「第70回社会保障審議会介護保険部会」 出席のご報告
平成28年12月9日、「第70回社会保障審議会介護保険部会」が開催され、武久洋三会長が委員として出席いたしました。議題は、下記の通りです。
1.介護保険制度の見直しに関する意見(案)について
2.その他
本日の介護保険部会では、これまでの議論をもとにまとめられた「介護保険制度の見直しに関する意見」(案)が資料として提示され、委員に承認されました。意見の中では、「Ⅰ地域包括ケアシステムの深化・推進」「Ⅱ介護保険制度の持続可能性の確保」「Ⅲその他」の項目ごとに、これまでの意見がとりまとめられました。
Ⅰについては、医療・介護の連携の推進についてや、ケアマネジメントの推進について等、記載されました。Ⅱについては、福祉用具・住宅改修について平均価格を公表する等、利用者が適切な選択をできるような情報開示や価格設定を求めるようにとの指摘や、介護保険の費用負担について総報酬割の導入が議論され、賛否両論があった旨、記載されました。今後は部会長と事務局で調整の上、法改正が必要な事項については、関連法案を国会に提出していくことになります。
◇武久洋三会長の発言
要介護認定の審査においては、認知症の有無は大きな要素となっている。しかし要介護認定や介護サービスを受ける前の段階には、必ず医療がある。
介護保険と一番近いのは回復期、慢性期だと思うが、療養病床で用いられる医療区分には、認知症の判定項目がまったくない。介護保険部会の議題とずれているかもしれないが、医療・介護は明確に分けられるものではなく一人の患者がトータルで必要とするサービスである。療養病床から介護施設に来た患者について、介護側では認知症がどういった程度なのかを病院からきちんと伝えてもらっていないので、現場が大変困るというケースもある。
回復期病棟、地域包括ケア病棟にも認知症についての規定はない。平成28年度に一般病床で看護必要度に2項目追加されただけである。一人の患者が医療と介護を行ったり来たりしているわけだから、ぜひ医療側でも認知症についての評価を入れていただきたい。
資料5ページには、アウトカム指標、アウトプット指標を国で設定し、都道府県や市町村で自己評価することが適当、とある。介護保険制度の一番の問題は、要介護度が良くなっても喜ばない要介護者がいるということである。受けられるサービスが減るということで、損をしたように思ってしまうわけである。しかもそれは本人だけではなく、利用している事業所、居宅介護支援事業所も同様である。要介護度が低くなると提供できるサービスが減ってしまうためである。要介護4が要介護2になった途端に収入が減るということもある。経営側にとっても、利用者の要介護度が軽くなることはマイナスになってくる。介護保険とは、そもそも要介護状態の改善に資することが大前提である。このようなシステムは、抜本的な改革が必要だと思う。ぜひ、要介護度の改善に向かうインセンティブが働くシステムにしてもらいたい。
資料1ページ目には介護職員確保の今後の必要性について書かれている。日本は人口がどんどん減っていく。しかし、厚生労働省が出している保健医療2035年提言書等には、人口減少の対策についてほとんど記載がない。人口減少は、厚生労働省の共通の問題意識とされていないように思われる。人口が減ってくる分をITやロボットでカバーするといっても、人間が行うこととロボットが行う業務は違う。ロボットの導入によって、職員の数が特に大きく減るということはないだろう。
また、小規模多機能型居宅介護の設置を推進していくとある。小規模多機能は地域密着型サービスであり、市町村が認定して行うことになっている。デイサービス、デイケア等では定員を超過すると減算対象になるが、ある程度利用者がいた方が効率が良いのは事実である。小規模多機能については、調査では7%程度の利益率という結果だったが、実際に現場を見てみるととても7%もの利益率までにはいかない。新しく小規模多機能をつくるよりも、現状でデイケア、デイサービス、訪問介護、ショートステイを行っているような事業所を念頭に置いて進めた方が効率が良いのではないか。
要介護認定の制度とは非常に複雑で、将来的に障害者も含めていくとなると、仕組みそのものを変えていく必要があるだろう。今回の「介護保険制度の見直しに関する意見」を核として、平成30年にはぜひ大きな改革を期待したい。
○第70回介護保険部会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000145517.html
2016年12月10日