平成25年度第10回入院医療等の調査・評価分科会 報告

会長メッセージ 審議会

平成25年度第10回入院医療等の調査・評価分科会 報告

 平成25年10月10日に平成25年度第10回入院医療等の調査・評価分科会が開催され、武久洋三会長が委員として出席されました。今回の分科会では、8月に報告された中間とりまとめに平成25年度調査に関する件を追加した最終の取りまとめ(案)についての審議が行われました。
 
 まず、13:1,15:1の特定除外制度の見直しについて、以下のような議論が展開されました。
 
[石川広己委員(千葉県勤労者医療協会理事長・日本医師会常任理事)]
 90日を超えて入院している患者数は減少し、ほぼすべての特定除外項目でみても減少している、となっているが、減少したことをよいことというように無理に持っていこうとしているのではないか。死亡退院が6~7割を占めていることを見れば、終末期の患者が多いと思われる。在宅に退院することで適切な医療が提供されず、その後、死亡に結び付くことはなかったのだろうか。「方向性」として、特定除外制度の見直しは大きな問題はないとされているが、退棟の理由を明らかにする調査を実施してほしい。
 
[厚生労働省医療課 一戸補佐(事務局)]
 死亡退院が多いということについて、13:1、15:1は急性期と言われているのであるから、その病床で多くの患者を看取ることがもとめられているのかがまず疑問である。特定除外を見直しても、出来高算定を選択している病院が約7割を占めていることを見れば、平均在院日数をクリアすることができる病院には、療養病床に転換するインセンティブが働かないのではないだろうか。
 
[武久会長]
 急性期でどういう患者を診るべきなのか、という視点から機能分化が進められている。死亡退院が多いということは、療養病床の役割を13:1、15:1でみているともいえる。特定除外を見直しても、療養病床への転換が約3割しかない理由として、未だ4.3㎡の基準しか満たせないような療養環境のため、療養病床に転換できないとも読み取れるのではないか。
 
[神野正博委員(全日本病院協会副会長、社会医療法人財団董仙会理事長)]
 看取りは、医師が一所懸命手を尽くしてもどうしようもなくお亡くなりになる患者、あるいは高齢により寿命が尽きて亡くなられる患者など、一概には括れない。療養病床が多い地域であれば、役割分担もできるかもしれないが、地域差や、家族の希望など、いろいろな要素が絡まってくる。
 
[嶋森好子委員(東京都看護協会会長)]
 13:1と15:1の特定除外の見直しは、概ね問題がないと思う。このまま継続していくことが妥当である。今後も調査を実施して、経過をみていけばよいのではないか。
 
[石川委員]
 「方向性」の箇所で、大きな問題がない、という文言は適当なのか。わからない、と書くのが正しい書き方ではないか。死亡退院の7割がどういうプロセスであったのかについては調査不足であり、検討を続けるべきではないか。
 
[厚生労働省医療課 宇都宮課長(事務局)]
 日本医師会と四病院団体協議会で実施された特定除外に該当する患者の調査結果の中に、自院で急性増悪した場合の受け入れ先についての結果がある。これをみれば、13:1、15:1で急性増悪した患者の4分の1から5分の1しか自院で診ておらず連携先に送っている。つまり、不安定な状態ではない患者を90日にわたって診ているのではないか。とするならば、死亡退院の患者も療養病床に転院してもよいレベルの患者が多いということではないか。
 
[神野委員]
 13:1や15:1には中小病院が多く、自院では対応できない病態もあることから、急性増悪した患者を移しているのではないか。
 
[宇都宮課長]
 急性増悪した患者を転院させているのであれば、死亡退院が7割になるというのは考えられない。
 

 以上のような議論が行われましたが、嶋森委員より、患者個々の状態の議論ではないはず、制度自体の見直しを進めるのであるからこの報告書でよい。高智英太郎委員(健康保険組合連合会理事)、佐栁進委員(国立病院機構関門医療センター病院長)からも、13:1と15:1の特定除外の廃止は入院機能の機能分化を進めるために、大きな問題はない、継続していく、ということでよい、との意見が出されました。

 次に、金曜日入院、月曜日退院の評価について、「検査や処置等が終わった当日中の退院を勧める」の回答が3.2%と少なかったことについて、神野委員より、これから高齢者が増加することを考えれば、一晩様子を見てからの退院という状況も増えてくることを理解してほしい、との意見が出され、厚労省 一戸補佐が、この設問でいう検査や処置はリスクの低い検査を指しており、必要な医療を阻もうとするものではない、と説明されました。安藤文英委員(日本病院会常任理事、西福岡病院理事長)からも、金曜日入院、月曜日退院については、要件のあいまいなところもあるが、引き続き継続することが妥当と思う、との意見がだされました。

 外来の紹介率に関しての議論では、神野委員より計算式や算定の方法などについてさらに検討すべきではないか、との意見がだされました。筒井孝子委員(国立保健医療科学院統括研究官)は、紹介率と逆紹介率には関連性があり、今回示されたデータで紹介率40%と逆紹介率60%の組み合わせは概ね妥当であるということがわかった。選定療養との関連についてはさらに分析が必要であると考えるが、報告書はそこまで書かれていないので、報告書の書き方としてはこれでよいと思う、と述べられました。
 
 佐栁委員から出されたIT化を利用した連携をすれば省力化につながるが報酬上の評価が遅れている、という意見に対し、一戸補佐は、IT化は患者の知らないところで情報がやり取りされるという危険性も含んでおり、現在はまだ紙ベースで考えている。慎重な対応をしていきたい、と答えられました。
 
 神野委員は、主治医というのは主に診療所の医師であるということを明確にしなければいけないと述べられ、高智委員もこの意見に賛同されました。
 
 武久会長は、なぜ患者を大病院に紹介するかと言えば、様々な医療機器のそろっている大病院で検査等を行い、診療方針を立てることを望んでいるからであり、診療方針が決まれば地域の開業医に戻すべき。大病院が抱え込むようなことがあれば、大病院自体が疲弊してしまう。大病院に患者が集中することは大きな問題であり、機能を分担していくことが必要、と発言されました。

 最後に、とりまとめ全体に関することとして、石川委員からは中医協で十分な議論を行い、検討を続けてほしい。安藤委員は、調査の時は厚労省の名前を前面に出し回答率を上げる努力をしてほしい。武久会長も、お上からきた調査への協力は惜しまないので、厚労省の名前を明記するのがよい。藤森研司委員(北海道大学病院地域医療指導医支援センター長)は、本分科会では調査の回収率が低くデータが少なかったということは言える。しかし、日本医師会と四病院団体協議会で行った調査が回収率が高いと言ってもバイアスがかかっているように思う。石川委員が求める退院後の患者がどのような状態か、というような調査は実際上データの取りようがなく無理であろう。来年度以降も調査を実施するのであれば、調査項目をさらに検討しなければならないと思う、と述べられました。

 一戸補佐からは、調査は項目が膨大になるほど回収率は下がる。データは欲しい、回収率は下がるというジレンマの中で、100点のデータがないと前に進めないということでは制度は変えられない。得られたデータから考えていただきたい、と事務局としての苦しい立場を吐露されました。
 
 本分科会のとりまとめ(案)については、若干の表現等の修正が行われることになりましたが、委員全員の了承をもち、中医協に報告されることになりました。
 
 本分科会では本年度10回の開催を経て、7:1入院基本料の病床は、最も人員配置が手厚いことから、「複雑な病態を持つ急性期の患者に対し、高度な医療を提供する」ことをその使命と考え、7:1がその機能に集中できるよう入院病床、ならびに診療所も含めての機能分化を進めていくことに合意を得てまとめられました。
 

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