「自立歩行を至上目的にすべきでない」── 武久会長、10月8日の会見で

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平成27年10月8日の記者会見

 「自立歩行を至上目的にすべきでない。嚥下障害と膀胱直腸障害に対するリハビリを優先すべきである」──。日本慢性期医療協会の武久洋三会長は10月8日の定例会見でこのように述べ、リハビリ提供体制の見直しを改めて訴えました。

 会見で武久会長は、心身機能訓練や筋力トレーニングを重視している現状を問題視。患者の意向として、「排泄などの動作ができるようになりたい」との回答が約6割あるとのデータなどを示し、「在宅復帰にとって最大の阻害因子は自分で食べられないこと、一人でトイレに行けないことである。こうした機能の回復をまず目指すべきである」と述べました。

 そのうえで武久会長は、嚥下障害と膀胱直腸障害に対するリハビリを重点的に実施した結果、大幅な改善が見られたデータを提示。「こんなに良くなるなら、なぜ実施しないのか。尿意や便意があろうとなかろうと、動けなくなったら、おむつをしてしまう習慣をストップしたらどうか」と指摘し、「これからのリハビリ提供体制予測」を示しました。

 この日の会見には、3人の役員が同席。厚生労働省の入院医療等の調査・評価分科会や療養病床のあり方等に関する検討会で委員を務める池端幸彦副会長は、医療療養病床25対1や介護療養型医療施設の今後の動向に触れながら、現在の病院を施設化していく「SNW」(Skilled Nursing Ward:スキルドナーシングウォード)という考え方を改めて紹介しました。

※ SNWについては、7月16日の記者会見(http://manseiki.net/?p=3346)をご参照ください。

 また、全国に先駆けて看護師特定行為の研修を開講したことについて、矢野諭常任理事が10月3日の開講式の模様を紹介。「慢性期医療の現場こそ、特定看護師にふさわしい。そういう看護師の養成が一番必要とされるという信念に基づいて行われる。全力をあげて取り組んでいく」と意欲を示しました。以下、会見の概要をお伝えします。
 

■ 看護師の特定行為研修の開講について

[武久会長] 
 はじめに、皆さんのお手元にお配りした看護師特定行為研修のテキストについてご紹介する。当協会は10月3日、看護師の特定行為研修の開講式を開催した。全国の指定研修機関の中で、研修機関が自らテキストを作成したのは日慢協だけではないかと思っている。オリジナルのテキストを作成したという話は、現時点ではまだ聞いていない。

 このテキストは全国の書店などで販売される予定で、取次店から1,000冊以上の要望がすでに来ている。本日、皆さんにこのテキストを贈呈したい。一読していただき、いろいろなご助言を頂ければ幸いである。全国で最も早く開講したので、厚生労働省のご指導を頂きながら適切に実施しなければならないと思っている。

 特定看護師は高度急性期の病院で実力を発揮することはもちろんだが、むしろ慢性期の病院で活躍するだろうと期待している。特別養護老人ホームや老人保健施設、在宅医療など医師の関与が手薄な現場においてこそ、その実力を発揮できると考えている。そのようなコンセプトに基づいて、私たちは全国に先駆けて特定看護師の研修をスタートすることとなった。特定行為看護師の研修は、モデル事業の段階では高度急性期病院で行われてきたが、厚労省の看護課は慢性期医療に対する理解を示している。このため、当協会が率先して開講式を迎えた。

 また、日本長期急性期病床(LTAC)研究会の第3回研究大会が9月26日に大阪で開催されたので、そのプログラム集を皆さんのお手元にお配りしてある。LTAC研究会は平成25年4月に発足した。アメリカのロング・タイム・アキュート・ケア、すなわち亜急性期的な病棟運営を日本でも開始しようということで急性期医療や慢性期医療に携わる関係者が集まった。この研究会が、地域包括ケア病棟の誕生になったとも言われている。
 

■ 特定除外制度の見直しの影響等について
 
 10月1日に開催された中医協の「入院医療等の調査・評価分科会」の第9回会合の資料(抜粋)をお示しする。この分科会には、当協会の池端副会長が委員として出席している。同日の分科会では、平成27年度調査の結果が出た。

01_90日を超えて入院している患者の算定方法

 皆さんに配布した資料は平成27年度調査結果の概要を示した資料「入─1」の10ページ。「90日を超えて入院している患者の算定方法(病棟)」である。これによると、90日超患者の入院期間が平均在院日数にカウントされる「出来高算定」を選択したのは7対1病院で98%、10対1病院で81%にも上っている。平均在院日数にまだまだ余裕があるということを示している。

 前回改定では、特定除外制度の見直しが行われた。90日超の患者さんの入院期間は、場合によっては半年、1年にも及ぶことがある。そういう患者さんの入院料が、1週間や10日ほど入院している患者さんの入院料と全く同じであるということは論外である。そういうことで、特定除外制度の見直しや在宅復帰率の導入などの改善が図られた。しかし、調査結果によれば7対1病院の在宅復帰率は90%を超えている。すなわち、このような特定除外の患者さんが入院していても痛くもかゆくもなく、容易に75%の在宅復帰率をクリアできる。従って、90日超患者はほとんど減っていない。

 しかし、特定除外制度をいつまでも認めてよいのだろうか。急性期病棟とは名ばかりで、機能は慢性期病床となるだけではないか。1週間前に入院した患者さんの1日当たりの医療費について、1年も2年も入院している患者さんと7対1病棟の患者さんが同じというのはどうなのか。7対1病棟の入院料は取り過ぎではないか。

 なぜ、私がこのようなことを申し上げているのか。慢性期医療に関係するからである。こういうところで医療費を浪費すると、他病床などの評価に影響する。慢性期医療にとって、これは非常に大きな問題である。特定除外の患者さんの退院先がないと言われるが、それは病状による。「退院先がないのでいつまでも7対1に入院している」ということは理由にならない。

 特定除外患者さんの退院先がないので7対1等に入院するのは社会的入院なので、ある程度までは認めてもいい。しかし、半年も1年も入院している患者さんの入院料がいつまでも同じというのはおかしい。DPCのように、入院期間が長くなるにつれて下がっていくなら理解できるが、半年入院しても1年入院しても、ずっと7対1と同じ点数を取る。そんなことをするなら、その分は慢性期医療に回すべきである。
 

■ 地域包括ケア病棟の位置付けについて

 9月25日付のメディファクスに掲載された「病床機能報告前に医療現場が困惑  地域包括ケア病棟の位置付けで」という記事を紹介したい。それによると、「10月に実施される2025年度の病床機能報告を前に、地域包括ケア病棟の医療機能の在り方などをめぐって一部医療現場が困惑している現状があると日本病院会の堺常雄会長、全日本病院協会の西澤寛俊会長が24日、本紙の取材に対して懸念を示した」とある。

 地域包括ケア病棟を届け出ている病院は、自院の病棟を「急性期機能」として報告するのか、「回復期機能」として報告するのか迷っているということが書かれている。それはそうだろう。自己申告なので好きなように報告できる。しかし、診療報酬上は、①特定機能病院入院基本料、②一般病棟入院基本料、③療養病棟入院基本料──という3つの大きな柱がある。

02_機能に応じた病床の分類

 ①は、病床機能報告制度の「高度急性期機能」、③は「慢性期機能」である。これに対し、地域包括ケア病棟入院料は、真ん中の②に該当する。では、地域包括ケア病棟は「急性期」か「回復期」か。私は、「急性期」を2つに区分して考えるべきだと思っている。

 すなわち、広い範囲の地域から急性期の患者さんを受け入れる「広域急性期」と、中学校区ぐらいの狭い地域から受け入れる「地域急性期」があると考える。このうち、前者の「広域急性期」を担っているのであれば、その地域包括ケア病棟は「急性期」で届け出てもいい。問題は、「地域急性期」の場合である。

 私は、現在の4つの医療機能を「急性期」「地域包括期」「慢性期」──の3つに再編すべきと考えている。そうすると、地域包括ケア病棟が「広域急性期」を担っているなら「急性期」に、「地域急性期」であれば「地域包括期」となる。

03_3つに再編

04_3つに再編2

 以上、特定除外制度の見直しの影響や地域包括ケア病棟の位置付けなどについて述べた。急性期病院側からすれば、慢性期病院から言われる筋合いはないと思われそうだが、医療費を無駄に使うということは非常に大きな問題である。地域のために頑張っている現場に対する評価をもっと充実すべきであると考える。
 

■ 消費税率の引き上げに向けた対応について

 消費税率の引き上げに向けた対応について述べたい。消費税とは、消費する物品等にかかる税であるから、不動産に消費税がかかるのは大変おかしい。消費税導入時、当時の日本医師会は、非課税を主張するという大失敗を犯した。この事実を関係者は皆認めている。現在の医師会は横倉会長の下、硬軟を取り混ぜながらとても適切に運営されている。しかし、当時の医師会は判断を誤った。

 さらに病院団体。8%への引き上げ時、日慢協を除く病院団体は高額設備への非課税還付を拒否して、診療報酬への上乗せを選択するという過ちを犯した。役所は建築費について非課税還付を容認していた。にもかかわらず拒否した。

 なぜ、病院団体はこのような判断をしたのか。設備投資をした病院に還付すると、診療報酬の配分がその分だけ減ってしまうからである。設備投資をしない病院にとっては損になる。そういう姑息な理由で、非課税還付を拒否した。

 当時、建築費について非課税還付を容認するとの話があったので、日本病院団体協議会で話し合った。その際に、「建築費の非課税還付を認めたら、その分の診療報酬が上がらない」という意見が大勢を占めた。今となってはもう遅い。どうやら、消費税制度の枠内では非常に厳しいと思う。「原則課税だ」「非課税還付だ」という意見がいろいろ出ているが、すでに手遅れである。もはや病院建築に対する交付金に期待するしかない。

 病院の建て替えをすると、消費税を取られる。土地を購入して新築すれば、不動産税もかかってくる。さらに毎年、固定資産税を取られる。あまりにも取り過ぎではないか。病院の建物は確かに「不動産」ではあるが、地域住民に貢献している「社会的資源」である。その地域で許可されたベッドを運営しているのであって、開業している先生個人のものではない。

 このまま消費税率が8%から10%へ、さらに10%から20%に引き上げられれば、民間病院のリニューアルは不可能であり、医療資源は廃墟となる。日本の70%以上の医療を担う民間病院の廃退は、国民の健康な生活を奪う。病院建築に対して何らかの緊急財源出動をしなければ日本の医療は亡ぶ。それでもいいのか。
 

■ これからのリハビリ提供体制について

 これからのリハビリ提供体制について述べる。まず、今年5月20日に開催された社会保障審議会の介護給付費分科会で示された「リハビリテーションにおける医療と介護の連携に関する調査」の結果をご覧いただきたい。

05_調査結果

 資料の左上を見ると、「関節可動域訓練」(74.6%)、「筋力トレーニング」(86.7%)、「歩行訓練(屋内)」(71.1%)──が主に実施されている。しかし、その下の赤枠で囲んだ部分を見ていただきたい。「摂食・嚥下の訓練」は2.5%、「排泄・入浴などのADL訓練」は8.2%と、ほとんど実施されていない。

 一方、スライドの右側をご覧いただきたい。これは患者さんの要望。「排泄などの動作ができるようになりたい」(55.9%)、「家事ができるようになりたい」(36.3%)というニーズと合っていない。われわれは反省しなければいけない。

 在宅復帰にとって最大の阻害因子は、自分で食べられないこと、一人でトイレに行けないことである。一人で食事ができない、排泄ができないために在宅復帰が妨げられている。こうした機能の回復をまず目指すべきである。従って、第一に取り掛かるべきは、嚥下障害と膀胱直腸障害に対するリハビリである。自立歩行を至上目的にすべきではない。嚥下障害と膀胱直腸障害に対するリハビリを優先すべきであると訴えたい。

 このような考えに基づき、当院ではリハビリを一から見直すことにした。今までのリハビリの矛盾を明確化し、新しいリハビリの考え方が正しいかどうか、数々の実務的なリハビリを実施したところ、明らかなEBMが得られたのでご紹介する。

06_検証の概要

 驚くべき結果が出た。「摂食嚥下障害者の摂食状況レベル」や「改訂水飲みテスト」などの結果をご覧いただきたい。大幅に改善している。STの多単位介入によって、嚥下機能の指標である「FILS」「改訂水飲みテスト」「反復唾液飲みテスト」の有意な改善を認めた。嚥下機能だけではなく、FIMの食事項目も有意に向上している。

07_改善1

 何よりもびっくりしたのが、栄養摂取手段の変化である。約2ヵ月で、経口摂取が14%から83%になった。

08_改善2

 こんなに良くなるなら、なぜ実施していないのか。経管栄養は63%から14%に減少した。これほど改善するとは思わなかった。尿意や便意があろうとなかろうと、とにかく動けなくなったら、おむつをしてしまう習慣をストップしたらどうか。

 膀胱直腸障害の集中訓練も実施した。膀胱直腸障害へのリハビリを強化したことによって、入院時から退院時で、FIM利得はもちろん、トイレ動作、排尿コントロール、排便コントロールの項目が有意に向上しており、大きな成果が得られている。

09_改善3

 着用している下衣(パンツ)も変化している。初期にバルーンやオムツだった患者さんが、リハパンや布パンツに移行できている。入院時にバルーンとオムツで64%を占めていたが、退院時にオムツを着用している者は3%までに減少した。われわれと同じように普通にトイレに行けるようになった。

 脳卒中の後遺症ある患者さんを、なにがなんでも歩いて帰すということを目指すよりも、自分でごはんを食べて自分で排泄できることを優先してはどうかと思っている。本日、皆さんにお示しした資料はすべて、先ほど開催した当協会の理事会で承認された。

 なぜ、このようなことに今まで気づかなかったのか、大いに反省しているところである。全国のリハビリテーション専門病院は、リハビリ提供の在り方を見直すべきではないか。今後、リハビリ提供体制が大きく変わるだろう。良質なリハビリテーションがなければ日本のリハビリテーションは成り立たない。良質な慢性期医療がなければ日本の医療は成り立たない。

10_これからのリハ
 

■ 療養病床の在り方、「行き場がなくなる事態を避ける」
 
[池端副会長]
池端副会長20151008 厚生労働省の「療養病床の在り方等に関する検討会」の第3回会合が明日開催される。これまでの2回の議論を踏まえ、次回以降どのように臨むべきか。いま、2つの大きな問題に直面している。医療療養病床の25:1と介護療養型医療施設をどうしていくか。この点を中心にお話ししたい。

 まず、中央社会保険医療協議会(中医協)の「入院医療等の調査・評価分科会」の経過についてご紹介する。現在、同分科会ではすでに中間とりまとめが示されており、平成27年度調査の結果などを踏まえたうえで、最終的なとりまとめが来週の会合で行われる見通しとなっている。

 医療療養病棟入院基本料1は、医療区分2と3の患者さんが8割以上という制限があるが、同基本料2に関しては制限がない。調査結果では、「なんの制限もないのはいかがなものか」と考えられるようなデータが出ている。そのため、医療区分2と3の割合について、一定の基準が示される可能性が非常に高い。これは避けられないだろう。

 私どもは、恐らく5割〜6割ぐらいの基準が出るのではないかと予想している。現在の平均が6割弱なので、最低基準が6割になるとかなり厳しい状況にならざるを得ない。このため、なんとか5割という線を貫きたい。この辺りが今後のせめぎ合いになるのではないか。

 一方、医療療養の25:1は、平成30年度の同時改定の時には原則として廃止されることになっている。一部残す方法もあるだろうが、このまま進めば病棟としては廃止せざるを得ないので、25:1をなんらかの形で動かさなければならない。こうしたことへの危機感を強めている。療養病床を有する病院は、25:1を20:1に上げていくのか、あるいは別のジャンルの病棟にしていくのかを考えながら準備しておく必要がある。

 一方、療養病床の在り方に関する検討会でも議論が進んでいる。療養病床を有する全国の病院のうち、医療療養25:1の病院が3~4割あると聞く。当協会の会員病院は20:1が多いものの、全国的にはまだまだ25:1が少なくない状況の中で、今後どうしていくか。25:1がすべて20:1に上げられるかといえば、それは非常に難しいのではないか。また、医療区分1の患者さんの7割を在宅でみることができるかと言うと、これも非常に厳しいだろう。そこで、療養病床として病院内に残すことができないベッドをどう利用するかを考えなければいけない。

 介護療養型医療施設についてはすでに大きな方向性が出ている。前回の介護報酬改定で「機能強化型」のA・Bが出ているので、強化型のAとBを中心に残す。ただ、その「残し方」として、介護保険施設として残すのか、あるいは病院・病床として残すのか。すなわち、医療保険か介護保険か。現在の流れから言えば、介護保険のお財布を使うということにならざるを得ない。

 しかし、医療療養20:1にも行けない、介護療養の機能強化型にも行けない病床をどうしたらいいのか。すでに入院している患者さんがいる。すぐに在宅に帰すことはできない。そこで、当協会が提唱しているのが「SNW(Skilled Nursing Ward)」という考え方で、7月16日の記者会見で発表させていただいた。

 SNWは病院内に施設を置く、現在の病院を施設化していくという考え方。そのメリットは何か。施設化することによって、すでに入院している患者さんがそのまま移行することができる。施設なので、病院のストラクチャーの基準を低くできる。費用や利用料も安く抑えられる。保険からの持ち出しはなくなる。施設であるが病院内になるので、患者さんが急変した場合には、隣の病棟からすぐに医師が駆けつける。

 患者さんも安心できるし、施設側も病床を有効利用できる。在宅医療がまだ十分に進んでいない地域もある。そうした地域で、経過措置の廃止後に患者さんの行き場所がなくなる事態を避けることができる。国としても費用が安くなって持ち出しが減る。新たに何かつくらなければならないということもない。患者さん側にとっても施設側にとっても、厚労省側にとっても、あるいは急性期病院にとっても、WINーWINの関係が保てるのではないか。ここが1つの落とし所の提案ではないかということを明日の検討会でも述べたい。
 SNWについては、まだ細かい詰めが必要な面がある。法的にクリアしなければならない課題もある。療養病床の新たな選択肢について、検討会の方針を最終的に一本に絞ることはできないだろう。いくつかの案が出てきて、それを最終的に介護保険部会等に上げて、そこで最終決定がなされるだろうと思う。

 私たちは、SNWという新しいジャンルの提案をしているが、最も大切なことは患者さんに迷惑をかけずに、しかも既存の資源を有効利用するということである。厳しい財政状況の中で、医療費や介護費を増やさずに患者さんにとって最善となる方法を今後も検討していきたい。
 

■ 特定看護師の研修、「医師にも相当の覚悟が必要」
 
[矢野理事]
矢野理事20151008 当協会の学術研修委員会で副委員長を務めている。当協会では多くの研修を実施している。10月から委員会を再編し、学術的な観点から研修会のさらなる充実を図っていく。看護師の特定行為研修については、ワーキンググループを設置し、特に強化して臨んでいる。そうした中で、10月3日に、第1回看護師特定行為研修の開講式を実施した。すでに報道にあるように、看護師の特定行為研修は、当協会が全国で最初に開講した。
 
 看護師特定行為の研修指定機関については、全国で14機関が認定されている。ほとんどが大学病院や公的病院だが、その中で当協会も選ばれた。その責任と役割の重要性を非常に痛感している。研修内容はかなり高度で厳しいものになっている。受講生は51人。今後、私たちも身を引き締めて取り組んでいく。

 慢性期医療の現場こそ、特定看護師にふさわしい。そういう看護師の養成が一番必要とされるという信念に基づいて行う。看護師の研修について当協会では、5年前から「慢性期ICU看護研修」を実施してきた。看護師だけではなく、医師以外の多職種の研修にも力を注いでいる。これからも全力をあげて取り組んでいく次第である。

 看護師の特定行為を進めていくためには、やはり医師が中心になって、しっかりとした手順書を作る必要がある。どういう状態の患者さんに、どのような状況で実施できるのかを明確化しておかないと、患者さんの安心や信頼を得られない。研修を受講する看護師も真剣だが、われわれ指導者である医師にも相当の覚悟が必要である。
 

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