慢性期医療の質をどう担保する?

会員・現場の声

 脳卒中や心筋梗塞などを発症して急性期病院で治療を終えた後、その受け皿となる慢性期医療の質が担保されていることは患者さんにとって重要です。

 いまや、慢性期医療は「Post Acute Therapy(PAT)」として、急性期医療を支える重要な医療であり、質の確保、評価などが大きな課題です。今後、慢性期医療の質をどのように評価し、どう担保していくべきでしょうか?

 日本慢性期医療協会は、「良質な慢性期医療がなければ日本の医療は成り立たない」を理念として、数々の取組を進めています。

 同協会の「診療の質委員会」の委員長で、南小樽病院病院長の矢野諭氏は、本年度から厚生労働省の「医療の質の評価・公表等推進事業」への参画が決定したことを受け、「慢性期医療の臨床指標が評価された結果である」と述べています。

 その上で、「慢性期医療認定病院」を広く周知させる活動や、「慢性期病態別診療報酬体系(試案)」の調査結果の収集・分析などに注力する決意を示しています。

 今年7月に札幌市内で開かれた「第19回日本慢性期医療学会」のシンポジウムを振り返り、矢野氏がJMC77号に寄稿した「慢性期医療の質をどう担保するか~慢性期医療認定病院の取り組みの進展~」をご紹介します。
 

慢性期医療の臨床指標が評価された結果
本年度からの厚労省事業に参画が決定

 

 この数年で慢性期医療に招来した「担当医療領域の拡大・多様化・高度化」という劇的な変化は、必然的に慢性期病院に質の高い診療機能の担保を要請した。

 『良質な慢性期医療がなければ日本の医療は成り立たない』を理念として、「Post Acute Therapy(PAT)としての慢性期医療の必要性・重要性」を継続して訴えてきた日本慢性期医療協会(以下、協会)は、「診療の質委員会」が中心となり、平成22年4月に「診療の質」を測るための「慢性期医療の臨床指標(Clinical Indicator:以下、CI)」を完成させた。

 CIは10領域62項目からなり、点数化が可能で124点満点となっている。従来の急性期医療が中心のCIとの差別化を鮮明にして、CIに「慢性期医療のスタンダードとして、各病院がその項目を達成していくことが、質の向上につながるもの」としての意義を付加し、同年5月より「慢性期医療認定病院認定審査」を開始した。

 認定病院が続々と誕生しているが、認定審査のデータ集積や取り組みやすさに対するサーベイヤーと受審病院の評価は、項目は適切か、基準値(cut off値)は適当か、ハードルは高すぎないか、逆に低すぎないか、追加が必要な項目はないか等の分析・評価によるCIの妥当性の検証となる。

 本シンポジウムでは、CIから見た慢性期医療における「質」評価を主題として、認定審査受審病院、サーベイヤー、研究者の立場からの4人のシンポジストの講演を通して、協会CIの特徴、日本病院機能評価機構や他の第三者評価との比較など、慢性期医療に求められる診療の質について、多角的な視点からの議論が展開された。

 なお座長は、協会「診療の質委員会」委員長の矢野が担当した。

■ 講演
 

 1. 「慢性期医療認定病院の取り組みの進展」 飯田達能氏(東京都・永生病院院長)

 飯田氏はまず、自らが院長を務める永生病院(東京都八王子市、626床)の概要と特徴、同院で行ってきた多くの医療の質の改善の取り組みについて紹介。日本医療機能評価機構の病院機能評価認定(平成9年より5年に一度の評価)更新を継続し、自院では平成17年にTQMセンターを創設して、独自の慢性期医療の臨床指標を導入して毎月の評価を行い、業務改善に取り組んできたことに言及した。

 また同氏は、老人の専門医療を考える会の「老人医療の質の評価プロジェクト委員会」の委員長を務めており、「老人専門医療の臨床指標8項目」(協会CIの総論的指標としての位置付け)についても解説した。さらに協会の「診療の質委員会」副委員長として、認定審査のサーベイヤーを務め、自院でも4月に協会の認定審査受審した経験もふまえ、協会CIの臨床指標について概説した。

 その中で、自院の認定審査1年前の自己評価における「各種カンファレンスの実施率」が予想以上に低かったことがわかり、1年かけて業務改善に取り組み、評点を上げることができた点に触れた。最後に「慢性期医療を担う病院には、急性期病院から今後さらに重症の患者が押し寄せてくることが推察され、医療の質を確保することが必須である」ことを強調し、「いろいろな臨床指標や第三者評価を有効に活用して、業務改善に役立てる取り組みが不可欠である」と結んだ。
 

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