基金の配分、「都会と地方で軽重を」── 医療介護の総合会議で武久名誉会長

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武久洋三名誉会長_20240117医療介護総合確保促進会議

 地域医療介護総合確保基金の執行状況などが報告された厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の武久洋三名誉会長は「人口減少が進み、介護職員などは地方のほうが集まらない厳しい状況」と伝え、今後に向けて「都会と地方の軽重を考えてはどうか」と提案した。

 厚労省は1月17日、医療介護総合確保促進会議(座長=田中滋・埼玉県立大学理事長)の第20回会合を開き、当会から武久名誉会長が構成員として出席した。

 厚労省は同日の会合に「地域医療介護総合確保基金の執行状況、令和4年度交付状況等及び令和5年度内示状況について(報告)」と題する資料を提示。その中で、都道府県別の執行状況や主な取組事例などを伝え、構成員の意見を聴いた。

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医療分1,029億円、介護分524億円

 この基金は、地域における医療・介護の総合的な確保を推進するため平成26年度に創設。消費税増収分等を活用した財政支援制度「地域医療介護総合確保基金」が各都道府県に設置されている。

 厚労省によると、同基金の令和6年度予算案は、公費ベースで 1,553億円(医療分1,029億円、介護分524億円)を計上。各都道府県は都道府県計画を作成し、当該計画に基づき事業を実施している。

 対象事業は、施設等の整備や、医療・介護従事者の確保に関する事業など7区分となっている。
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P4抜粋

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調査結果を踏まえ、執行に努める

 平成26年度から令和3年度までの交付分を見ると、医療分全体の執行状況は73.6%。区分別では、「地域医療構想の達成に向けた医療機関の施設又は設備の整備に関する事業」の執行率が48.6%だった。

 厚労省保険局医療介護連携政策課の竹内尚也課長は「少し低調になっているが、地域医療構想に係る地域の関係者との協議などに一定の時間を要するほか、コロナによって協議が困難だったことが理由として考えられる」と説明した。

 その上で、今後に向けて、「都道府県に対し、今年度末を期限として、より具体的な執行予定額や執行スケジュールの調査を行っている。調査結果を踏まえながら、引き続き担当部局において執行に努めてまいりたい」と伝えた。

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計画の進捗を見ながら差配

 質疑で、渕野勝弘構成員(日本精神科病院協会常務理事)は「100%近いのかと思っていたが、やはりコロナなどの影響で執行率が大変低いのがあった」と指摘。「そうした場合には、今後も事業を継続して、そのお金を使えるのか。または、そのお金を返すべきなのか。あるいは、事業の内容を変えて、県がそのまま使っていくのか」と尋ねた。

 厚労省医政局地域医療計画課の佐々木孝治課長は「もし不要分が出る場合には返還という手続きになるが、基本的には現時点で執行残額のうち具体的な計画がない金額は次年度の要望額から差し引いて配分している」と説明した。

 また、事業の内容については「当初、計画として出していただいた事業に基づいて、その計画の進捗を見ながら、今申し上げたような差配をしている」とし、「途中で計画の変更があれば、それも要望として勘案していく」と柔軟に対応する姿勢を示した。

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査定によって減っている

 佐保昌一構成員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)は「医療・介護の双方に言えることだが、区分ごとに見ると執行率に差がある」と指摘した。

 佐保構成員は「地域によって必要な取り組みは違うと思う」と執行率の地域差に理解を示しながらも、「医療・介護従事者の確保など、それぞれの取り組みが全体で進むよう、基金の使い勝手も含めて、国として必要な支援をお願いしたい。とりわけ人材確保は重要な課題なので、官民を問わず基金の有効活用で前進を図っていただきたい」と要望した。

 山際淳構成員(民間介護事業推進委員会代表委員)は「基金の予算額が年々減少してきている」と懸念し、「介護施設等の整備に関する事業の執行率が63.3%と非常に低い」と指摘した。厚労省の担当者は「予算に対して要望が少ない分、査定によって減っている」と説明した。

 こうした議論を踏まえ、武久名誉会長が発言。「地方のほうが厳しいので、少し加減をしてくれないか」と厚労省の見解を求めた。

【武久洋三名誉会長の発言要旨】
 質問を1つ、要望を1つ、お願いしたい。まず、平成26年度から令和6年度まで12年度にわたる基金によって地方は非常に助かっているが、各都道府県で状況が大きく違う。地方では人口減少が進み、ニーズがあるのに介護職員は地方のほうが集まらない。こういう厳しい状況がある。
 そこで質問だが、基金を各年度で執行している中で、前年度と同様の金額が各都道府県に割り振られるものなのだろうか。例えば、都会のほうが施設や職員の状況については、少し環境がいいと思う。いろいろな補助金もある。一方、地方によっては非常に厳しいところがあるので、都会と地方で少し軽重を考えながら配分していただけると非常にありがたい。担当部署は非常に苦労すると思うのだが、いかがだろうか。
 私のように地方の者にとってみると、やはり地方のほうが厳しい状況にあると思うので、少し加減をしてくれないかというお願いもしたい。都道府県における軽重について、どの程度まで判断していただいているのか。各年度に応じて次年度も決めるようだが、そのような決め方についても質問させていただきたい。

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【厚労省老健局高齢者支援課・峰村浩司課長】
 介護の施設整備の関係の予算について、令和4年度までは予算に対して要望が少ない面もあった。県などから要望があったものについてはしっかり配分ができている状況だが、令和5年度については予算を上回る要望をいただいたので、配分が全てに行き渡るわけではない。先ほど、未執行率が県によってばらつきがあるとの指摘もあったが、今年度からは執行状況に鑑みて、配分を少し工夫している。そのため、都会と地方で差があることについては特に認識していない。

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