急性期医療の評価、「メリではなくハリで」── 池端副会長、中医協総会で
2026年度の診療報酬改定に向けて、急性期の入院医療について議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「現状を考えると、メリハリの『メリ』では一気に経営難に陥ってしまう。『ハリ』の部分で評価する流れにしていただかないと、良い制度設計をしても地域医療を崩壊してしまう」と危機感を表し、「しっかりしたシミュレーションの上で検討していただきたい」と求めた。
厚労省は10月8日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所特任教授)総会の第619回会合を都内で開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。
厚労省は同日の総会に「入院(その2)」と題する161ページの資料を提示。総合入院体制加算と急性期充実体制加算の一本化や、重症度、医療・看護必要度の見直しなど、急性期拠点機能に関わる論点を中心に挙げ、委員の意見を聴いた。
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大きな見直しや適正化は厳に慎むべき
質疑の冒頭、江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は「現在、病院の経営状況は過去に経験のない瀕死の重傷状態にある中で、大きな見直しや適正化を行うと容易に病院は倒れる状況にあるため、大きな見直しや適正化は厳に慎むべき」と強調。収益状況の悪化を示すデータに言及し、「緊急に診療報酬による支援が必要な状況が明らかとなっている」と訴えた。
江澤委員は「適正化はないものと確信して申し上げるが、病院における急性期機能を救急搬送件数や全身麻酔手術で評価する方向性も見え隠れしており、仮に検討するのであれば、詳細かつ精緻なシミュレーションを行い、1箇所残らず、全ての病院がプラスとなるよう確認することは不可欠であり、絶対条件であると強く申し上げる」と述べた。
続いて、太田圭洋委員(日本医療法人協会副会長)も「急性期などの一般病院、ケアミックスの病院、精神病院を含め、全ての病院種別で医業利益率、経常利益率とも赤字に転落という過去最悪の結果」と指摘。「2026年度改定においては、まず全ての病院機能において大幅な底上げが必要であることを強く主張する。十分な底上げが保障されない限り、ギリギリで支えている地域医療を破綻させる可能性が高いため、制度の見直しはできる限り小幅に慎重に行うべき」と述べた。
池端副会長も同様の見解を示し、「しっかりしたシミュレーションを行った上で、検討をしていただきたい」と述べた。
このほか、同日の総会では、消費税負担の補てん率に関する報告もあった。池端副会長は「診療報酬で補てんする仕組みがもう限界にきているのではないか」との認識を示した。池端副会長の発言要旨は以下のとおり。
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入院(その2)について
[池端幸彦副会長]
総論的な話を1つ、各論を2点だけ簡単にお話ししたい。まず、急性期を中心にした今回の「入院(その2)」だが、ご案内のとおり、新たな地域医療構想の中で医療機関機能というものを求めるようになった。それに、寄り添おうとしているような内容ということはある程度理解できると思っている。その中で、特に今回は救急搬送、手術件数を中心にした医療資源投入量について、急性期の入院医療をどう評価するかというデータがいろいろ出ている。
これまでの流れで適正化と評価等を分けて、いわゆるメリハリのついた報酬体系にもってくるという流れだと思うが、今、太田委員、あるいは江澤委員もおっしゃったように、現状を考えると、メリハリの「メリ」でやられると、一気に経営難に陥ってしまうところがあるので、今回だけは、言い方は悪いが、「ハリ」の部分で評価する、そういう流れにしていただかないと、いくら良い制度設計をしても地域医療を崩壊する流れになってしまうのではないか。ここは冒頭にしっかりお話ししていきたいと思うし、しっかりしたシミュレーションを行った上で、ぜひ、そういう検討を行っていただければと思っている。
それから、2点目。今回、初めてだと思うが、介護保険でもそうだが、いわゆる大都市圏と中都市、人口20万等々の中都市、それから、人口が少ない所、3つに分けて、一定程度のいろいろな資料が出ている。これは非常に大きなことで、課題がそれぞれ違ってくるということをしっかり把握しながら落とし込んでいかなければいけない。十分な配慮をしていただきたい。その上で、各論的には、太田委員もおっしゃったように内科的重症度については前回から非常に厳しくなったところだと思うので、いろいろシミュレーションも出ているが、そこをしっかり評価していただければと思っている。
ICUについては、地方の基幹病院から聞く話だが、特定集中治療室の5・6はアウトカムがほとんど変わらないにもかかわらず、低い点数にせざるを得ない。宿日直体制を取らざるを得ないという。これは単に点数が下がっただけではなく、宿日直許可を外そうと思うと医師が必要になってくる。医師不足の地方では、非常にこれが困難であり、やむを得ず5・6に落としながらでも、しっかり患者を診なければいけない。頑張って、疲弊しながらでも、やっている。これが今回、数字に出たと思うので、ぜひ5・6については廃止も含めた抜本的な検討をしていただきたいと思っている。
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診療報酬による消費税補てん状況の把握(案)について
私も太田委員と全く同じ視点である。3ページの論点に「近時は物価の上昇により課税経費が増加していること等も踏まえて、補てんの在り方の議論に資するよう、補てん状況をどのように評価するか」とあるが、ここまでくると、診療報酬で補てんすること、そのものの仕組みがもう限界にきているのではないか。全体としての補てん率を揃えることはある程度はできたとしても、今、これほど物価が急激に上昇しているインフレ状況の中で、控除対象外消費税を全体で見ても、各個別の医療機関にとっては大きな差が出てしまって、それが直接、経営に影響してしまう。
そのようなことがあるので、このやり方でやっても、かなりばらつきが出てしまう。そうなると、そろそろ、これを抜本的に考える時期に来ているのではないか。もちろん、消費税の分科会あるいは中医協マターでないことは重々承知はしているが、そういう問題点を挙げていくことは、この中医協でもできるのではないか。支払側の先生方も含め、どうあるべきかをしっかり検討できればと思っている。
2025年10月9日

