年頭所感2023 日本慢性期医療協会 会長 橋本康子

謹んで新年のお慶びを申し上げます。
私は昨年の6月総会で、日本慢性期医療協会会長を拝命いたしました。
まだまだ未熟ではありますが、精一杯取り組もうと思っています。
武久洋三前会長は在任中に、いくつもの意見を出され、それが診療報酬に反映されました。まだまだ多くの問題点が残っているといわれて退任されましたが、私はその意思を継いでいきたいと思っています。
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いよいよ来年は診療報酬、介護報酬同時改定の年であり、障害福祉サービス等報酬を含めてトリプル改定の年と言われています。
私たち現場の医療者は診療報酬の後追いをするのではなく、医療の質を向上させるためには何をすべきか、を提言・実行しそこに診療報酬がついてくることが正しい姿だと思います。
日本慢性期医療協会の定款では、その目的を「慢性期医療の質の向上に寄与すること」と謳っています。「社会的入院」や「お預かり病院」の時代は終わりました。
今後はますます高齢者人口が増えてきます。障害があっても車いす移動であっても自立した生活ができる高齢者を増やしていく。平均寿命と健康寿命の差をできるだけ縮めることが私たちの使命ではないでしょうか。
そのためには身体全体をバランスよく診ることができる「総合診療医」が必要であり、医師と共に動いてくれるスタッフが必要です。「基準リハビリテーション」「基準介護」の発想はそこから出てきました。「基準」とは、人数・体制・業務内容などが設定されることです。それによって平均的な質が担保されます。
「看護業務基準」は1995年に作成されました。わずか30年にも満たない間に素晴らしい看護の質向上が見られ、基準化することが有用であることを示しています。
又、リハビリテーションが包括化されるとすれば、リハ単位数の基準を設けるべきであり、投入資源量(看護、ケア、栄養管理などに要する時間)に応じた点数制度とすべきであると提言します。
このような提言を毎月、理事会後の記者会見でお話してきました。詳しくは日慢協BLOGに掲載されています。今後も慢性期医療を取り巻く課題を解決すべく対策を提言していきたいと思います。
寝たきり防止へ向けた慢性期医療の課題は、担い手の「質」「量」「意識(やる気)」の改善です。
それぞれの課題は次のようになります。
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「質」
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〇医療と介護のシームレス化
・総合診療医の育成
・情報、評価指標の統一
・認知症の対応力強化
〇リハビリテーション質の向上
・機能訓練からADL訓練
・時間報酬からアウトカム報酬
・リハビリテーション栄養の充実
〇専門性を活かしたチーム医療
・専門能力を発揮するチーム作り
・リハ看護、リハ介護の強化
・専門職の資格評価
〇人間らしい生活
・病室の個室化
・個別浴槽
・おいしい病院給食
・身体拘束廃止
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「量」
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〇リハビリテーション量の増大
・基準リハの導入
・基準介護の導入
・訪問リハビリテーションの改革
〇ケア人材の確保
・介護福祉士の専門性を活かした業務
・同一スキル同一賃金
・タスクシェア、タスクシフトの意識変化(適切化)
・現実的なICT化
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「意識(やる気)」
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〇品質を高める教育と仕組み
・ニーズに応じた医療への経営者教育
・事務長(事務責任者)教育
・インセンティブが働く制度つくり
・投入資源量に応じた報酬制度
・質追求型の慢性期医療(在宅入院など)
・多様性をもつ慢性期医療
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これらの課題を皆様と考えていきたいと思います。そして、日本が世界に誇れる国民皆保険とフリーアクセス制度を守りながら、長年の課題となっている寝たきり高齢者を減らすことが私たちの仕事であると考えます。
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2023年1月1日