「慢性期リハビリテーション協会」の設立について ~継続的なリハビリテーションの必要性を主張していくために~
人間は動物であり、動くことができなくなれば、その健康は損なわれていきます。すなわち医療は全人的なものであり、リハビリテーションは、急性期・慢性期という枠組みにとらわれることなく、トータルに提供されるべきものです。
しかしながら昨今、急性期のリハビリテーションもしくは急性期に非常に近い部分での回復期リハビリテーションばかりにウェイトが置かれ、長期にわたって幅広く提供されるリハビリテーションがなおざりにされている傾向が見られます。
この傾向は、回復期リハビリテーション病棟において在宅復帰率ばかりが評価の対象とされているために、在宅復帰を見込める患者を選別しがちであるというところに現れているように思われます。
回復できそうな患者だけを診るという医療が、果たして医療と言えるのでしょうか。
たしかに、急性期における早期のリハビリテーションがその後の回復を左右するということは言うまでもありません。しかし、在宅復帰ありきのリハビリテーションが先鋭化されると、回復する見込みがないとされた患者はリハビリテーションの対象からこぼれ落ちることとなり、リハビリテーションそのものの価値が矮小化されてしまいます。
さらには、平成26年4月の診療報酬の改定で、要介護者と要支援者については、算定日数上限を超えた疾患別リハビリテーションの対象からはずされることとされており、慢性期リハビリテーションの軽視に拍車がかけられています。この改定は、医療必要度の高い患者を切り捨てる政策であり、到底支持できるものではありません。
そこで、当日本慢性期医療協会では「慢性期リハビリテーション協会」を設立し、慢性期における継続的なリハビリテーションの必要性を主張してまいります。
リハビリテーションは、在宅復帰を見込むことができる患者についてだけでなく、医療必要度が高く障害の重い患者や難病患者にこそ必要であり、地域にリハビリテーションを必要とする患者がいるのであれば、普遍的に受け入れていかなければなりません。
本年6月に開催される日本リハビリテーション医学会学術集会に採択された一般演題をみると、慢性期に関する演題やテーマが増えてきており、今後もますます学問的に慢性期リハビリテーションに積極的に取り組まれるものと期待しております。しかし、臨床の現場から慢性期リハビリテーションを検証し、その重要性と必要性について声を上げていくのは、当日本慢性期医療協会の大きな責務であると考えます。
この責務を全うしていくために、当日本慢性期医療協会が設立する「慢性期リハビリテーション協会」では、継続的なリハビリテーションの著明な効果を会員一同で訴え、医療保険において慢性期リハビリテーションが算定されなくなるという平成26年4月の改定に断固反対していく所存です。
平成26年度改定の大枠は、この夏にも検討されると聞いておりますので、多くの先生方の絶大なるご支援をよろしくお願い申し上げます。
日本慢性期医療協会
会長 武久洋三
2013年5月29日