フリーアクセスの「かかりつけ医」を ── 外来医療の議論で池端副会長

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池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)_2021年10月20日の中医協総会

 令和4年度の診療報酬改定に向けて外来医療がテーマになった厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は、かかりつけ医の制度化に触れながら「緩い枠組みのほうがいい」との認識を示し、「それができるのが日本の医療提供体制の一番いいところであり、フリーアクセスを保障していることだ」と述べた。

 厚労省は10月20日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第491回会合をオンライン形式で開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。

 厚労省は同日の会合に「外来(その2)」と題する資料を提示。かかりつけ医機能や医療機関間の連携に関する課題や論点を示し、委員の意見を聴いた。
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既存の枠組みを前提とした論点

 質疑で、支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は「今回の外来の論点の中心は、診療報酬上のかかりつけ医の在り方であると考えている」とした上で、「既存の枠組みを前提とした論点となっている」と苦言を呈した。

 安藤委員は「既存枠組みのブラッシュアップを否定するわけではない」としながらも、「かかりつけ医の在り方をいま一度整理するとともに、かかりつけ医機能が果たされることによる患者側のメリットを明確化し、それに見合った評価をしていくべきである。かかりつけ医について、制度の枠組みの在り方を含めた議論が必要である」と述べた。

 同じく支払側の末松則子委員(三重県鈴鹿市長)は「今回のこのコロナ禍において、かかりつけ医とは何か、自分にとってかかりつけ医とはどこかと悩んだ方は全年齢、全国民であった」とし、「患者にとって、かかりつけ医とは何かを明確にすることができるように、ぜひ再検討をお願いをしたい」と述べた。

 佐保昌一委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)は「かかりつけ医とはどんな医療機関で、どんな条件をクリアした医療機関が名乗られているのかといったことについて、多くの国民が理解できていないのではないか」と指摘し、「『かかりつけ医とは』という点について、さらに明確化すべきではないか」と述べた。

 こうした支払側の意見に続いて、池端副会長が発言。「かかりつけ患者は誰か、その患者さんに何をしなければいけないのか、改めて見直している先生方も多いと思う。今回のコロナをチャンスだと思って、より良い環境をつくっていきたい」と語った。

 池端副会長の主な発言要旨は以下のとおり。
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2021年10月20日の中医協総会

■ かかりつけ医について
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 かかりつけ医に関して、「再構築すべき」「もう一度、考え直さなければいけない」という意見があった。かかりつけ医は、戦後まもなく始まった、いわゆる「かかりつけ」の機能は、地方で十分に構築されていた。家族を丸ごとみるのが当たり前の時代がずっと続いた。
 その後、かかりつけ医の制度化に向けて、いろいろな加算ができて、施設基準を満たそうとした。そうした中で、「24時間」という言葉が出てきた。「24時間対応」と言われて二の足を踏む医療機関や医師が多いことは確かであろう。
 「24時間365日対応」を文書化すると、どんなときでも必ず対応しなければいけないと考える。24時間いつでも常に診なければいけないと思ってしまう。もちろん、1人の医師では無理である。しかし、実際にはおそらく9割ぐらいは対応している。たまたま、その日だけ対応できないこともあるのだが、それでは算定できないと思っている先生方が非常に多い。現場から、そのような声を聞いている。
 そのため、原則は「24時間」であるが、少し緩和するようなかたちで、24時間対応が難しい場合も踏まえて少し緩和すべきではないか。24時間対応をしたか、しなかったのかという「100かゼロか」という考え方ではなく、24時間対応ができない場合もあることを踏まえた制度設計にすれば、かかりつけがもっと進んでいくのではないか。 
 かかりつけ医の推進に向けて、一定程度の枠組みは必要であることは理解しているが、それはある程度、緩い枠組みのほうがいいのではないか。かかりつけの患者さんと、かかりつけ医の関係は、いわば、お見合いのマッチングみたいな面がある。それぞれの相性もあるだろう。そうした中で、自分のかかりつけ医を見つけていく。それができるのが日本の医療提供体制の一番いいところであり、フリーアクセスを保障していることだと思う。したがって、かかりつけ医については、少し緩い制度設計が必要ではないかと感じている。
 今回のコロナ禍では、ワクチン接種などをめぐり、かかりつけ医の在り方が問われた。かかりつけ医とは何か。コロナをきっかけに、病院や診療所の先生方、患者さんがお互いに考え、かかりつけ患者は誰か、その患者さんに何をしなければいけないのか、改めて見直している先生方も多いと思う。そういう意味では、今回のコロナをチャンスだと思って、より良い環境をつくっていきたいと思う。

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■ 小児のかかりつけ医機能について
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 地方では、休日・夜間は集約化してお互いの負担を減らそうという地域医療構想上の取り組みも始まっている。例えば、私の福井県でも「♯8000」(小児救急電話相談)の活用は進んでいる。基幹病院などをはじめ各医療機関が連携し、小児科が潰れないように取り組んでいる。こうした考え方が、小児のかかりつけ医機能を強化する上で必要ではないか。
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■ 医療機関間の連携について
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 医療機関の連携をこれからさらに進めていかなければいけない。そのために、島委員がおっしゃったような連携の視点が必要である。今まで、診療情報提供といえば、患者さんを紹介して、「あとはよろしく」というイメージがあったと思う。
 しかし、これからは専門医とかかりつけ医の連携がさらに必要となる。例えば、糖尿病の場合には、通常治療はかかりつけ医が担い、大きな合併症や網膜症などを起こした場合には専門医と連携する。そのように、かかりつけ医と専門医が伴走しながら進んでいく機能が在宅でも非常に重要であると思う。
 そのため、診療情報提供料(Ⅲ)をもっと取りやすくして、かかりつけ医と専門医の伴走を皆さんが理解できるようにする必要がある。
 診療情報提供料(Ⅲ)の算定ができないケースとして、今回は生活習慣病の例が示されたが、がんの治療でも同じであるし、在宅でも同様であろうと感じている。今後、病診連携や病病連携をさらに進めるためにも、診療情報提供料(Ⅲ)の基準等を見直すことは非常に有効であると思う。
 このほか、生活習慣病管理、耳鼻咽喉科診療に関する論点については、他の診療側委員が述べた意見に賛同する。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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