入院医療の最終報告案、「基本的に異論はない」 ── 入院分科会で井川常任理事

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01_2021年10月21日の入院分科会

 入院医療の最終報告案が示された厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の井川誠一郎常任理事は「中心静脈栄養等について、きっちりと把握していただき、嚥下リハビリを徹底すべきと示唆されている」と評価し、「基本的に異論はない」と了承した。

 厚労省は10月21日、中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織である「入院医療等の調査・評価分科会」の令和3年度第9回会合をオンライン形式で開催し、当会から井川常任理事が出席した。

 厚労省は同分科会に、令和3年度調査結果などを盛り込んだ「これまでの検討結果 とりまとめ案」を示し、大筋で了承された。

 議論を踏まえ、尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)は「若干、表現等を修正させていただき、中医協・診療報酬基本問題小委員会に報告したい」と伝えた上で、「毎回、長時間にわたり熱心なご議論をいただいた」と謝意を示した。
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02_尾形裕也分科会長_2021年10月21日の入院分科会
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われわれが反省すべき点もある

 最終報告案では、これまで議論のあった中心静脈栄養について井川常任理事の発言を反映。療養病棟で中心静脈栄養からの離脱に向けた取り組みがなされない要因について「療養病棟における人員、嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査が療養病棟では難しいこと、疾患別リハビリテーションと摂食機能療法の設定時間の違い等があるのではないか、との指摘があった」と記載した。

 その上で、「中心静脈栄養について、嚥下機能評価やリハビリテーションの実施をより促進させるなど、中心静脈栄養からの離脱を評価する視点の検討が必要ではないか、との指摘があった」としている。
 
 井川常任理事は「われわれ、療養病床を持つ医療機関が反省すべき点もあるので、このように進めていただければいいと思っている」と述べた。

 井川常任理事はこのほか、地域包括ケア病棟の救急実施について指摘したほか、調査結果に示された自由記載欄の取り扱いなどについて意見を述べた。

 井川常任理事の主な発言要旨は以下のとおり。
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03_2021年10月21日の入院分科会

■ 療養病棟入院基本料について
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 療養病床に関する記載に関して、基本的に異論はない。療養病床の中心静脈栄養等に関して、きっちりと把握していただいた上で、しかも嚥下に関するリハビリテーションを徹底していかなければいけないという示唆をされている。われわれ、療養病床を持つ医療機関が反省すべき点でもあるので、このように進めていただければいいと思っている。
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■ 地域包括ケア病棟について
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〇井川誠一郎常任理事
 16ページ目の下から2つ目に「地域包括ケア病棟入院料を届け出ている医療機関において、救急を実施していない医療機関が一定程度存在した」との記載がある。これは、別添資料では343ページのスライド(地域包括ケア病棟・回復期リハビリテーション病棟を持つ医療機関の救急の状況)で、令和2年度調査の施設票から得られたデータとなっている。 
 私の記憶では、令和2年度の調査票には、救急の実施の有無という項目はなかった。一方、「貴院における新型コロナウイルス感染症に起因する影響」に関する設問の中で、「令和2年4月から11月 1日までの間に一度でも、医療提供状況に変化があったか」という質問があり、その回答では、救急について「通常」「制限」「停止」「従来から実施なし」という4つの選択肢があった。今回の集計は、おそらく「従来から実施なし」の回答から取って、救急の実施を「なし」としたのではないかと考えているが、この認識は正しいだろうか?

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〇厚労省保険局医療課・金光一瑛課長補佐
 おっしゃるとおりである。あわせて、344ページ、345ページは明示的に救命救急センターや救急告示を問いとして立てさせていただいて集計している。
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〇井川常任理事
 そうすると、先ほど申し上げた設問は、AからD票全てにもともと存在した設問である。地域包括ケア病棟には、確かに3つの役割が求められているが、「救急」は実際、求められていない。当該病棟の自宅からの緊急入院はあるが、救急そのものは求められていないにもかかわらず、ここで「救急」というものを問われている。そこで、質問だが、地域包括ケア病棟にだけ、救急実施の有無を問われた理由は何かあるのだろうか?
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〇金光補佐
 「問われた」という意味が「求められた」という意味かと問われると、われわれとしては別に求めてはいない。3つの役割がある中で、今般の救急というところに着目をして集計をさせていただいて、その結果をお示しした。
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〇井川常任理事
 ということは、地域包括ケア病棟の役割として、救急の実施が3つの役割以外に必要だろうという観点からの設問と考えればよろしいだろうか?
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〇金光補佐
 そこは先生方のいろいろなご意見があろうかと思う。事務局として「こうです」ということはない。文脈だけ申し上げれば、3つの役割の中に在宅の患者さんの受け入れというところがある中で、広い意味でとらえれば「救急」というのもあると思う。現行、少なくとも3つの役割の中に「救急」という言葉は入っていないが、そういった広い意味での救急というのは、観点としては議論しうる、議論の対象となりうるとは考えている。
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〇井川常任理事
 その点も踏まえて、続けて質問させていただく。地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料について、最終とりまとめの18ページ上の4つのポツで、病床種別での比較結果が記載されている。
 まず、一番上のポツでは、平均在棟日数、退棟先、救急実施の有無の3点が羅列されており、他の3つのポツに対して非常に雑多な感が否めない。特に、「退棟先」というのは、2番目のポツの「入棟元」の比較という観点から言えば、そちらに合わせたほうが自然な感じがしている。これが1つ意見である。
 もう1つは、救急実施について。一般病棟では9割、療養では約4分の1という記載をされているが、先ほど申し上げた要件である自宅からの緊急入院数を比較するのであれば分かるのだが、療養病棟の救急告示に関して言うならば、これは地方自治体が認めるものである。ほとんどの自治体では現在、療養病床に救急告示を認めてくれない。そういう点から考えると、ここは非常に公平性を欠いた記載であるので、できれば削除していただきたい。いかがだろうか?

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〇金光補佐
 「公平性」というのが、どういった着眼点の「公平性」か、申し訳ないが、私はにわかに理解が及ばなかった。大変恐縮である。
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〇井川常任理事
 「公平性」とは、努力して取れるものと取れないものがあるということだ。努力せずに取っていないのであれば分かるが、療養病床の救急告示は、阻害因子があって取れない。救急指定を受けられないという観点から言うと、一般病床と療養病床を同じ土俵に並べるのはおかしいという意味での「公平性」である。ご理解いただけるだろうか。
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〇金光補佐
 先生がおっしゃっている意味は理解した。その意味では、今回、療養病床について、何か特段、非難をするとか、そういう趣旨での言及をしているつもりはない。説明の冒頭で申し上げたとおり、ファクトの部分と指摘の部分に切り分けながらご説明を差し上げたつもりである。そういった意味では、ファクトの部分として整理をしている。
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〇井川常任理事
 私は、療養病床の地域包括ケア病棟をなにがなんでも守りたいという気持ちはない。ただ、開業医等から依頼された緊急患者を受け入れて、しっかりとそのあとにリハビリをして地域に復帰させているという良質な医療を提供している療養病床があるので、そこの評価はやはり残していただきたいという気持ちがある。ご理解いただければありがたい。
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■ コロナの影響に関する自由記載欄の取扱いについて
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〇井川常任理事
 今までの議論は、調査結果から数字が出る部分に関してのものである。データを収集して、それを踏まえて議論してきた。
 4月28日の分科会で、令和3年度の調査票案が議題になった際に、私はポストコロナ患者の受入数を具体的に調べたほうがいいと述べた。その時、事務局は自由記載欄に書かせていただくようにするというお答えであった。その後、中医協の診療報酬基本問題小委員会でも同様の意見が出たと伺っている。
 10月1日の分科会の資料「入-3参考」の調査報告書には、今回の調査結果が全て出ている。自由記載欄の内容も示されている。これが全てと判断していいのであれば、A調査票では220件ぐらい、Bでは120件ぐらいの記載がある。そこには、私が求めた数字が具体的に書かれていたものは10%もなく、その数字を引っ張ってきて具体的にどういう影響を及ぼしたのかは分からないというのが実態ではある。
 ただ、このパブリックコメントのようなトータル300、400近くあるコメントに関するコメントがない。今後、どうされるのだろうか。書く側からすると、一生懸命に考えて書いた結果、何の反映もされないとなると、書き損と言うか、せっかくこれだけ頑張って書いたのに、ということになりかねない。その辺はどう考えておられるのか。お教えいただきたい。

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〇金光補佐
 自由記載欄については、10月1日の際に、速報とあわせて、この場にお出しをさせていただいた。私のほうからも、ポストコロナの部分に関しては、調査票の設計の際に、ご指摘をいただいていたという文脈も含めて、ご紹介を差し上げたつもりである。自由記載全てを、こういった報告書にまとめるのは、基本的には、われわれの人的リソースも含めて不可能だと思っている。少なくとも各種の検討において、われわれも全て目を通しているし、そういった有形、無形の反映というところで、お含みおきをいただけるとありがたいと思う。 
 それ以上のご示唆があるようであれば、それは、この報告書の取りまとめの中で、反映していくことをご検討いただくということかとも思っているところである。

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〇井川常任理事
 通常、アンケート調査をしたときは、ある程度、島づくりなどをして、同じような系統の答えを合わせていって、「こういう答えがありましたよ」というかたちで示されるのが普通だろうと思う。そういうものが今回は全くなかったので、意見を述べさせていただいた。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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