療養病棟、「在宅復帰の新たな評価を」── 池端副会長、中医協総会で

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★★★2025年10月29日の総会

 2026年度の診療報酬改定に向け、「慢性期入院医療」などをテーマに議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「療養病棟といえども、入院して一定期間治療しながら地域へ帰っていただく。在宅復帰を目指す機能は病院の機能として非常に重要なので、在宅復帰に対する新たな評価等も考えていただきたい」と提案した。

 厚労省は10月29日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第623回会合を都内で開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。
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 厚労省は同日の総会に「入院について(その3)慢性期入院医療・身体的拘束」と題する資料を提示。その中で、「療養病棟入院基本料」「障害者施設等入院基本料・特殊疾患病棟入院料」などについて課題や論点を示し、委員の意見を聴いた。

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患者割合の基準を引き上げるか

 療養病棟入院基本料に関する論点は、①療養病棟入院基本料の医療区分、②療養病棟における経腸栄養に関する取組や在宅復帰に関する取組──の2項目。

 このうち論点①については、▼入院料2における、医療区分2・3の患者の割合に関する基準や実状、▼処置区分2のうち、異なる治療を行う病態が重複した場合に医療資源投入量が増加すること──を挙げ、「医療の必要性の高い患者の診療を推進する観点から、療養病棟入院料の評価の在り方について、どのように考えるか」と意見を求めた。

 質疑で、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「入院料2については、98.5%の施設で医療区分2・3の患者が6割以上になっているため、最低でも患者割合の基準を6割以上とすべき」と主張。入院料1については「相当数の施設が86%程度の施設がクリアしているので、9割まで患者割合の基準を引き上げることも検討の余地がある」と述べた。

 さらに松本委員は「医療区分2・3の患者の受け入れを積極的に推進するためには、入院料2を廃止して入院料1に一本化することも検討すべき」との考えも示した。

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積極的な取り組みを適切に評価

 論点②については、「中心静脈栄養の実施が前提の要件となっているために、そうした患者を減らしている施設の取組が評価されにくい施設基準となっている可能性があることを踏まえ、実績要件等の施設基準について、どのように考えるか」と意見を求めた。

 調査によると、経腸栄養管理加算の届出施設のうち、算定回数が0回の施設が約9割弱と多かった。届出をしない理由について、自由記載欄の回答では、「当院へ転院前に1か月以上中心静脈栄養を実施されている患者が少なく算定できない」、「対象となるような患者の入院がないため」などが挙げられた。

 質疑で、診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は「経腸栄養や嚥下機能の回復について積極的に取り組んでいる医療機関が適切に評価されるようにするためにも、中心静脈栄養の実施に関わる要件については緩和すべき」と見直しを求めた。

 一方、松本委員は「経腸栄養管理加算や摂食嚥下機能回復体制加算については、算定対象となる患者がいないという理由であまり活用されておらず、やや中心静脈栄養の実態とは齟齬があるような印象を受けている」とした上で、「中心静脈栄養からの早期の離脱を推進する方向で実績要件を見直すことには異論はない」と述べた。

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廃用症候群は病態により異なる

 入院(その3)の議論では、「障害者施設等入院基本料等に係る課題と論点」も示された。厚労省は「障害者施設等入院基本料10対1入院基本料~15対1入院基本料では、療養病棟にも多く入院している廃用症候群の患者が多く、5~12%程度を占めていた」とし、「こうした症例は、『肢体不自由』として対象患者とされている割合が多かった」と指摘。また、廃用症候群の患者の状態等について「療養病棟と類似していた。請求点数は障害者施設等入院基本料において高かった」などの課題を挙げた。

 その上で、論点では「患者の状態が両病棟で類似していることを踏まえ、慢性期の入院料における役割分担等の観点から、その評価の在り方についてどのように考えるか」としている。

 江澤委員は「障害者施設等入院基本料の該当患者は、身体障害者障害程度等級の1級・2級相当とされており、脊髄損傷などの障害が固定した状態にあり、廃用症候群からの回復が困難な場合も多い」と指摘。「器質的障害のない廃用症候群は、ときを経てもしばしば改善するなど、同じ廃用症候群であっても病態により異なるため、評価の在り方については、より詳細な分析が必要」と述べた。

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療養病棟入院基本料の論点①について

 池端副会長は、療養病棟入院基本料の論点①について経過措置などの配慮を求めたほか、論点②については、要件緩和や在宅復帰への評価などを要望。障害者病棟に関する論点についても意見を述べた。池端副会長の発言要旨は以下のとおり。

[池端幸彦副会長]
 論点に沿って何点かコメントさせていただく。まず、33ページの療養病棟入院基本料に係る論点の1つ目、療養病棟入院基本料の医療区分について。
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 前回の令和6年度診療報酬改定では、医療区分が大きく見直され、「疾患・状態」に係る医療区分と「処置」に係る医療区分に基づいて入院料が30区分に細分化された。

 今回の資料を見る限り、療養病棟入院料1・2とも医療区分2・3に該当する患者割合は若干増加が見られるものの大きな変動はなく、前回の見直しについては、さほど大きな影響はなかったと思われる。 
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 17ページにあるように、入院料2においても医療区分2・3の割合が6割を超える医療機関が98%以上ある。そこで、入院料2の医療区分の基準「5割以上」を一定程度、引き上げること、例えば「6割」に上げるということについて、調査結果から見て、一定程度の整合性があることは理解できる。
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 一方、11ページにあるように、入院料2の病床稼働率は、入院料1に比べて1割以上低くなっている。なおかつ、療養病棟においては入院料1も2も、看護配置基準は同じ20対1であることに鑑みると、ただでさえ非常に厳しい経営状況にあることは間違いない。

 もしも今回、この施設基準を大きく見直すようであれば、それに対応できない。突然、病棟や病院がなくなったり、入院患者の行き場所がなくなったりすることだけは避けなければいけないと思うので、一定期間、十分な聴き取りをした上で、経過措置等の準備もぜひお願いしたいと強く望む。

 次に、2つ目の論点(処置区分2のうち、異なる治療を行う病態が重複した場合に医療資源投入量が増加すること)について。
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 医療区分2の中で、複数の項目を併せ持つ、いわゆる高齢者のマルチモビディティ、多疾患併存状態の患者さんが、この療養病床に多く入院されている。25ページのグラフで明らかなように、医療資源投入量に明らかな差が見られることから考えても、このような状態の患者像に対して何らかの新たな加算等々の評価をいただくことは妥当ではないかと考えている。

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療養病棟入院基本料の論点②について

 「療養病棟における経腸栄養に関する取組や在宅復帰に関する取組」について。経腸栄養管理加算は中心静脈栄養の1カ月実施が要件になっているため、これを緩和するという方向性でお願いしたい。栄養管理や摂食嚥下機能訓練を推進するという趣旨からすれば、理にかなった対応であると思う。

 あわせて、今回の論点の資料にはないが述べておきたい。療養病棟といえども、入院して一定期間治療しながら地域へ帰っていただく。つまり、在宅復帰を目指すという機能は、療養病棟の病院機能として非常に重要なので、在宅復帰に対する新たな評価等々も、もし考えていただければありがたい。

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障害者施設等入院基本料等の論点について

 
 48ページ。障害者施設等入院基本料等に係る論点については、江澤委員の意見に賛成する。確かに、廃用症候群の患者の状態等が療養病棟と類似しており、医療資源投入量もあまり変わらないのであれば、一物二価になる可能性はある。しかし、障害者病棟では、それぞれの疾患によって違った対応をしなければいけないこともありうる。

 そのため、もう少し精緻に、その内容そのものをしっかり把握する必要がある。廃用症候群の中には、長期に廃用症候群になってしまっている場合と、そうでない場合もあると思う。その辺もしっかり検証しながら議論を進めていただければと思っている。

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支払側の意見について

 松本委員から医療区分に関する意見があったのでコメントさせていただく。これまでの改定でも、そして今回の中医協でも「医療資源投入量で価格設定」というような話がよく出てきている。これには、もちろん反対するつもりはない。
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 しかし現在、療養病棟入院料1の基準は、医療区分2・3の患者が「8割以上」であり、残りの2割はどういう患者さんがいるかを考えてほしい。
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 例えば、肺炎で入院して、抗生剤等を点滴して治療し、炎症反応も取れて、レントゲンもOKで、「そろそろ退院できるね」と抗生剤を切った。その時点で医療区分1に落ちる。しかし、まだ退院できる状態ではない。

 その後、いろいろ退院調整をしながら、そして退院させても本当に大丈夫かどうかを、2、3日様子を見ながら再度、いろいろな検査などをして、そして大丈夫という判断をして退院する。そういう期間が非常に重要になる。基準を9割、10割にすればいいじゃないかという議論は、私たち現場の感覚からすると、とんでもない話だ。
 
 例えば、自動車のブレーキを考えてほしい。急にブレーキを踏むと危ない。それと同じように、ある程度の“遊び”がないといけない。それと同様の“遊び”としての2割が、私はギリギリだと思う。今、“遊び”という言葉を使ったが、決して遊んでいるわけではない。

 そして、もう1つ。医療資源投入量だけで考えるべきではない。ADL区分3・2・1の違いは医療資源投入量だけでなく、ADLが上がるごとによってケアの仕方が重くなってくる。あるいは、実際に診察をする時間や指示も多くなる。観察する時間、医師・看護師がきちんとケアをする時間、あるいは指示を変更する時間、いろいろな人の手間が、医療資源投入量以外のところに入っている。

 それがADL区分によって変わるということから、このADL区分が医療区分の最初のスタートから入ってきたわけなので、そこはぜひ、ご理解いただきたい。入院料1の「8割」をさらに上げると、これは本当に大変なことが起きると私は思っているので、ご理解いただきたい。

 当院では、ほぼ全員が医療区分2・3であることを前提に入院している。その中で、医療区分1の状態でも、やむを得ず入院されるケースもある。例えば、頻繁に入退院を繰り返している患者。医療区分2・3には該当しないが、喀痰がちょっと多い。肺炎ではないようだが、少し入院が必要であるような場合。医療区分1だとわかっていても、ほかの病院には行きたくない、でも入院が必要だという患者を受け入れる。それがごく一部あることはある。

 しかし、すぐに退院させなければいけない。医療区分2・3が8割以上をクリアしていることが絶対条件だということは、入退院支援看護師もケアマネジャーもみんなわかっている。それでも受けなければいけない地域のニーズがあるので、受け入れる。「2割を切った」「オーバーしないように」と考えながら受けている。

 しかし、先ほど申し上げたように、医療区分2・3で入院された患者が1になっても、すぐには退院できない。このハンドルの“遊び”のような部分も考えると、2割が限界である。これ以上、厳しくなってしまったら療養病棟全体の運営が難しくなる。無理ではないか。

 当院では、医療区分2・3に当てはまらない患者の入院に関しては全て私に連絡が入る。院長の許可がなければ受け入れない。そのような管理をして、80数%から多いときは90%ぐらいになる。院長が管理をしていても、ギリギリのところ。なんとか85%ぐらいでクリアできているのが実情なので、どうかご理解をお願いしたい。

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