「要介護者をいかに減らすか」 ── 次期介護報酬改定に向け、武久会長

会長メッセージ 協会の活動等 審議会

武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)_20200316_介護給付費分科会

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長は3月16日、令和3年度の介護報酬改定に向けた議論がスタートした厚生労働省の会議で、「要介護者をなるべく減らすという視点に立って、今後どのように取り組んでいくべきか」と問題提起し、「要介護者があまり発生しないように、そして発生しても要介護度が軽くて済むようにするという視点で、この1年間、いろいろな意見を戦わせていただきたい」と述べた。

 厚労省は同日、社会保障審議会(社保審)介護給付費分科会(分科会長=田中滋・埼玉県立大学理事長)の第176回会合を開き、「令和3年度介護報酬改定に向けた今後の検討の進め方」を主な議題とした。

 会議冒頭、田中分科会長は「本日は令和3年度介護報酬改定に向けた議論のキックオフになる。今後の検討の進め方などについて議論いただきたい」と述べた。

 続いて厚労省老健局老人保健課の眞鍋馨課長が介護保険を取り巻く状況や、これまでの経緯などを説明した上で、「介護報酬改定における主な論点(案)」を示し、委員の意見を求めた。
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厚労省老健局_20200316_介護給付費分科会
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 質疑で、武久会長は医療保険と介護保険が「密接な関係にある」とし、急性期病院における介護人材不足や、そのために起きる身体拘束の問題などを指摘。「介護報酬で一定程度、リードしていって、要介護者を減らす方向に動いていくことも非常に重要であると考えている」と述べた。

【武久会長の発言要旨】
 4月からの診療報酬が決まったが、介護保険だから関係ないと言いながら、密接に関係があると思う。
 本日の介護給付費分科会が、来年4月からの介護報酬を決めるための実質的なスタートとなり、まず現状認識を共有する必要がある。その上で、どのように変えていくのかを検討すべきである。
 介護保険は参入者をなるべく減らして要介護者をできるだけ改善させることが介護保険財政の健全化につながると思う。誰でも要介護者になりたくてなるわけではない。要介護者をなるべく減らすという視点に立ち、今後どのように取り組んでいくべきか。
 現実問題として、要介護者は医療を経過してつくられる場合が多い。昨年、NHKの「クローズアップ現代+」で、急性期医療の現場における身体拘束の問題が取り上げられた。こうした身体拘束が起きる原因には、急性期医療における介護人材の不足がある。
 介護保険下では、処遇改善交付金がかなり前から出ているが、医療においては介護職員に対して、そのような交付金はない。
 そうしたことも含めて、医療の現場、特に急性期医療の現場において介護職員が非常に不足している。このことが結果的に、要介護のもとになる急性期病院での入院治療の問題点につながっている。
 高齢者が非常に増えている。しかし、少ない介護職員で対応している病院がある。病気になったときに、いかに介護のサポートをするかが非常に重要になってくるのではないか。
 本日の会合では、事業者の参入と、要介護者の改善をしていくという2つのポイントに対する発言が少なかったように思う。現状認識として、これらについても考えていかなければいけないと思う。
 現在、非常に困っていることはサービスの減少である。在宅の高齢者が増えている。核家族化が進み、施設も十分ではない中で、介護サービスがほとんどプラトーになって、むしろ減少しているサービスもある。
 そうした点を踏まえ、要介護状態を改善するような制度をつくっていくことも検討する必要がある。これは介護保険部会のマターかもしれないが、介護報酬のほうで一定程度、リードしていって、要介護者を減らす方向に動いていくことも非常に重要であると考えている。
 ぜひ、要介護者があまり発生しないように、そして発生しても要介護度が軽くて済むようにするという視点で、この1年間、いろいろな意見を戦わせていただきたい。
そのために、まず現状認識として、医療から来る要介護者をいかに少なくするかという視点を共有していただきたい。これは介護報酬改定に関する当分科会の議論においても非常に重要であると思う。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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