今後どうなる? 慢性期リハ、在宅リハ
重い病気で入院、手術して一命を取り留めたとしても、運動機能などが回復しなければ寝たきりになってしまう場合もあるので、リハビリテーションが重要になってきます。特に、慢性期リハ、在宅でのリハが問題になっています。
全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会の会長を務める石川誠氏によると、今年7月に札幌市内で開かれた「第19回日本慢性期医療学会」のシンポジウム「慢性期リハビリテーション~現状と展望~」で、医療・福祉・介護界に慢性期リハの重要性をアピールしていくことが確認されました。
また、医療法人社団・和風会理事長で、日本慢性期医療協会のリハビリテーション委員会委員長を務める橋本康子氏は、「回復期リハ病棟へ入院しても適切かつ十分なリハが提供されていない場合がある」と指摘します。その上で、「回復期リハ適応外患者のリハは十分に行われていない。そして、回復期リハ退院後の継続したリハが不十分である」と言います。
石川、橋本両氏がシンポジウムを振り返り、JMC77号に寄稿した「慢性期リハビリテーション~現状と展望~」をご紹介します。
総括 ─ 在宅リハの充実が必須に ─ 石川誠氏
第19回日本慢性期医療学会札幌大会のリハビリテーションのシンポジウムでは、千里リハビリテーション病院の橋本康子さん、札幌西円山病院の横串算敏さん、定山渓病院の原田拓哉さんの3人の講演が行われた。座長は私石川が担当した。
橋本さんは、回復期リハ病棟は現在最も集中的にリハが実施できる病棟であり、単に回復期リハの対象患者だけを選択せず、たとえ期限を超えた慢性期の患者であっても、改善する可能性のある患者は積極的に受け入れるべきと症例をあげて主張した。
横串さんは、慢性期リハ(維持期リハ)の成果とは何かが明確になっていないことを問題点とし、リハを実施すれば機能やADLの低下を最小限に抑えることができる点を強調、慢性期リハの価値を社会に示すべきと主張された。
原田さんは、療養病床であっても豊富にリハ専門職を配置することで、すべての患者に1日2単以上の個別リハを提供し、さらに報酬的にはサービスである集団リハを活用するなど、実際の経験からその成果を報告した。
いずれも、実践に裏付けられた説得力ある講演であった。共通している点は、療養病床といえども、終身入院生活を送ることに否定的であり、それには在宅リハの充実が必須であることを主張するものであった。
フロアも交えたディスカッションも盛り上がり、慢性期リハにおいて入院によるリハも重要だが、それ以上に在宅リハを充実することの重要性が共通認識された。
通所リハでは、リハ専門職の配置数をより評価すべき、個別リハだけでなく集団リハも評価すべき、訪問リハの提供に前向きであるべきなど、長期入院によるリハより在宅リハに関するディスカッションが主体であった。
療養病床を有する病院で、リハの充実に力を入れている先駆的な病院は、いずれも回復期リハ病棟を有しており、通所リハや訪問リハにも積極的であり、今後は、回復期リハより在宅維持期リハを確立することが重要だと意見が一致した。
それには、慢性期リハの価値・成果を立証し、臨床指標を確立することが必要との共通意見が出され、慢性期医療協会としては、札幌西円山病院の横串さんを中心に特別プロジェクトチームをつくり、医療・福祉・介護界に慢性期リハの重要性をアピールしようと確認された。
2011年10月1日