第58回社会保障審議会介護保険部会 出席のご報告

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第58回社会保障審議会介護保険部会 出席のご報告

 平成28年5月25日、第58回社会保障審議会介護保険部会が開催され、武久洋三会長が委員として出席いたしました。議題は、下記の通りです。
 
 1.地域支援事業・介護予防の推進
 2.その他
 

◇武久洋三会長の発言
 資料3「認知症施策の推進」に挙げられている通り、認知症については、市町村のチーム設置や研修会の開催、人材の養成等、多角的な観点から支える仕組みが作られている。しかし2025年には、認知症患者は700万人にまで増加するとされている。様々な施策を行ってはいても、患者の数そのものを抑えるというのは中々難しい。患者数は、横ばいの状態からできるだけ変動させないのが理想だろう。近い将来、おそらく国民の10人に1人が認知症になる時代がくる。いずれはがん等と同様、認知症も国をあげて取り組むべき問題になってくるだろう。

 そのように考えたとき、認知症とははたして何科で診療するのかという問題につきあたる。日本には、認知症科という診療科はない。印象としては精神科の医師による対応が多いように思うが、高齢の認知症患者は何らかの身体合併症をかかえているケースが多い。私としては、認知症患者は総合診療医が診るのが適切だと思っている。精神科の医師の多くは、精神科病院に勤務している。総合病院でも、精神科を標榜していれば別だが、科自体がなければ精神科の医師は院内に一人もいない。だが総合病院にも、認知症を併発している入院患者はいくらでもおり、BPSDの対応に困っている現場は多い。そう考えると、精神科の医師は普通の病院に常勤で勤めてもいいということになってくる。

 精神科病院と総合診療医的な内科の慢性期病院の両方に携わってきた経験から申し上げると、精神科には認知症の治療のための病棟はあるものの、認知症の患者が一度入院してしまうと、退院する人は少なかった。内科系の病院だと、投薬や作業療法、臨床心理士による対応等を行って、退院していくことが多い。つまり、認知症は精神科病棟ではなくても治療できるということである。認知症の治療については、今後は精神科による対応に重点を置いた政策を見直し、総合診療医が診療しやすいような環境を整えていく方が、現実的ではないか。私の病院でも、精神科に入っている患者の半分は認知症である。

 今後、人口はどんどん減ってくるし、病床も減っていく。統合失調症などどうしても長く入院することになりがちな患者もいるが、最近は薬の進歩により、初期段階の治療についてはかなりの改善が見られるようになってきている。私から提案したいのは、精神科病棟を削減するのであれば、削減分を慢性期病棟に転換できるようにしていただき、転換後は内科的な診療や、認知症の診療ができるようにしてはどうかということである。そうすれば、精神科よりも気軽に受診しやすい、認知症の専門病棟ができる。精神科病棟からの転換だから、精神科の医師も常駐している。家族や患者本人は、精神科に行くということにたいして拒否反応を示す場合が多い。こうした取り組みをしなければ、精神科病床の削減も、認知症を病院でしっかり診て在宅に帰すという流れも、なかなか進まないのではないか。

 何より一番の問題は、認知症の患者の権利が守られているかということである。もし、認知症患者はどこかに閉じ込めて厄介払いしてしまえばいいというような考え方をする家族や地域があるとしたら、文化国家としての恥である。認知症の患者は、地域の中でも安心して住めなくてはならない。認知症施策は、現状でもすでにきめ細かく、評価できるものであると認識しているが、取り組みの大前提となるような部分についても今一度検討していただければと思っている。
 

 ○第58回社会保障審議会介護保険部会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
 ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000125474.html
 

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