「第1回在宅医療及び医療・介護連携に関するWG」 出席のご報告

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「第1回在宅医療及び医療・介護連携に関するWG」 出席のご報告

 平成28年8月3日、厚生労働省医政局主管の「第1回在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ(WG)」が開催され、池端幸彦副会長が構成員として出席いたしました。国は現在、平成30年度よりスタートする第7次医療計画に向けて医療計画作成指針等の見直しを検討しており、本WGは、在宅医療のあり方に特化した議論をするために設けられました。

 今回用意された議事は、(1)在宅医療と介護の整合性について、(2)在宅医療にかかる医療連携体制について、(3)在宅医療の充実のための施策について、の3点。池端幸彦副会長は、施設系の医療・介護サービスを代表する立場、そして、地域の在宅医療に日夜携わる医師の立場から、以下の意見を述べています。

◇池端幸彦副会長の発言

① 在宅医療と介護保険施設は相互に補完する関係にあることから、介護保険3施設のうち介護療養型医療施設については、「療養病床のあり方検討会」で示された「新類型」を踏まえた議論をする必要があるのではないか。なぜなら、「新類型」における「医療内包型」は、介護療養型医療施設の転換先を想定したものと考えられるからである。もし「新類型」が設置されれば、医療区分1の患者の大部分が「新類型」に移っていくことが予想され、地域医療構想において「医療区分1の患者の70%を在宅医療等で対応する患者数として見込むこと」とする需要の推計が大きく変動することになろう。慢性期機能及び在宅医療等の需要の将来推計にあたって、「新類型」を含めて考えていくのかどうか。この点を明確にしていただきたい。

池端副会長20160803② 地域包括ケアシステムの中で、特別養護老人ホームは「住まい」であるとの認識が一般的になってきており、「住まい」であれば当然、看取りまでを見とおしたケアが求められることになるであろう。しかし、「保険医が、配置医師でない場合については、施設に入所している患者に対してみだりに診療を行ってはならない」との厚生労働省通知があり、患者が末期の悪性腫瘍であるなどごく限られた場合にしか訪問診療が認められておらず、嘱託医に負担が集中することになることから、特別養護老人ホームにおける看取りはあまり進んでいないというのが現状である。

 今後、特別養護老人ホームを「住まい」の一つとして位置付けていくのであれば、患者が特別養護老人ホームに入所する前に外来診療や訪問診療の際にかかわっていた主治医やかかりつけ医が、患者が特別養護老人ホームに入所した後も引き続きかかわることができるようにする必要があるのではないだろうか。嘱託医が地域の主治医やかかりつけ医と連携して患者を診ることができるようになれば、特別養護老人ホームは「住まい」としてより一層定着していくと思われる。

③ 地域医療介護総合確保基金については、角野文彦構成員(滋賀県健康医療福祉部次長)も述べられていたように、「病床の機能分化・連携に関する事業」ばかりが重視されているきらいがある。私も福井県医師会の副会長として基金にかかわっているが、官民格差の解消もあいまってか、民間病院の回復期病棟への転換を促すような億単位の事業があっさり認められ、在宅医療や訪問看護、人材養成に関する事業はすべてカットされたということがあった。福井県や福井県医師会の担当者が、一体どのようにして在宅医療を進めていけばよいのか、と頭を悩ませていたので、私からも改善をお願いしたい。

④ 在宅医療を推進していくにあたっては、書類を簡素化していくことも必要ではないか。当院は機能強化型在宅療養支援病院だが、作成しなければならない書類の数が非常に多く、事務量が膨大なものとなっている。訪問看護、薬剤指導等の各種契約書、緊急時には訪問看護指示書や緊急特別指示書、点滴指示書なども作成しなければならない。とてもではないがやりきれない、という先生方がいてもまったく不思議ではない。患者家族からは、一体何度ハンコを押せばよいのか、という声をよく耳にする。例えば、医療・介護連携についてサービス担当者会議である程度調整した後は、包括的な書類で済ませるなどの工夫が必要であろう。是非ともご検討いただきたい。

⑤ 在宅医療における医療連携体制をより実効的なものとするため、サービスの実績に注目していくということが言われているが、何をもって「実績」と捉えていくのか。都道府県の医療計画に記載することが求められる指標には、ストラクチャー評価、プロセス評価、アウトカム評価があり、実質的な評価はアウトカム評価になるのだと思うが、私は、在宅医療のアウトカムが「在宅死亡者数」だけで評価されている現状に強い違和感を覚えている。在宅医療の実際の現場では、継続して在宅でかかわってきた患者が、ターミナルに非常に近い時期にたまたま緊急入院し、そのまま病院で亡くなるというケースも多く見られる。このようなケースも立派な在宅医療なのではないか。患者家族も不安を抱いている中で、病院での治療が必要と判断した結果、在宅医療とは認められなくなるというのでは、評価としていかがなものか。このような評価では、診療所の先生方も在宅医療を躊躇してしまう。在宅死亡患者数がゼロだから在宅医療の実績もゼロだという考え方はあまりに短絡的なので、現場での取り組みを実績としてきちんと捉えることができる感覚が求められる。

⑥ 「在宅医療・介護連携推進事業」が介護保険法の地域支援事業に位置付けられ、平成30年4月までにすべての市区町村で実施することとされたが、都道府県は市区町村をどのように支援していけばよいのかということが課題となってくる。厚生労働省の中間報告によると、当院のある福井県は、「在宅医療・介護連携推進事業」の着手率が日本一高いということであった。その中で、他の都道府県でも少し参考にしていただけそうな取り組みの一つとして、福井県と福井県医師会が協力してとりまとめた「退院支援ルール」の事業があるので簡単にご紹介したい。「退院支援ルール」とは、医療と介護の関係者が連携して患者の在宅移行を支援する情報共有のためのルールである。原則として、要介護認定を受け介護支援専門員(ケアマネジャー)が既に決まっている入院患者について、病院側と居宅支援事業所側の双方に共通の連絡シート等を使用して可能な限り早期に情報提供のやり取りを行うことを全県下で申し合わせ、この4月から運用を開始した。まだ十分な検証はできていないが、病院の主治医とケアマネジャーとの連携が早い段階からかなりスムーズになっているとの評判である。現在、アンケート調査等を実施予定なので、また必要があればご報告させていただく。

⑦ 在宅医療を推進する施策というと、サービス提供者側に向けたものばかりを考えがちであるが、実は、市民・住民へのサービスの受け手側に向けた啓発活動がとても大切である。住み慣れた生活の場で自分らしく暮らしたいという地域住民の強い思いが診療所の医師の意欲を掻き立て、病院はその取り組みをサポートするという流れができれば、在宅医療はどんどん進んでいく。さらにこの流れを推し進めていくには、急性期病院の先生方の理解を促していくということも忘れてはならない。サービス担当者会議に参加すると、在宅で対応できる医療の範囲を狭くお考えになられている基幹病院の先生方もまだまだ多い。しかし、私の在宅の患者には、人工呼吸器の管理が必要な患者が数名おり、その中には小児の患者もいる。実感としては、小児の患者を在宅で診ることができるのであれば、在宅で対応できない高齢者はいないと言える。要は、在宅医療に取り組むか取り組まないかの問題であって、提供側と受け手側の双方に一定の覚悟があれば、無理なことは絶対にないと感じている。

 他の構成員からは、「訪問診療など在宅医療サービスの需要を考えていくためには、介護保険3施設だけでなく、各都道府県におけるサービス付き高齢者向け住宅の整備状況を把握する必要がある」(鈴木邦彦構成員・日本医師会常任理事)、「医療計画に記載することが求められる在宅医療関係の指標は、①退院支援、②日常の療養支援、③急変時の対応、④看取り、の4つの医療機能に基づいて設定されており、そのすべてにケアマネジャーもかかわっている。ケアマネジャーの活用が指標の充実につながっていくよう努めたい」(中林弘明構成員・日本介護支援専門員協会副会長)、「在宅医療と医療・介護連携を議論するにあたっては、訪問看護の提供体制のあり方をあわせて考えていくべきである。また、在宅医療というと高齢者医療の印象が強いが、訪問看護ステーションでは子どもの在宅医療なども増えてきており、大事な視点である」(斉藤訓子構成員・日本看護協会常任理事)などの意見や指摘がありました。

 次回の在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループは、9月上旬に開催される予定です。

○第1回在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループの資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000132194.html
 

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