第1回「入院医療等の調査・評価分科会」(8月1日)のご報告

審議会

入院医療分科会01

 「看護必要度」は現在、「血圧測定」「心電図モニター」「シリンジポンプの使用」など9つの項目(評価票A)と、「寝返り」「起き上がり」など7項目(評価票B)」で評価しています。具体的には、A項目が2つ、B項目は3つ(計5点)以上あれば、「看護必要度基準を満たしている患者」(重症患者)と評価されます。「7対1」の病棟には、同基準で「重症」と評価された患者が15%以上入院していることが必要です。
 
看護必要度

 議論の口火を切ったのは、嶋森好子委員(東京都看護協会会長)でした。嶋森委員は、「7対1の病院には、必ずしも重症度・看護必要度が高い患者さんが入っているとは言えない。これが看護界でいつも話題になっている」と指摘、「看護必要度の高い患者がどのような医療機関に入院しているかを調査し、新たな体制を検討すべき」と求めました。

 日慢協会長の武久委員は、現在の「看護必要度」に疑問を呈し、「(評価票Aの9項目のうち)血圧測定と心電図モニターの2つだけやれば重症という評価になるが、1から9までの項目は適切か。(急性期ではない)回復期リハビリ病棟入院料の算定でもこの基準が使われている。この基準の適正化を考えていく必要があるのではないか」と述べました。

 これに対し、嶋森委員は「かなり長い調査と検証を行った項目であり、私自身も京大病院などで使用した。看護界ではかなり使われている」と返しましたが、武久委員は「2項目だけでもいいという基準が問題だ」と反論しました。

 厚労省によると、「看護必要度」の見直しについて厚生労働科学研究「入院患者への看護の必要性を判定するためのアセスメント(看護必要度)項目の妥当性に関する研究」が進められ、主任研究員を筒井孝子委員(国立保健医療科学院統括研究官)が務めています。

 筒井委員は武久委員の発言に対し、「看護必要度の項目は平成9年ごろから10年ぐらいかけて作ったが、武久先生がおっしゃったように、実態として入院医療がこのようになっている。軽度から重度の患者さんまで(一般病床に)入っている」と賛意を示し、「急性期にふさわしい患者像を反映するような調査をしてほしい」と求めました。

 厚労省の担当者は、「看護必要度については現在、厚生労働科学研究などで見直しも含めて研究を行っているので、今回の調査と併せて、実態も含めて検討していきたい」と回答。武久委員は、「(重症と評価するにはAの9項目のうち)少なくとも3項目ないといけない。また、血圧測定は一般的なので除いた方がいい。こういう指標に基づく患者がたった15%入院していればいいとすると、一般国民の感覚として、『急性期医療はめちゃくちゃ軽い状態ではないか』と思われても仕方がない」と述べました。
 

「もう少し的確な基準がある」─石川委員
 

 「看護必要度」の見直しに向け、患者の状態像を把握できるような調査を求める意見がある中、細部にわたる調査に難色を示す声もありました。

 佐柳進委員(国立病院機構関門医療センター病院長)は、「超高齢社会に対応する医療体制をつくるため、機能分化が根底にあると思うが、印象として機能分化がちょっと遅すぎる」と苦言を呈し、「細部にわたる調査よりも、施設としてどう移っているかを調査する必要がある。回収率が悪いと、どの施設がどうなっているのかが全く見えなくなる」と指摘しました。

 これに対し、武久委員は次のように述べました。
 「7対1は、急性期の重症患者が入るための病床なのに、そこに亜急性期や慢性期の患者さんが入っている。ということは、(看護職員ら)人員の数との不整合が起こる。患者像や病態像をはっきりさせるということは、病床の機能分化を行う第一歩ではないか。『慢性期は高齢者が多い』など一般的なことは言えるが、実際の病態像はどうなっているのか、非常に関心がある」

入院医療分科会の初会合 武久委員の発言を受け、筒井委員は「患者像を明らかにすることは今はできない。なぜならば、特定機能病院をはじめ、(急性期病院に)非常に多様な患者さんが入っている」としながらも、「先取りすることはある。現状はこうだが、今後を考えるとこのような患者像が7対1にはふさわしいということを示していくべき」と述べました。

 筒井委員はまた、現行の7対1入院基本料の基準に関連して、「武久先生がおっしゃるように、(重症の入院患者が)15%というのは非常に低いが、実態はそうなっていない。実態を反映するという尺度と、あるべき姿を考えるものと両方必要ではないか」と指摘しました。

 日医常任理事の石川委員は、「患者像を克明に調査するのは難しい」としながらも、看護必要度の見直しについては、「武久先生と全く同意見。もう少し的確な基準があるのではないかと思うので、もう一度考え直した方がいい」と述べ、現在の「看護必要度」基準を見直す必要性について一致しました(続きはこちら)。
 
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