処遇改善加算の要件、「少し心配」 ── 田中常任理事、介護給付費分科会で
令和8年度の臨時介護報酬改定に向け、処遇改善加算の対象範囲や要件などが示された厚生労働省の会合で「ハードルが高く、対応が難しい事業所もあるだろう」と懸念する声があった。日本慢性期医療協会の田中志子常任理事も取得要件について「少し心配するところがある」と指摘し、配慮を求めた。
厚労省は12月12日、社会保障審議会(社保審)介護給付費分科会(分科会長=田辺国昭・東大大学院法学政治学研究科教授)の第250回会合を開催し、当会から田中常任理事が委員として出席した。
.
.
厚労省は同日の分科会に「介護人材確保に向けた処遇改善等の課題」と題する資料を提示。その中で、「令和8年度介護報酬改定における処遇改善に係る対応の考え方」など論点①~③を挙げた上で、「取得要件(案)」「令和8年度改定のイメージ図」などを示し、委員の意見を聴いた。
.
.
.
介護職員以外も「新たに対象」
処遇改善加算の対象範囲(論点②)について厚労省は「介護職員以外の介護従事者を新たに対象とすることとしてはどうか」と提案した。
.
.
介護職員以外の介護従事者を新たに対象とする場合については、「訪問看護及び介護予防訪問看護、訪問リハビリテーション及び介護予防訪問リハビリテーション並びに居宅介護支援及び介護予防支援を新たに介護職員等処遇改善加算の算定対象」との考えを示した。
処遇改善加算の対象拡大について、医療・介護等の関係者は賛同したが、保険者団体などから「被保険者や事業主の保険料負担につながる」と財政影響を懸念する声もあった。
.
持続的な賃上げに向けた環境整備を
処遇改善加算の要件(論点③)について厚労省は「令和7年度補正予算案に盛り込まれた支援においては、生産性向上や協働化に取り組む事業者の介護職員に対して賃上げ支援を上乗せすることを想定」との考え方を示した。
.
.
その上で、申請要件について「訪問・通所サービス等にはケアプランデータ連携システムの導入(又は見込み)」とし、「施設・居住サービス等には生産性向上推進体制加算の取得(又は見込み)という要件の設定を想定している」とした。
.
.
対応案では、「ケアプランデータ連携システムの導入(又は見込み)」などを挙げ、「持続的な賃上げに向けた環境整備に向けた取組を促す」としている。
.
ケアプランシステムの導入は9.8%
質疑で、平山春樹委員(連合総合政策推進局生活福祉局長)は「今回、新たな要件として挙げられているケアプランデータ連携システムの導入状況と生産性向上推進体制加算ⅠまたはⅡの取得の状況について現状をお伺いしたい」と質問した。
厚労省の担当者は「ケアプランデータ連携システムの導入状況は現在10%弱、足元の数字で9.8%」と回答。「フリープランの導入などを通じて迅速な導入支援を行っていきたい」と説明した。生産性向上推進体制加算の取得割合については、「現時点の足元にある数字で加算Ⅰが3%弱、加算Ⅱが2割強」と答えた。
平山委員は「現行の取得要件を維持しつつ、新たに生産性向上や協働化に向けた取組を加算ⅢとⅣの上位移行や加算ⅠとⅡの加算率上乗せの要件とすること自体に異論はない」としながらも、「現在、対応できている事業所は非常に少ない。これらの要件はハードルが高く、対応が難しいと判断する事業所も一定あることも想定される」と指摘。「対応できていない要因を分析の上、必要な支援をお願いしたい」と要望した。
田中常任理事は「手続きが煩雑で参入しているところが少ない」と指摘し、「少しずつでも移行する事業所が出るようにフリーパスが継続できるような配慮をお願いしたい」と求めた。田中常任理事の発言要旨は以下のとおり。
【田中志子常任理事の発言要旨】
対象範囲について、居宅介護支援をはじめ職種を広げていただき感謝を申し上げる。また、時期についても対応案に賛成する。 今後も他産業の賃金にあわせて介護従事者の賃金アップを継続していただきたい。
論点③の取得要件は概ね賛成だが、先ほど平山委員が指摘したように、私もケアプランデータ連携システムについては、少し心配するところがある。手続きが煩雑で参入しているところが少なく、実効性に欠けている。今はまだ10%程度の運用にとどまることをご報告いただいた。今後も同様の理由で、一度に全面移行するのは大変だと認識しているので、少しずつでも移行する事業所が出るように、フリーパスが継続できるような配慮をお願いできればと思う。
また、LIFEとの連携についても速やかな対応が必要であると思う。現場の意見としては、取得要件のためだけに事務作業が増える仕事となることなく、真に利用者さんのためになるようなデータ連携に行き着けるよう、引き続きの対策をしっかりと実行しなければならないと考えている。
.
協力医療機関の割合は増加
この日の分科会では、医療介護連携に関する調査結果について報告があった。厚労省は「改定検証調査(1)の集計状況について(速報)」を提示。「今後の調査やデータの精査等により、確報の段階では数値等に変動があり得る」としている。
.
.
調査によると、2024年度改定で義務化された常時相談対応など全ての要件を満たす協力医療機関を定めていたのは、介護老人福祉施設で67.9%、介護老人保健施設は83.3%、介護医療院は84.9%、養護老人ホームは60.4%だった。
.
.
また、都道府県に対する連携の届出状況では、全ての要件を満たした協力医療機関を定めている施設の割合は、介護老人福祉施設(地域密着含む)、介護老人保健施設、介護医療院が6~7割程度であった一方、それ以外の施設種別は4~5割程度だった。「集計していない」施設の割合は、全ての施設種別で1~3割程度となっている。
今回の資料は、令和7年度調査のうち「(1)高齢者施設等と医療機関の連携体制及び協定締結医療機関との連携状況等にかかる調査研究事業」の一部を速報としてまとめたもの。
厚労省の担当者は「昨年度調査よりも要件を満たす協力医療機関を定めている施設の割合は増加しているが、自治体における把握の状況についてもばらつきがあることから、今回の結果も踏まえ事務局として関係団体や自治体への協力のお願いを含め、今後の対応について検討を続けていきたい」と述べた。
.
内田病院など好事例の横展開を
質疑で、新田惇一参考人(長崎県福祉保健部長)は「実効性のある連携体制の構築に向けて引き続き自治体による連携促進が必要であると認識している」とした上で、「都道府県によっては『集計していない』の割合が高い結果も見受けられる」と指摘。「高齢者施設等からの届出をしっかりと促し、状況把握に努めるとともに取組が行われていない高齢者施設等への働きかけを行うなど連携に向けた支援に取り組んでまいりたい」と述べた。
小泉立志委員(全国老人福祉施設協議会副会長)は「一部未集計の県もあるため注意が必要だが、連携体制の構築状況に地域差が生じていることがわかる」とし、「地域の実情に応じた柔軟な対応が可能であることを国がQ&Aで明確に示すべき」と求めた。また、協力医療機関連携加算について「要件の1つである電子的システムで入所者情報を随時確認できる体制は現状、多くの施設がDXの途上で整備が間に合っていない」と指摘。「令和6・7年度の連携の実態を踏まえ、実効性のある加算要件への早期の見直しを要望する」と述べた。
松田晋哉分科会長代理(福岡国際医療福祉大学看護学部教授)は「ICTに関して、あまり難しく考える必要はないのではないか」との認識を示し、田中常任理事の病院の取組を紹介。「うまくいっている事例の横展開に関する体系化などを厚労省でもやっていただければ」と提案した。田中常任理事は連携の「アンマッチ」について問題意識を示した。発言要旨は以下のとおり。
【松田晋哉分科会長代理の発言要旨】
医療機関と介護施設等の連携について、なかなか進まない理由として、どのように連携するのかという連携する情報の内容、連携のやり方に対する仕組みの標準化などをやっていかないと進まないのではないかと思う。ICTに関しても、あまり難しく考える必要はないのではないかと思っている。
例えば、群馬県の沼田市にある内田病院の場合は、朝のモーニングカンファレンス、ホワイトボード・カンファレンスというかたちでビデオ会議などをやりながら日々の情報を共有している。そういうやり方でよいと思う。そのように、うまくやられているところの事例を集めていただいて、それをもとにして、やり方の標準化というのを進めていくと、医療機関側としても連携に参加しやすいのではないか、対応しやすいのではないかと思う。うまくいっている事例の横展開に関する体系化みたいなことを、ぜひ厚労省でもやっていただければと思う。
.
【田中志子常任理事の発言要旨】
松田先生、ご紹介に感謝する。私からは質問を兼ねた意見を述べる。養護老人ホームではなかなか進んでいないという数字が出ているが、これまでの設立の関係上、自治体管轄であるホームが多いことから、医療機関も連携しているところが公的病院であるところが多いのではないかと考えている。老健事業で関連病院の連携を調べている事業もあったかと思うので、この結果の要因の分析がまだ出ていないようであれば、分析してみていただければと思う。
公的病院は高度急性期を担う病院も多く、高齢者救急等がアンマッチである病院もあり、その場合に、より推奨されている高齢者救急を診る病院とのコーディネートをする部門も必要なのではないかと思う。もし養護老人ホームの連携先の病院種別が分かるようであれば、お答えいただきたい。
.
【厚労省担当者の発言要旨】
現状、養護老人ホームがどういう類型の病院と連携しているのが多いのか、まだ種別から取ったデータはない。ご指摘のとおり、養護老人ホームの場合は措置がある関係で自治体との連携はかなり密に行われている事例があった。自治体病院か、あるいは地域包括かといった、どこと連携が深いかという調査は令和2年度に実施したことがあるが、その中で医療機関の類型をさらに細かく把握している事例がないので、今後、必要に応じて検討を考えていきたいと思う。
2025年12月13日









