費用対効果の調整値、「かなりのペナルティ」 ── 池端副会長、範囲の明確化を提案

協会の活動等 審議会 役員メッセージ

池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)_2021年10月15日の費用対効果評価部会

 製薬企業や医療機器メーカーが一定の基準を満たさない場合に費用対効果評価のルールで価格を最小値で調整するという提案について、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「かなりのペナルティ」との認識を示し、企業側の弁明が却下される範囲などを「ある程度、示したほうがいいのではないか」と提案した。

 厚生労働省は10月15日、中医協の費用対効果評価専門部会(部会長=飯塚敏晃・東大大学院経済学研究科教授)の第57回会合をオンライン形式で開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。

 厚労省は同日の部会に、「費用対効果評価制度の見直しに係る主な論点」を提示。効果が同等で費用が増加する場合について、「最も小さな価格調整係数を用いることとしてはどうか」とし、さらに分析期間の超過に関する見直しについても「最も小さな価格調整係数」とする方針を提案した。
.

妥当性を欠く場合の規定がない

 令和4年度の費用対効果評価制度の見直しに向けて、企業分析提出の遅れが課題の1つとなっている。

 厚労省は同部会に、「テリルジー」と「エンハーツ」の企業分析提出が遅れたケースを示し、企業側の説明に「一定の妥当性がある」と判断したことを紹介した。

 一方、「妥当性を欠く」とされた場合の価格調整における取扱いに係る規定がないとし、「価格調整に当たって、分析期間を超過した場合には、事前に企業に対して遅れた理由を確認した上で、その理由が妥当性を欠く場合については、最も小さな価格調整係数を用いることとしてはどうか」と提案した。
.

20_【費-1】費用対効果評価制度の見直しに関する検討(その2)_2021年10月15日の費用対効果部会

.

分析期間の超過が起きないように

 質疑で、支払側の松浦満晴委員(全日本海員組合組合長代行)は「分析期間を超過した場合に、企業に対して遅れた理由を事前に確認するという部分については異論はない」としながらも、「分析期間の超過が起きないようにすることが最も重要」とし、「分析前協議で、十分に検討をしてから分析に入っていただくことをお願いしたい」と求めた。

 厚労省保険局医療課医療技術評価推進室の中田勝己室長は「分析期間が超過した際に、そもそも超過しないための実効性のある分析前協議を進めるべきという点について、私ども事務局としてもしっかりと対応してまいりたい」と応じた。
.

理由の妥当性、示したほうがいい

 こうした議論を踏まえ、池端副会長は「分析前協議をしっかりやっていただく必要がある」とした上で、「理由の妥当性について、どういう理由であれば妥当であるかについても、ある程度、お示しいただいたほうが企業にとってもいいのではないか」と提案した。

 中田室長は「今後、実例を積み重ね、専門家の意見も伺いながら、そのようなものが取りまとめることができるのであれば、今後そういった方向の検討もしていく必要があるのではないかと考えている」と述べた。
.

企業側の予見性にも影響する

 公益を代表する立場の中村洋委員(慶應義塾大大学院経営管理研究科教授)は、専門組織で決定した分析枠組みが臨床試験や薬事審査の際の枠組みと大きく異なっていたケースを挙げ、「どうして異なったのかがなかなか理解できないと、企業側の予見性にも影響する」と指摘。「どのような場合に異なる可能性があるのかという情報があれば、企業にとっても予見性が高まり、対策が立てやすくなるのはないか」と述べた。

 その上で、中村委員は「このような(最も小さな価格調整係数という)水準で本当にいいのかどうか」と懸念し、「もしかしたら議論があるかもしれないので、念のために、1号側、あるいは2号側の先生方に確認を取っておいたほうがいいのではないのか」と提案した。

 池端副会長の発言要旨は以下のとおり。
.
2021年10月15日の費用対効果評価部会

 松浦委員からも指摘があった分析期間の超過に関する点について。この論点について私も賛同するが、「最も小さな価格調整係数」はかなりのペナルティになると思う。これがあまり起きないようすることが必要だと思う。そのため、松浦委員が述べたように、分析前協議をしっかりやっていただく必要がある。
 また、「その理由が妥当性を欠く場合」としているが、理由の妥当性について、どういう理由であれば妥当であるかについても、ある程度、お示しいただいたほうが企業にとってもいいのではないかと思う。
そこで、具体的に、こういう場合はやむを得ないということがあれば、何点か、お示しいただきたいと思う。もしなければ、それも検討していただければと思うが、いかがだろうか。

.
【厚労省保険局医療課医療技術評価推進室・中田勝己室長】
 分析期間を超過した場合の妥当な理由の範囲については、中医協総会に報告させていただいた実例を積み重ねているのが現状である。 
 今後、実例を積み重ね、専門家の意見も伺いながら、そのようなものが取りまとめることができるのであれば、そういった方向の検討もしていく必要があるのではないかと考えている。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

この記事を印刷する この記事を印刷する
.


« »