「感染症の基本知識等を持てるシステムを」 ── 第8期計画について橋本副会長が提言

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20200727-介護保険部会

 日本慢性期医療協会の橋本康子副会長は7月27日、第8期計画に向けて議論した厚生労働省の会議で、基本指針案に感染症対策の項目が新設されることを評価した上で「感染症に対する基本的な知識や対策などを医療人や福祉に携わっている人たちが持てるようなシステムも大事ではないか」と提言した。

 厚労省は同日、社会保障審議会(社保審)介護保険部会(部会長=遠藤久夫・学習院大学経済学部教授)の第91回会合を約半年ぶりに開催した。今回から、武久洋三会長の後任として橋本副会長が議論に参加した。会議はオンライン形式で開かれた。

 この日の主な議題は、①地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律、②基本指針(案)、③「介護保険制度の見直しに関する意見」を踏まえた医療療養病床等から介護医療院等への移行の扱い、④匿名要介護認定情報等の提供に関する専門委員会(案)の設置、⑤「要介護者等に対するリハビリテーションサービス提供体制に関する検討会」報告書──の5項目で、このうち②が議論の中心となった。
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感染症に対する研修の充実等が必要

 来年度からスタートする第8期介護保険事業計画の基本指針について、厚労省は同日の会合に「記載を充実する事項(案)」を提示。新たに「災害や感染症対策に係る体制整備」を加える方針を示した上で、基本指針(案)の「新旧案」を別添資料で紹介した。

 この中で、感染症対策については「感染症に対する備えの検討」と題する項目を追加。「介護事業所等の職員が感染症に対する理解や知見を有した上で業務に当たることができるよう感染症に対する研修の充実等が必要である」と記した。
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P64抜粋【資料2-2】基本指針(案)について(新旧案)_20200727介護保険部会

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医療者でさえ、あまり知識がない

 質疑で、橋本副会長は「感染症に対する備えは医療施設はもちろん、福祉施設でも大変重要になってきている」との認識を示した上で、研修を充実させる必要性を指摘した。

 橋本副会長は今年2月、ダイヤモンド・プリンセス号から最初に下船した約70人の診療や投薬、相談などで1週間、自院のスタッフらと共に泊まり込みで対応し、その模様を3月13日の定例記者会見で報告している。

 橋本副会長は「病院・福祉施設内で感染症が発生した場合や、感染症患者を受け入れた場合にゾーニングをどうするか、消毒などをどうするか。防護服をどのように着るかなど、医療者でさえ、まだあまり知識として持っていない」と現状を説明。「感染症に対する基本的な知識や対策などを基本的な知識として持てるようなシステムも大事ではないか」と提言した。

 これに遠藤部会長は「大変重要なご指摘だと思う」とコメントした。詳しくは、以下のとおり。

〇橋本康子副会長
  慢性期医療に携わる者として意見を述べたい。基本指針に新しく「災害や感染症対策に係る体制整備」が追加される方針が示された。それによると、「新型コロナウィルス感染症の流行を踏まえ、これらへの備えの重要性について記載」としている。
 資料2-2の基本指針の「新旧案」の64ページにもあるように、感染症に対する備えが医療施設はもちろん福祉施設でも大変重要になってきていると思う。医療施設や福祉施設でもクラスターの発生がある。それは人材不足などにも関わってくる。
 「新旧案」には、研修を受ける必要性が示されている。現在、救命救急に関して消防署が主催する講習会や、専門的な救命救急の研修会などがある。こうした研修会と同じように、感染症に対する基本的な知識や対策など、そういったことを医療人や福祉に携わっている人たちが基本的な知識として持てるようなシステムも大事ではないか。
 例えば、病院・福祉施設内で感染症が発生した場合や、感染症の患者さんを受け入れた場合に、ゾーニングをどうするか、消毒などをどうするか、防護服をどのように着るかなど、まだ医療者でさえ、あまりきちんとした知識として持っていないのが現状である。医師でも、感染症の専門でなければ、なかなかそういうところについて自信がないのが現状ではないかと思う。
 そのため、新型コロナウイルス感染症への対応に限らず、患者さんを守るために、また私たちの身を守るためにも、もう少し具体的な内容に関する研修や講習会などを早急に広めていかなければいけないのではないかと思う。

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〇遠藤久夫部会長
 大変重要なご指摘だと思う。ありがとうございました。
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                          (取材・執筆=新井裕充) 

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