平成25年度第7回入院医療等の調査・評価分科会 報告

会長メッセージ 審議会

平成25年度第7回入院医療等の調査・評価分科会

 平成25年7月31日に今年度第7回の入院医療等の調査・評価分科会が開催され、武久洋三会長が委員として出席されました。今回の分科会では、調査結果に関するこれまでの議論をもとに、事務局より「中間とりまとめ(案)」が提示されました。
 
 「中間とりまとめ(案)」では、各項目毎に平成26年度診療報酬改定のあり方を示唆する方向性案が示されています。
 
 まず、7:1の入院基本料のあり方について、その機能は、7:1は最も人員配置の手厚い医療機関であることから、「複雑な病態をもつ急性期の患者に対し、高度な医療を提供すること」と書かれ、7:1が診るべき患者の範囲がより明確になりました。その機能に沿った役割を果たしていくために、平均在院日数については、もともと短期間で退院可能な手術や検査は計算対象からはずす、特定除外に該当する患者は平成24年度改定の13:1、15:1と同様の取り扱いとする、つまり、平均在院日数に含めるならば出来高算定、含めないならば療養病棟入院基本料を適用する、という方向性が出されました。
 
 次に、7:1が、このように本来あるべき姿に近づけば、必要となってくるのはその受け皿となる病院です。現在の亜急性期病床は、病床数が少ない、自院からの受け入れが多く、重症度・看護必要度の低い患者が多いなど、これからの医療の流れを受けとめるためには量的にも内容的にも不十分であると考えられ、新たなPost Acute(仮称亜急性期病床)を備える必要が生じてきます。
 今後の仮称亜急性期病床に求められる役割と機能として、①急性期病床からの患者の受け入れ、②在宅等にいる患者の緊急時の受け入れ、③在宅への復帰支援、が明示されました。この3つを評価するための要件としては、人員配置、重症度・看護必要度、二次救急病院の指定、在宅療養支援病院の届け出、在宅復帰率などが取り込まれる予定です。DPC等のデータ提出も義務付けられる方向性です。そして、この要件を満たす病床であれば、療養病床を含め病床種別に関わらず、仮称亜急性期病床として認められ、患者を受け入れることができる仕組みに変わってまいります。すなわち、仮称亜急性期に求められている機能を備え、役割を果たすことができるのであれば、現在の病床種別に左右されることなく仮称亜急性期病床に転換し、その医療ニーズに応えていくことができるようになります。
 
 また、重症度・看護必要度の項目についても、本来評価すべき患者の状態に合う項目となるよう見直されますが、急性期から慢性期にかけてある程度同じ指標での評価となるよう、さらに検討が加えられる予定です。
 
 特殊疾患病棟や障害者施設等から療養病棟に転換した場合の経過措置は、利用実績がないことや、患者像が似通っていることから廃止される見込みです。
 
 医療提供体制が十分ではないものの、地域において自己完結する医療を提供している医療機関の評価については、対象となる病院は全国で約100医療機関しかなく、これらに求められる役割・機能は、仮称亜急性期病床と同じく、①急性期病床からの患者の受け入れ、②在宅等にいる患者の緊急時の受け入れ、③在宅への復帰支援、が示されました。これらの病院については、亜急性期入院医療の今後の評価体系に準じた評価を導入していくことも考えられています。
 
 診療報酬点数表における簡素化については、栄養管理実施加算と褥瘡患者管理加算は、有床診療所の対応を除き、入院基本料に包括する評価が継続されます。その他の加算項目については、算定実績は少なくても一定の役割を担っていることから、一律の対応はできないであろうという結論に至っています。
 なお、褥瘡の危険因子を持つ患者は増加傾向にあり、今後の褥瘡対策は、在宅から高度急性期まで一層推進されなければならないという方向性が打ち出されました。
 
 委員からの意見は概ね二つに分かれました。本中間報告とりまとめ(案)を妥当とする委員と、地域性や個々の事情を勘案した配慮をするべきという委員です。前者は、武久会長を含め、研究者、保険者、看護協会などのご意見であり、後者は武久会長を除く医師の先生方のご意見です。
 
 議論の中で、医師の委員からは、7:1が複雑で高度な医療と定義されていること、特定除外の算定方法の変更、短期入院を平均在院日数に含めることなどについて、すべての患者がこの対象に当てはまるわけではない、All or Nothing で考えるべきではない、委員全員が同意しているわけではない、中医協でさらに議論してほしい、というような意見がだされました。
 
 武久会長は、特定除外等の長期入院患者について、13:1、15:1は改変できても7:1、10:1は患者の病態が違うから無理だという意見を出されても、調査結果からみれば同じような病態の患者である。人員配置が一番手厚い高度医療機能の7:1に、主に高齢者である患者が長期にわたり入院しているのは是正するべきではないか。たとえ、これらの長期入院患者を平均在院日数に含めても、わずか1.5日しか平均在院日数は増えないのであるから影響は少ないはず。特定機能病院のように学究的な医療機関については別の基準も必要かもしれないが、一般的な7:1は、今の日本の最高の基準であるということを認識して、そこでしか果たせない機能に集中すべきである。
 しかし、その受け皿となるべき現在の亜急性期病床は、約17,000床しかなく、重症度・看護必要度も低い。杯型になっている病床数を、ヤクルト型に動かそうとすれば、今の亜急性期で7:1から移ってくる患者を診ていくのは無理であり、仮称亜急性期ともいうべき新しい病床機能をきちんと整備していかなければならない。
 すべてを急性期で診ようとするのではなく、急性期、仮称亜急性期、慢性期という機能分担を行っていかなければ、医療者として、国民に応える医療をこれから支えていくことはできない。要するに、①急性期病床からの患者の受け入れ、②在宅等にいる患者の緊急時の受け入れ、③在宅への復帰支援、という3つの役割・機能を果たす地域に密着した病床が求められている。それぞれの現場の責任を問われる時代が来たと思う、と発言されました。
 
 筒井孝子委員(国立保健医療科学院 統括研究官)からは、同じ一人の患者が病態のステージを変えているだけで、急性期だけを必要とする患者はほとんどいない。急性期で行った治療を継続できるシステムがあればよいのであり、亜急性期を新設した時の本来の目的はそれではなかったか、と述べられました。
 
 今回の分科会の意見をもって、中間とりまとめ(案)に修正が加えられ、次回第8回の分科会で改めて検討されます。

 

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