地域包括ケア病棟、「育てる議論を」 ── 3つの役割めぐる議論で池端副会長

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池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)_2021年11月12日の中医協総会

 地域包括ケア病棟の在り方をめぐる議論があった厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「これからしっかり3つの機能を満たすものに育てるような前向きな議論をお願いしたい」と述べた。

 厚労省は11月12日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第496回会合をオンライン形式で開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。

 この日のテーマは、「外来(その3)」と「入院(その3)」。このうち、入院の審議では「回復期入院医療について」と題する151ページの資料を示し、地域包括ケア病棟の論点として、「(3つの)役割の一部しか担えていない場合の評価の在り方についてどのように考えるか」と意見を求めた。
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151_【総-2-1】入院(その3)回復期入院医療について_2021年11月12日の中医協総会

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濃淡が生じる幅広いもの

 質疑の冒頭で、城守国斗委員(日本医師会常任理事)は「3つの役割を均等に果たすということを評価したものではない」と指摘し、「各々の地域の医療提供体制や、その病院の特性などによって濃淡が生じる」との認識を示した。

 城守委員は「近隣に在支診や在支病がある病院においては在宅患者の受け入れ件数が少なくなるのは自然なことであろうし、近隣に急性期病院がない医療機関であれば、自院の急性期病棟での患者さんを治療して、その後、地ケア病棟に転棟させて在宅復帰につなげる運用となり、急性期から入ってくる患者さんのほとんどが自院からの転棟という可能性も出てくる」と説明した。

 その上で城守委員は、3つの役割の一部しか担えていない場合について「地域包括ケア病棟の活用方法として否定されるべきものではない。急性期機能から回復期、また在宅患者さんの急変時の受け入れ体制の機能など、その機能は大変、幅広いものがある」と述べた。
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バランスが悪いから駄目ではない

 これに対し、支払側の佐保昌一委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)は「求められている3つの役割がきちんと担われている所と、役割の一部しか担えていない所の評価にメリハリをつけてもよいのではないか」との考えを示した。

 同じく支払側の眞田享委員(経団連社会保障委員会医療・介護改革部会長代理)は「自院の一般病棟からの転棟が8割以上の医療機関と、自宅等からの入棟が8割以上の医療機関において患者の状態、あるいは医師の診察の頻度に差がある」と指摘し、「3つの役割をどこまで担えているのかといった視点で評価を見直して、メリハリをつけるということがあり得るのではないか」と述べた。

 松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「地域によって求められる役割が違うのは当然ありうる話だ」と理解を示しながらも、「3つの役割を均等に果たしなさい、バランスが悪いから駄目であるということではなく、患者の状態や医療資源の投入量に違いがあれば、それを十分に勘案した評価があってしかるべき」と述べた。
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3機能を満たすものに育てる議論を

 池端副会長は、大企業の合併などを例に挙げながら「だんだん1つに収斂して、それぞれの特長を生かしながら大きなものになっていく。一般病床と療養病床、大病院と中小病院、いろんな違いが地域包括ケア病棟として集まって、これから、しっかり3機能を満たすものに育てる。そういう前向きな議論で見ていただければありがたい」と述べた。

 この日の会合では、外来医療もテーマになり、紹介状なしで受診する場合の定額負担なども議論になった。公益委員から「非常に難しい仕組みで、一般の利用者はわからないと思う」との声が上がった。池端副会長は「立て付けとして、かなり無理がある」と指摘し、「丁寧な説明を国民にしていただきたい」と求めた。

 池端副会長の主な発言要旨は以下のとおり。
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2021年11月12日の中医協総会

■ 外来医療について
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 紹介状のない患者の定額負担の拡充について、社会保障審議会医療保険部会に示された内容が出ている。それによると、かかりつけ医機能を担う地域の医療機関を受診せず、あえて紹介状なしで大病院を受診する患者の初・再診については、一定額を保険給付範囲から控除し、同額以上に定額負担の額を増額するとし、「例外的・限定的な取扱」となっている。
 選定療養の基本的な考え方からすると、選定療養はあくまでも患者さんが選べる療養の仕方ということになるが、今回は一定額を控除する。そうなると、外来の基本料からその分が引かれてしまうことになるので、立て付けとしてはかなり無理があると思う。フリーアクセスが薄くなっているのではないか。極めて例外的・限定的ということだが、これがいわば「蟻の一穴」となるおそれがある。こういう選定療養の使われ方が今後も広がることはあってはならないと思う。そこで確認したい。今回は極めて限定的であり、いずれ制度が成熟すればなくなっていく可能性もあるという理解でいいのかどうか。お答えがあれば、よろしくお願いしたい。 
 何人の委員もおっしゃったように、この説明を丁寧にやっていただかないと、現場はかなり混乱すると思う。中医協は、たくさんのメディアの方が聴いていらっしゃる、メディアの方への情報にも十分に目を配って丁寧な説明を国民にしていただきたい。

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【厚労省保険局医療課・井内努課長】
 「例外的・限定的な取扱」については医療保険部会でも、そういった前提での合意事項だと理解している。われわれとしても、池端先生のご意見のとおりの理解、同等の理解をさせていただいている。フリーアクセスについても同じ事象を指していると思う。われわれとしては、フリーアクセスの基本は守りつつ、というかたちで考えている。どういったかたちになるかという認識は同じとさせていただいていると思っている。
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■ 入院医療について
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 地域包括ケア病棟を中心に、少しお時間をいただいて、お話をさせていただきたい。
まず、資料22ページ(入院料別の届出病床数の推移)にあるように、地域包括ケア病床は近年、急速に病床数が増えて、今や回復期リハビリテーション病床、病棟を超した9万床以上の病床数になっている。回復期を中心にした地域包括ケア病床を一定数、増やしたいということについては、だいぶ目的がかなってきていると思う。 
 当初、地域包括ケア病床はどういう病床を狙ったか。当然ながら、3つの機能ということであったが、地域包括ケア推進のために、入院機能も含めた地域に密着した医療機能を担ってほしいということと、もう一方は、7対1で苦しんでいた病院からも、場合によっては、こういう機能を担ってもらうために7対1から下りてきていただくことも狙ったものがあったのではないかと思う。そういう意味で、一定数のものが7対1から回復期、地域包括ケア病棟に入ってきた数もあるということになると、それをよしとすればいいのではないかという面もあるかと思う。
 今回、テーマを絞って、いろいろなデータを出していただいたが、それぞれの地域包括ケア病床はあくまでも施設基準をきちんと満たした上で、この9万床の病床が運営していることも事実であると思う。
 そういうことを踏まえて、入棟別の分析を見ると、当然ながら、その基準を満たした中でも自院の一般病床から8割以上、一部は100%というところもある。一方で、8割以上が自宅からの入棟を受け入れているところもある。しかし、あくまでも施設基準を満たした中でのものである。この資料の表だけを見て、これがいかがなものかとか、けしからんとか、そういうものでは決して私はないと思っている。
 いろんな所から、大病院からも地域からも、あるいは一般病床からも療養病床からも入ってきた地域包括ケア病床の9万床余りを、これから今後、どう育てていくかということに関して、どうしたらいいかという知恵を出していただくための資料として私は読ませていただいた。ぜひ、前向きな方向性を出していただけるといい。
 入棟元の違いから見ると、自院から8割以上の所は患者の状態が安定している人が多いとか、そういうデータが出ているが、これは大きな差ではない。これから、3つの機能をバランスよく満たしていただく地域包括ケア病床に育っていくためにはどうしたらいいかという観点が必要である。
 現在、在宅からの患者はゼロでもいいという基準がある。これをゆっくりとしたかたちで、少しずつ条件化していく、あるいはインセンティブを少しずつ付けていく。こういったことで、本来ある地域包括ケア病床にゆっくりと収斂していく、そういった取組と立て付けがこれから求められるのではないか。
 資料の3ページ(診療報酬における機能に応じた病床の分類)をご覧いただきたい。地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料は、一般病床・療養病床の両方から算定されている。本来、地域包括ケア病床というのは、医療法上の一般病床と療養病床のどちらから来てもいいということを大胆に打ち出した病床である。一般病床と療養病床は医療法上の立て付けも違っていて、医師の配置基準は当然、一般病床のほうが多い。一方で、今日は資料に示されていないが、療養病床に関しては、4対1以上の介護士等の配置基準もある。そういう意味では、手厚い看護・介護体制ができているのが療養病床でもある。それにもかかわらず、一般病床と療養病床の違いを今さら浮き出させて、違いがあるから駄目だと言ってしまうのはいかがなものか。
 資料67ページ(病床種別にみた患者の年齢分布)を見ていただくと、療養病床のほうが高齢者は多いかもしれない。平均在院日数は療養病床のほうが長い。救急実施の有無については、病床種別と言いながら、療養病床だけで見ている。病院全体を見て、救急体制をとっているか、とっていないかということを調べたもの、あるいは病棟ごとの機能を見ているわけではない。病院全体の機能を見ている。しかし、あくまでも今回は病棟の種別を見ていくべきであって、救急実施をしていても、その救急実施の救急患者は一般病床に全部行って、それから地域包括ケア病床に下りてくる。こういう流れもあるのではないかということが読み取れるのではないか。したがって、これをもって救急をしていないということでは決してないのだということを知っておいていただきたい。
 73ページ(医師による診察の頻度)以降の資料もそうである。一般病床と療養病床は医師の配置に違いがあるので、医師の診察が多い、少ないということは多少ある。しかし、75ページ(病床種別の重症度、医療・看護必要度について)を見ていただくと、一般病床と療養病床の重症度、医療・看護必要度にはさほど差がない。
 70ページ(病床種別でみた場合の患者の退棟先)をご覧いただきたい。「自宅(在宅医療の提供なし)」に退棟している割合は一般病床が53.9%、療養病床は50.0%であり、ほとんど差がない。死亡退院には5%ぐらいの違いがあるが、ストラクチャー評価を再び先祖返りしてやるべきではない。アウトカム評価ということで考えれば、重症度の同じ患者をきちんと在宅に半分以上、帰している。療養病床の地域包括ケア病棟であっても、こうした機能をきちんと果たしている。汗をかいている。一般病床との間で決して差を付けるべきではない。そういった目線で、ぜひこの資料を読み取っていただけるとありがたい。
 最後に一言。例えば、大企業や都市銀行の合併でも、もともとの出身の会社や都市銀行それぞれ性質があるから、合併すると、最初のうちはどうしても、その元の企業の風土や得意分野が違う。しかし、だんだん1つに収斂して、それぞれの特長を生かしながら大きなものになっていく。地域包括ケア病床も一般病床と療養病床との違い、あるいは大病院と中小病院の違いがある。いろんな違いが地域包括ケア病床として集まっていて、これから、しっかり3機能を満たすものに育てるんだということで、これから前向きな議論で、インセンティブを付けていく。そういった視点で、この資料を見ていただけるといい。私の個人的な考え方かもしれないが、そういう意味で見ていただけるとありがたい。

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■ データ提出加算について
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 データ提出加算については、療養病床でも6割近くになっている。今後のデータ提出加算について、一定程度、それぞれの機能をかなり満たしてくるので、この利活用はどうなるのか。この中医協等で利用できるところがあるのか、あるいは、そういう見込みがあるか、見込みがあるとすれば、どういうところで使えるのか教えていただきたい。
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【厚労省保険局医療課・井内努課長】
 データ提出加算で出てきたデータの利活用について質問をいただいた。このデータについては、当然、中医協での議論に資する分析を行う場合には活用できるので、われわれとしては、今までも、こうしたデータを使って提供させていただいている。
 今後、委員の先生方から、こういった分析をして、こういった方向性を考えるべきではないかというようなご示唆をいただければ、事務局のほうでも、そういったことができるかどうかを、われわれの能力の範囲内で考えさせていただきたいと思っている。よろしくお願いしたい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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