「第63回社会保障審議会介護保険部会」出席のご報告

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「第63回社会保障審議会介護保険部会」出席のご報告

 平成28年9月7日、「第63回社会保障審議会介護保険部会」が開催され、武久洋三会長が委員として出席いたしました。議題は、下記の通りです。

1.介護人材の確保(生産性向上・業務効率化等)
2.保険者の業務簡素化(要介護認定等)
3.認知症施策の推進

◇武久洋三会長の発言
武久会長20160907 2000年に介護保険制度が開始されて以来、16年にわたり介護認定審査会の委員をつとめてきたが、当時と今では現場はすっかり変わっている。制度が始まった当初は、コンピュータの一次判定と認定審査会による二次判定で3分の1以上変更が出ていたが、今では変更も10%程度にとどまっており、資料でも8割以上が変更なしと出ている。
 要介護度認定者数は15年間で約2.8倍に増えている。こうした中、審査開始から認定まで1ヶ月以上かかっているというのは、憂慮すべき事態ではないか。審査会で見ていても、審査中に亡くなってしまったので取り下げになるというケースが多々あり、疑問を感じざるを得ない。
 コンピュータによる一次判定は非常に精緻化してきているので、新規の介護認定については今までどおり一次判定、二次判定を両方用いた方法で良いと思うが、更新申請等については一次判定のみとし、不満があれば認定審査会に上げるという方法を考えてはどうだろうか。というのも、サービスの費用よりもまずは事務費を削るべきだと思われるからである。介護サービスの費用をいたずらに削ることで、要介護度が重くなるというのでは本末転倒である。
また、更新認定の有効期間の延長についてであるが、例えば要介護4の人は継続して要介護4~5であり、要介護1~2に下がることはほとんどない。事務職の負担軽減という観点から、更新認定有効期間の上限を12ヶ月から36ヶ月に延長することは賛成である。ただ、私も当てはまるのだが、介護認定審査会の5名の委員のうち2名は地区医師会の推薦枠である。そのため、医師会との兼ね合いも必要になってくるとは思うが、事務費の節減は介護サービスの費用の削減に先立って行うべき事項と考えている。36ヶ月の延長を認めるにあたっては、更新については一次判定での審査のみとし、異議のある場合は認定審査会の二次判定で判断するという新しい審査方法も、あわせて検討していただければと思う。

 介護認定審査にあたり医師による主治医意見書の作成が遅いために認定結果が遅れているというのは、私は主治医意見書を作成する立場であるが、委員の先生方のご指摘の通りだと理解している。主治医意見書が遅ければ何も始まらないというのは、皆さん同じ理解をお持ちだろう。
 介護人材の確保の議題の際にも話題になったが、この主治医意見書についてもICT活用への取り組みが必要になってくるだろう。一次判定の調査項目に主治医意見書の項目もプラスしたソフトを作っていただければと思う。もちろん、医師の考え方や意見は判定に必要なので書かれるべきであるが、ある程度まではコンピュータに打ち込む形で対応できれば、助かるのではないか。もちろん、我々医師としても、できるだけ早く意見書を書くよう心したい。

 資料3「認知症施策の推進」については、疾患は認知症のみと考えれば適切な資料であるが、現実には、認知症には身体合併症がセットになっている例が非常に多い。参考資料3には、認知症疾患医療センターは単科精神科病院等が認定医療機関になっているとあるが、身体合併症の患者は一般病床や療養病床に入院しているため、認知症について精神科の先生の治療を受けたくても、受けるのは難しいという状況である。
 認知症の症状が重くても、診療報酬上ではなかなか評価してもらえない。今回の改定で、一般病棟の算定基準の一つである看護必要度のB項目の中に、認知症を評価するような項目が少々入ったものの、実際は皆さんもご存知のように、夜中のナースステーションでは高齢の入院患者の方々が車椅子に乗って点滴をしているというように、現場ではかなり苦労をしている。
 高齢になるほど、身体合併症と認知症はどうしてもセットになってくる。身体合併症が良くなると認知症の症状が多少おさまるということもあるし、逆の場合も起こる。介護保険部会は老健局の主導だが、ぜひ医療・介護で連携し、今後600万から800万、1000万にものぼるであろう認知症患者の対応について本腰を入れて取り組まなくては非常に厳しいだろうということを申し上げたい。

○第63回社会保障審議会介護保険部会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
 ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000136021.html
 

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