基金の交付にメッセージを ── 第4回医療介護総合確保促進会議 出席のご報告

会長メッセージ 審議会

第4回医療介護総合確保促進会議

 平成27年3月6日、「第4回医療介護総合確保促進会議」が開催され、武久洋三会長が構成員として出席いたしました。今回の開催では、「地域医療介護総合確保基金」について、平成26年度の交付状況と平成27年度の予算案が示されました。
 
 「地域医療介護総合確保基金」は消費税増収分を財源としているため、この基金を活用して実施する事業の適正性が確保されなければなりません。そのため、都道府県は事後評価を実施し、その結果を国が検証するというPDCAサイクルが円滑に機能していく必要があります。厚生労働省は、都道府県が事後評価を実施する際の視点として、①事後評価のプロセス、②目標の達成状況、③事業の実施状況──の3つを提示しました。
 
 武久洋三会長は以下の意見を述べて、「地域医療介護総合確保基金」の交付にあたっては、国が主体性をもってビジョンを示していくべきであることを強く主張しています。

 
◇武久洋三会長の発言

武久会長20150306*先日、高校野球で有名な徳島県の池田町を久しぶりに訪れたが、その寂れようを目の当たりにして非常に衝撃を受けた。医療や介護のサービスを受けることができず、役場や警察、そして商店が立ち並んでいない地域では人はおよそ生活することはできない。安倍内閣は「地方創生」を目指していながら、人が住めないような地域がますます拡がっている。これはどういう理由からか。たしかにアベノミクスは、成長戦略として株式会社の医療・介護マーケットへの新規参入を推し進めてはいる。しかし、株式会社は営利法人であるため、利益を見込むことができない地域に参入するはずはない。このこと自体は株式会社を責めるべきことではなく、株主の利益を考えればいわば当然のことである。ニーズなきところにサプライはない。日本の人口がますます減少する中で、アベノミクスによって大企業ばかりが潤っていくと、今後、介護分野を志す者が増えていくとはとても思えない。したがって、基金の対象事業として医療従事者の確保が挙げられているが、自ずと限界がある。EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士候補者受入れも、現在のところ焼石に水のような成果しか上げられていない。これらを踏まえると、我々が今議論しているこの基金は、過疎地域における医療・介護の充実にこそ有効に活用されるべきであると考える。そのためには、単に交付額を配分していくのではなく、基金の交付にメッセージをもたせていく必要があろう。株式会社に基金による支援を提案し、過疎地域にヘルパーステーションの展開を促すというのも方策の一つである。いずれにしても、国が主体的に方向性を示していかなければ、基金の取り組みは単発的なものになりかねない。

*地方都市では、医療および介護のサプライの方法も問題となる。徳島県の二次医療圏ごとの人口は、東部は約50万人であるが、南部は約15万人、西部は約8万人となっている。このような人口の偏りを残したままで、医療および介護を総合的に確保していくことが果たしてできるだろうか。医療介護総合確保区域の設定にあたっては、安易に二次医療圏を踏襲するのではなく、区域ごとの人口をできるだけ均一化し、大都市へのアクセス状況などを勘案しなければ、「地域医療介護総合確保」と「地方創生」とが連動していくのはなかなか難しい。

*7対1病棟の要件厳格化や今般の介護報酬引き下げ、さらには病床機能報告制度による病床数の規制により、とくに過疎地域の病院経営者はかなり疲弊している。たしかに、人口が激減していくこの日本で、社会保障費を毎年1兆円ずつ増加させていくのが現実的でないことはよくわかる。他産業と比較しても、医療・介護分野の効率化はたしかに遅れている面がある。しかし、医療・介護分野の効率化は、地域が崩壊しない範囲で、すなわち、住民への医療・介護サービスが決して損なわれることがない範囲で図っていかなければならない。医療・介護のサービスを受けることができない地域では、人は暮らすことはできない。一方で「地方創生」を謳いながら、他方で「病床規制」を進めるというのは大きな矛盾である。国の政策の軸足がいったいどちらに置かれているのか。この矛盾の解決の糸口を見出すことを、担当課の手腕には大いに期待したい。
 
 次回の地域医療介護総合確保促進会議は、7月以降、平成27年度基金の交付状況が取りまとめられた頃に開催され、平成26年度基金事業の報告・検証が行われる予定です。

 〇 第4回地域医療介護総合確保促進会議の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
 ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000076558.html
 

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