日本慢性期医療協会 2013年 年頭所感
皆様、新年明けましておめでとうございます。私が日本慢性期医療協会の会長に就任させていただいてから、5回目の新年となりました。また、昨年9月には、日本慢性期医療協会設立20周年記念祝賀会を開催し、会場には衆参議員や厚生労働省幹部のほか、関係団体の役員の先生方など総勢700人以上にお集まりいただき、盛大に行うことができました。これもひとえに会員の皆様方のご協力のおかげであると感謝いたしております。
さて、高齢化のピークを迎える2025年に向けて、国民皆保険を堅持しつつ誰でも安心して地域で必要な医療・介護を享受できる社会を実現するために、社会保障・税一体改革が進められておりますが、医療に関しては十分な議論が交わされているとは言いがたい現状であります。
そこで、各種病院団体からなる日本病院団体協議会は、昨年12月26日に発足したばかりの安倍新政権における新厚生労働大臣に対して国民皆保険制度を存続し、併せて高度医療機能を具備した医療提供体制を確保するという要望書を提出する予定です。
日本慢性期医療協会としては、昨年6月に厚生労働省に対し医療法で規定している一般病床と療養病床の区分を一括化する新たな病床区分として、急性期病床群と慢性期病床群から成る、「入院病床区分(仮称)」を申し入れました。急性期病床群は、高度急性期病床や急性期病床が含まれます。これに対し慢性期病床は、急性期治療後の患者を受け入れるいわゆるpost acuteを受ける病床であり、長期急性期病床、回復期病床、長期慢性期病床、障害者病床が含まれます。今後どのように病床が規定されていくか分かりませんが、仮に現在の約100万床の一般病床の約半分が急性期となり、残り半分が急性期以外となった時に、この急性期以外の50万床において、現在の看護必要度の規定を厳しくしていくとすると、相当数の病院が慢性期医療を選択するのではないかと考えております。
昨年の同時改定では、13:1、15:1一般病床でも、在院日数が90日を超えた患者に対し、選択制ではあるものの医療区分が導入されました。また、中医協における入院医療等の調査・評価分科会が設置され、7:1一般病床から25:1療養病床までの入院医療の評価体系について調査が始まっています。これらのことからも、保険の観点では一般病床と療養病床の概念が、急性期病床から慢性期病床という概念にベクトルが大きく動いていると言えるでしょう。
そして当会では、長期急性期病床に於いては「慢性期DPC」の導入を提唱しています。「慢性期DPC」は急性期のDPC/PDPSのMDC分類から一部疾患を除き、慢性期の特殊性を考慮したアレンジを想定しています。「主たる疾患」「処置等」の組み合わせによる出来高点数と包括点数からなる支払い方式とし、中医協のDPC評価分科会で議論されている認知症と日常生活自立度における重症度を考慮した評価手法であるCCPマトリックスの導入について検討しています。入院期間別の点数設定も同様に、入院期間を25%タイル値までのⅠから平均在院日数までのⅡにⅢ、それ以上は長期慢性期病床として病態区分による報酬設定にするというものです。機能評価係数も、全病院を対象とする基礎係数、人員配置等構造的因子を評価する機能評価係数Ⅰ、慢性期医療の特性に基づいた診療実績や医療の質的向上等を評価する機能評価係数Ⅱを設定する構想です。これは当協会の常任理事であり、厚生労働省の診療報酬調査専門組織DPC評価分科会の委員でもある美原先生によるものですが、当会では先取り型で物事を進め、調査をしてエビデンスのあるデータを出しながら主張してきました。今後も機能をきちんと果たすことが協会の姿勢であると考えています。
また当会では、在宅医療にも積極的に取り組んでおります。在宅医療は聴診器一本で診なければならない医療であり、優れた技術と豊富な経験が必要となります。在宅には病院のような医療機器がない場で、診断・治療を行うための知識や技術を持っていなければなりません。在宅医療も慢性期医療の範囲です。当会ではすでに「在宅医療認定医講座」「在宅療養家族講座」を実施しており、共に受講者から好評でしたので、4月には第二回在宅医療認定医講座を開催することが決定いたしております。そして1月に開催する、「日本慢性期医療協会認定ケアマネジャー」講座は、皆様方から多数のお申込をいただき、定員に達しました。
我々が現場としてやらなければならないことはたくさんあります。これからは慢性期病院といえども急性期治療機能、すなわち、1.緊急送迎、2.緊急入院、3.緊急画像診断、4.緊急血液検査、5.緊急処置、これらの機能を持っていなければ、生き残っていくことは困難であると思っております。
本年も新たなる活躍に向けて会員一同とともに邁進する所存であります。更なる会員の皆様からのお力添えをいただきながら良質な慢性期医療を推進していきたいと思っておりますので、今後とも宜しくお願い申し上げます。
2013年1月1日