険におけるアウトカム評価」**として、要介護度改善加算の創設を提起し、改善することが正当に評価される仕組みの必要性を訴えました。2月には、リハビリテーション介護士の養成をテーマに掲げ、日常のケアそのものをリハビリテーションとして捉える発想の転換を示しました。

3月には、育児・介護休業法改正への対応として、現場を疲弊させない持続可能で魅力ある職場づくりの重要性を取り上げました。4月には、医療と介護を分断せず一体的に支える仕組みとして、メディカルケアプランナーの創設を提言し、ケアプランニングのあり方そのものを問い直しました。
5月には、医療・介護の壁を超えた同一労働同一賃金の考え方のもと、介護職の処遇格差是正を強く訴えました。

さらに7月には、慢性期医療とICT・DXの活用を通じた「寝たきりゼロ」への可能性を示し、9月には、インフレ時代に対応した診療報酬の物価スライド制導入という、制度の根幹に関わる改革を提案しました。年末には、オンラインST外来の保険適用を取り上げ、地域偏在を解消し、言語リハビリテーションを必要とするすべての人が支援を受けられる社会の実現を目指す考えを示しました。

これらの提言はいずれも、「寝たきり高齢者を作らない、増やさない」という共通の理念のもとにあり、記者会見を通じて社会に向けて発信してきたものです。

現在の医療区分や要介護度は、状態に応じた点数制度であるがゆえに、治療やケア、リハビリによって状態を良くしようとするインセンティブが働きにくい構造を抱えています。状態が改善しても評価につながらず、むしろ悪化した方が収益が上がるという逆転現象が起きている現状は、制度創設から約20年が経過した今、社会構造や人材環境の変化と明らかに乖離しています。

治療・ケア・リハビリを行い、介護度や医療依存度が改善すれば評価される――。
そのような「インセンティブが働く報酬制度」への転換こそが、寝たきり高齢者の減少、医療・介護人材不足への対応、そして持続可能な医療・介護提供体制の構築につながると考えています。

私は2期目の会長就任にあたり、「慢性期医療をデザインする」というテーマを掲げました。
目的・プロセス・アウトカムの視点から慢性期医療の役割を再定義し、「療養」ではなく「治療」を行っている現場の実態を、データと実践で社会に示していく。その取り組みを、今後さらに具体化していきたいと考えています。

また、今期からは都道府県慢性期医療協会会長会議、そして日本慢性期医療協会青年部会が発足しました。世代や地域を超えた意見交換と情報共有は、これからの慢性期医療を形づくる大きな力になります。
協会は、提言するだけでなく、会員の皆様が現場で活用できる知恵や工夫を持ち帰れる場でありたいと考えています。

医療・介護の未来は、決して平坦なものではありません。しかし、だからこそ、慢性期医療が果たすべき役割はますます大きくなっています。慢性期医療は、急性期医療の単なる「受け皿」ではなく、患者様の生活を立て直し、地域へ戻すための「再生のエンジン」です。

本年も、現場の声を大切にしながら、記者会見を通じた提言と発信を続けてまいります。
2026年が、慢性期医療の新たな可能性を切り拓く一年となることを願い、年頭のご挨拶といたします。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

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