第89回社会保障審議会医療保険部会 出席のご報告

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第89回社会保障審議会医療保険部会 出席のご報告

 平成27年10月3日、「第89回社会保障審議会医療保険部会」が開催され、当会からは委員として武久洋三会長が出席いたしました。

 今回の会議では「短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大」、「マイナンバー制度の施行」、「後期高齢者の低栄養防止の推進」の3点が議題とされ意見交換が行われました。

 まず、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大についてですが、これは、従来、被用者保険の対象外であった短時間労働者に対して保険の適用範囲を拡大することでセーフティネットの拡張をはかる施策です。今回の部会では、適用拡大に伴い負担増が予想される保険者(主に短時間労働者の比率の大きい業種)に対して、激変緩和措置を行っていく旨の報告が行われました。

 また、政府が整備を進めるマイナンバー制度の施行について厚労省から報告があり、保険給付といった経済的な内容についてマイナンバーによる管理を行っていく説明が行われました。委員からは、今後、個人のプライバシーと密接に結びついている医療情報がマイナンバーと紐づけされることへの懸念の声が上がり、医療におけるマイナンバー制度の適用はあくまでも経済的な情報処理に留めてほしいとの意見が述べられました。

 また、政府の進める健康づくり政策の一環として「後期高齢者の低栄養防止の推進」の取り組みが紹介されました。これは、高齢者の疾病予防・介護予防のために、高齢者の虚弱(フレイル)を防ぐ総合的な対策を行っていくというものです。
武久会長は特にこの後期高齢者の虚弱の問題について触れ、下記のように発言されました。

 「中年や前期高齢者では栄養過多、生活習慣病といった問題があり、後期高齢者では低栄養が問題となる。この低栄養がどこから始まるのかというのがポイント。急性期病院から紹介されてくる患者の6割がアルブミン値3.5以下、しかも脱水及び電解質異常、コレステロールは120以下というような人がたくさんおられる。急性期病院に1カ月以上いるような患者さんは褥瘡、低栄養の割合も多くなる。
急性期医療の場では、臓器別専門医制度によるそれぞれの専門分野の治療を非常に熱心にやっていただいているが、後期高齢者の場合はそのほかにもいろいろ虚弱な部分がある。入院して安静を強いられたり、大量のお薬、長期の臥床などを経て、現実問題として、慢性期医療に来るときには完全なフレイル状態となってしまっていることがある。
病気になる背景にはフレイルがあり、そこから病気になると思うが、急性期医療での治療を経てもフレイルが治っておらず、むしろ増幅され、それを慢性期医療が修復している。修復をしないと、リハビリに対する意欲も当然わいてこない。この大きな問題を防ぐために、後期高齢者がフレイルとなって慢性期医療に来るという現状を、急性期医療の側にもご理解いただいて、手術が終わったら早期に出していただければと思う。
急性期病院での褥瘡の治療は評価するが、褥瘡ができる寸前の状態で慢性期医療に来た患者さんが慢性期医療の現場で褥瘡ができてしまった場合に、慢性期医療が悪いとされるのは、それは少々違うのではないか。現場は一生懸命にやっているが、慢性期医療で2年3年と入院され、最期、だんだんと老衰をされていくような場合に、3年目に褥瘡ができたのは慢性期医療が悪いと言われてしまうような状況となってしまっている。
 後期高齢者のフレイル問題は非常に根深いものがある。フレイル状態、低栄養とか電解質異常が治るとリハビリの効果も出て、また家に帰ることができるようになる。発生の段階から、できるだけ防ぐような視点も考えていただけるとありがたい。」
 

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