急性期病棟に介護やリハビリ職の必置を ── 医療介護の総合会議で武久名誉会長

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武久洋三構成員_2022年7月29日の医療介護総合確保促進会議

 2040年に向けた医療・介護政策の方向性を議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の武久洋三名誉会長は「急性期病院から要介護者がたくさん紹介されてくる」と伝えた上で、「急性期の病棟に介護職員やリハビリ職員を必置にして、要介護者を減らすような予防的な措置が重要」と述べた。

 厚労省は7月29日、医療介護総合確保促進会議(座長=田中滋・埼玉県立大学理事長)の第16回会合をオンライン形式で開催し、当会から武久名誉会長が構成員として出席した。

 この会議は、地域医療介護総合確保基金の執行状況などを報告するため、毎年1~2回のペースで開かれている。医政局と老健局の協力を得て保険局が開催する会議で、医療・介護に関わる団体の代表者らで構成されている。

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2040年を見据え、提供体制の議論を深める

 厚労省は同日の会合で、平成26年から令和2年度の執行状況や令和3年度の交付状況などを報告した後、「総合確保方針の次期改定に向けた主な論点」と題する資料を提示。その中で、「今後のスケジュール(案)」を示した。

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P13【資料2】総合確保方針の次期改定に向けた主な論点_2022年7月29日の医療介護総合確保促進会議_ページ_13

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 厚労省保険局医療介護連携政策課の水谷忠由課長は説明の中で、「総合確保方針は医療計画と介護保険事業計画のいわば上位に位置する概念」とした上で、「6年1期の医療計画と3年1期の介護保険事業計画が2024年度に同時改定。さらに2024年度は診療報酬と介護報酬の同時改定の年でもある」と伝えた。

 その上で、水谷課長は「第8次の医療計画、第9期の介護保険事業計画は2025年をまたぐものとなるので、こうした姿を念頭に置きながら、2040年を見据えた医療・介護提供体制のあり方について議論を深めていただいてはどうか」と論点を示した。

 論点は、①人口構造の変化への対応、②「地域完結型」の医療・介護提供体制の構築、③サービス提供人材の確保と働き方改革、④デジタル化・データヘルスの推進、⑤地域共生社会づくり──の5項目。武久名誉会長は、このうち③について意見を述べた。
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P10【資料2】総合確保方針の次期改定に向けた主な論点_2022年7月29日の医療介護総合確保促進会議_ページ_10

【武久洋三名誉会長の発言要旨】
 慢性期医療や回復期の立場から、10ページの論点③について意見を述べる。急性期医療の病棟に介護職員やリハビリ職員を必置とすべきである。現状、医療と介護の間を高齢患者さんが行ったり来たりしている。急性期病院でも高齢患者さんが8割近くになっている。このような状況下で、急性期病院から要介護者がたくさん紹介されてくる。
 急性期医療に介護職員が十分にいない。高齢者が夜中にトイレに行く。認知症の人もいる。そのような状況で、夜勤の看護師さんは少ない。急性期病院の現場は大変困っておられると思う。急性期病院の病棟に介護職員やリハビリ職員が必置となっていない。その結果、要介護者が増えている。回復期リハビリや慢性期の病院に要介護の高齢者がどんどん送られてくる。
 急性期医療のウエイトが非常に大きい。介護保険では給付金に補助が出ているが、医療保険の介護職員には、そのような国からの給付金が全く出ていない。そのため、介護職員はどちらかというと介護施設に就職したいという要望があり、急性期医療の病院には介護職員が非常に少なくなっている。そのため、看護師さんが介護にも時間を割いてやらざるを得ないという非常に気の毒な状況にもなっている。 
 夜勤の看護師さんの数が少ないため、夜は抑制をしたり膀胱にバルーンカテーテルを入れたりする病棟もある。そうすると、2~3週間も入院していれば動けなくなってしまう。 
 こうした状況も考えて、ぜひ論点③の所に、急性期医療の病棟に介護職員やリハビリ職員を必置ということを示していただきたい。介護と医療の間を取り持ってくれる非常に重要な課がなかなかうまくいかないということになっては困る。ゆくゆくは要介護者が減るという方向に進むためには、もとから要介護にならないような仕組みをはっきりとさせなければいけない。 
 この論点③において、もう一度、医療側の医政局と保険局、介護側の老健局とが話し合っていただきたい。急性期医療で要介護の状態になってしまう人を何とかして減らしていただくような予防的な措置が論点③で非常に重要になると思うので、ぜひ皆さんにご協力いただきたい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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