「要介護の前段階での予防を」── 武久会長、6月1日の介護分科会で

日本慢性期医療協会の武久洋三会長は6月1日、令和3年度の介護報酬改定について議論した厚生労働省の会議で、「できるだけ要介護にならないように、要介護の前段階での予防をよく考えていただきたい」と述べた。
※ 資料は → https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11600.html
説明は → http://chuikyo.news/20200601-kaigobunkakai/
厚労省は同日、社会保障審議会(社保審)の介護給付費分科会(分科会長=田中滋・埼玉県立大学理事長)の第177回会合をオンライン形式で開催し、YouTubeでライブ配信した。
令和3年度改定に向けて、今回の会合では「地域包括ケアシステムの推進」について議論。厚労省が示した論点を踏まえ、各委員が意見を述べた。
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要介護者を減らそうという視点がちょっと少ない
質疑で武久会長は、新型コロナウイルスへの対応状況などに触れながら、予防の重要性を指摘。「いろんな病気になっても、できるだけ要介護にならないような医療、治療を行うことが重要」との考えを示した上で、「要介護者を減らそうという視点がちょっと少ない。できるだけ要介護にならないための予防をよく考えていただきたい」と述べた。
同日の分科会における武久会長の発言要旨は以下のとおり。
【武久会長の発言要旨】
新型コロナウイルス感染症が流行している。80歳以上では20%以上がお亡くなりになると言われるが、逆に言えば80%の人は助かる。しかし、1カ月以上も入院していると、ほとんどが要介護者になるのではないか。
保険というものは、保険事故が起こったときに保険が使われる。火災保険でも自動車保険でも、保険事故が起こらないように、みんなが必死になって取り組む。
介護保険制度を議論する上では、まず保険事故を起こさないようにするにはどうしたらいいかという視点での議論も必要かと思う。
なぜ、要介護になるのか。やはり病気になって病院に入院した結果として要介護者になる人が非常に多い。
今回、新型コロナウイルスが流行した。高齢者の患者さんが非常に多いので、また何千人もの要介護者が増えるかもしれない。
新型コロナウイルスへの対応では、やはり命を助けることが一番大事であるから、寝たきりになって要介護者になることを防ぐような余裕が現在の医療現場にはない。
しかし、全般的には、いろんな病気になっても、できるだけ要介護にならないような医療、治療を行うということが重要である。
介護保険制度について、今までずっと行われてきたことを振り返ると、要介護者を減らそうという視点、介護保険に入ってくる人をできるだけ減らそうという視点がちょっと少ないように思う。
今後、介護保険給付がどんどん膨らんでいって、どうしようもなくなることがないように、できるだけ要介護にならないために、要介護の前段階での予防ということをよく考えていただきたいと思う。
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(取材・執筆=新井裕充)
2020年6月1日