記者会見(10月31日)のご報告
「介護の前後に医療が必要となる。慢性期医療がそこをサポートしなければいけない。私たちには使命感がある」─。日本慢性期医療協会(日慢協)は10月31日に記者会見を開き、武久洋三会長が「第1回ケアマネジャー講座の開講」や「認知症科の提案」などについて、池端幸彦副会長が「第20回日本慢性期医療学会福井大会」について説明しました。
冒頭、武久会長は9、10月に開催した「在宅医療認定医講座」について、「第1回は130人を超える参加者で大変好評だった」として、在宅医療の質向上に向けた取組みが順調に進んでいる状況を報告しました。さらに、来年1月26、27日に開講する「日本慢性期医療協会認定・第1回ケアマネジャー講座」について、「ケアマネジャーに医療系の知識が不足しているので是正したい。私たちには慢性期医療をサポートするという使命感がある。私たちがやるしかない」と、開講趣旨を説明しました。
厚生労働省の「社会保障審議会・介護給付費分科会」や「介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会」などでは、ケアマネジャーの資質向上のための課題として、「医療的な視点の欠如・知識不足」が指摘されています。武久会長は、「ケアマネジメントにおける医療系のケアマネジャーの減少が非常に大きな問題として取り上げられているのに、医療系知識の不足を是正するような講習が行われていない」と指摘、日慢協が全国のケアマネジャーのスキルアップに貢献していく意向を示しました。
同講座では、厚労省老健局老人保健課の松岡輝昌・介護保険データ分析室長や、国立保健医療科学院の筒井孝子・統括研究官らを講師に招き、ケアマネジャーに期待される役割や必要な医療知識、地域包括ケアシステムにおけるケアプランのあり方などを学びます。
池端副会長は、「ケアマネジメントに必要な医療的な知識について、これほど集中的にやるような講座は今までにない。講師陣には厚労省の検討会委員らも入っており、このような講座は全国初と言ってもいい。ケアマネジャーの資質向上のため、『もう待っていられない』という会長の強い思いがある」と強調しました。
武久会長は、「今まで手つかずの分野を日慢協がサポートする。介護の前後に医療が必要となる。慢性期医療がそこをサポートしなければいけない。日慢協としての使命感がある。私たちがやるしかない。この講座を全国のケアマネジャーにお伝えいただければ大変ありがたい」と協力を求めました。
■ 新たな診療科目に「認知症科」を
「激増する認知症患者さんを誰が診るのか」─。武久会長は、現在約300万人とされる認知症患者が近い将来に500万人まで増加する見込みであることを指摘し、「認知症の治療には早期発見が重要だが、認知症の鑑別診断をする『認知症疾患センター』はまだまだ少ない。自宅近くの診療所や病院が『認知症科』の看板を出せば、患者さんが早期の治療を受ける機会を増やすことができるだろう」と提案理由を説明しました。
日慢協は今年1月、「2012 日本慢性期医療宣言」を発表、主要5大事業の1つとして、「身体疾患合併の認知症患者を積極的に受け入れ、早期の治療を推進します」と宣言しています。
現在、「慢性期医療認定講座」「在宅医療認定医講座」「医療介護福祉士認定講座」「在宅療養家族講座」などを相次いで開講しており、認知症への対応にも注力しています。
武久会長は、「BPSDのような認知症の周辺症状を除けば、認知症の9割以上は慢性期医療の範囲。私たちは慢性期分野について横断的にさまざまな活動をしてきた。初期の認知症患者さんのために『認知症科』を認めるべき時期に来ている」と訴えました。近く厚労省医政局に対し、「認知症科」を新たな診療科目として承認するよう正式に申し入れる予定です。
最後に、11月8、9日に開催する「第20回日本慢性期医療学会福井大会」で大会長を務める池端副会長が、福井大会の概要やプログラムなどを説明。「日慢協の20周年記念大会でもあり、盛りだくさんのシンポジウムとなっている。ぜひ多くの皆様にお越しいただきたい」と参加を呼びかけました(福井大会のホームページはこちら)。
2012年11月1日