「マルチモビディティ」も追記を ── 第9期計画の議論で井川副会長

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井川誠一郎副会長_20230710介護保険部会

 第9期介護保険事業(支援)計画の基本指針(案)が示された厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の井川誠一郎副会長は「サルコペニアやマルチモビディティも介護予防・重度化防止を考える際のキーワード」と指摘し、「追記することで、より具体的な対策につながる」と述べた。

 厚労省は7月10日、社会保障審議会(社保審)介護保険部会(部会長=菊池馨実・早稲田大学理事・法学学術院教授)の第107回会合を開催し、当会から井川副会長が橋本康子会長の代理として参考人出席をした。

 厚労省は同日の部会に、前回会合の議論などを踏まえて修正した「基本指針の構成」などを提示。厚労省の担当者が主な修正点や今後のスケジュールなどを説明し、委員の意見を聴いた。

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要介護者を支える訪問リハビリ

 今回示された「第9期計画において記載を充実する事項(案)」では、新たに「居宅要介護者を支えるための、訪問リハビリテーション等や介護老人保健施設による在宅療養支援の充実」が追記された。

 前回会合で当会の橋本康子会長は「寝たきりにならないようなリハビリテーションが今後、大変重要な項目になると思うが、基本指針の構成の中に、そのようなリハビリテーションにおける項目がはっきりと示されていない」と指摘し、「基本指針の中に、現在ある介護施設、福祉施設でのリハビリテーションの推進も盛り込んでいただきたい」と求めていた。

 井川副会長は今回の追記に謝意を示した上で、基本指針(案)の本文に「フレイル」に関する記載がある点を評価。その上で、「サルコペニア」「マルチモビディティ」という文言も盛り込むべきとの考えを示した。
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資料1-2_ページ_005

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 井川副会長の発言要旨は以下のとおり。

■ 基本指針(案)について
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 資料1-1(基本指針の構成)の2ページ、「第9期計画において記載を充実する事項(案)」の一番の最後の丸に、前回、当協会の橋本が言及した訪問リハビリテーションの推進などに関する項目を組み込んでいただいた。感謝を申し上げる。 
 私は医療・介護現場での高齢化の重要な問題の1つに、マルチモビディティを有する高齢者において、フレイルやサルコペニアが極めて進行、悪化しやすいということがあると思っている。 
 今回の基本指針では、「フレイル」という言葉が、資料1-2の5ページ、上の四角の中段あたり上から11行目に出ている。ここでは、「介護予防を進めるに当たっては、高齢者の心身の状態が自立、フレイル、要支援、要介護のいずれかに該当するかを把握するだけでなく、その状態が可変であるというように連続的に捉えて支援するという考えに立つことも重要」と記載されている。
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【縮小版】資料1-2_01
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 ソーシャルフレイルやオーラルフレイルと言われる時期は、ADL的には自立しており、自立、要支援、要介護といった要介護認定制度の言葉とは、直接的に組み込まれることはないと考える。 
 例えば、介護予防を進めるにあたっては、高齢者の心身の状態が自立、要支援、要介護のいずれかに該当するかを把握するだけではなく、その状態が可変であるフレイルを早期に捉えて支援するという考えに立つことも重要であるというような形で訂正してもよいかと考えるが、いかがであろうか。 
 一方で、この行の8行後に示されている「高齢者のフレイル状態を把握した上で、適切な医療サービス等につなげることによって、介護予防・重度化防止や疾病予防・重症化予防の促進を目指すことも重要である」という文章は極めて適切で重要である。
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【縮小版】資料1-2_02
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 さらに、75ページの左側、改正案において、(八)に「都道府県医療費適正化計画との調和」にフレイルに関する記述が加えられた点は、高齢者において看過できない問題を明示しており、素晴らしい追記だと思う。
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P75資料1-2_ページ_075
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 ただし、これは都道府県のみならず市町村レベルでも考える必要があって、35ページの(七)の「市町村健康増進計画との調和」の中にも入るべき項目ではないかと考えている。
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P35資料1-2_ページ_035
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 また、高齢者の特徴を表すフレイルという言葉が、より具体的な介護計画をイメージするものであれば、今回の案には記載されていないが、前述したサルコペニアやマルチモビディティという単語も「自立支援、介護予防・重度化防止の推進」を考える際にキーとなるワードであり、追加記載することで、より具体的な対策につながると考えている。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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